たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

この本はとても示唆的で面白かった。コメントしておこう。

社会はどう進化するのか?」(Completing the Darwinian Revolution by David Wilson

著者は米国の進化生物学者、ダーウィンの進化論の手法を社会科学分野にも発展的に適用することを唱えている。

 

そういうと歴史的な悪名が確定している19世紀後半に様々な形で流布した「社会進化論(Social Darwinism)」を想起する人がいるだろうが、その思想的な系譜とは全く異なる。

 

まず私達の社会は成員相互間の競争の原理と協調・協力の原理の双方が縦糸、横糸のように織り込まれて出来上がっている。競争原理だけでも、協力原理だけでもない。

 

共産主義的な思想は、市場を通じた競争原理を徹底的に排除しようとしたが、それでは軍事経済的な運営はできても、多様で高度な消費社会には適合できなかった。その対極として例えば米国のミルトン・フリードマンに代表されるような「市場(競争)原理的」な思想もある。

 

しかし、現実の私達はそんな極端に利己的に合理的なホモエコノミクスではなく、さりとて協力や公平さのみで動く完全な善人でもない。私達の現実では双方の衝動が拮抗し合っている。これはわりと常識的な認識だと思う。

 

この2つの拮抗する原理(競争と協力)が、ある時は競争の要素がより強く働き、また別の時は協力の要素がより強く働く、その基本的な仕組みをどう考えれば良いのか、私自身わからないでいた。

 

今年邦訳が発刊された「仏教経済学」(クレアブラウン著)を以前facebookで紹介した。私は推薦の言葉で次の様に書いた。「競争と自己利益の極大化を前提とする経済学から、共存共栄と自然万物との相互依存を基調にした経済学へのパラダイム転換の書だ。環境破壊と格差拡大の呪縛から私達を解き放つ鍵は、仏教的世界観の再評価にあった」(竹中正治 龍谷大学経済学部教授)

 

しかしながら、読まれた方は感じただろが、この書「仏教経済学」には社会成員が協調、協力し合うための仏教に触発された理念はかかれているが、それがどういう状況下でどのように働くのか、それが利己的な合理性による競争原理をどのような条件下で上回ることができるのか、その点のサイエンスになると、行動経済学による知見が多少散りばめられているだけで全然サイエンスになっていない。これが最大の弱点だった。

 

その欠落を埋める視点を本書は提示している。つまり私達の社会に利己心を抑制し、協力し合う行動特性や道徳・倫理がどのように進化してきたかを考えれば良いわけだ。そうした協力の倫理は自然的、また社会的な環境による淘汰圧の中で優位性を発揮したからこそ進化して来た。

 

ある人間の集団は複数の他集団との競争、競合関係の中で営まれてきたわけで、集団内部では利己的な競争原理が働いても、集団間の競争関係を生き延びるために利己性を抑制して自分の集団に貢献するという協力原理が進化して来た。例えば特定の神を信奉する宗教は、集団の成員を結束させ、利己的な衝動を抑制し、戒律を守り、集団へ貢献する情念を生み出す観念体系として発展したわけだ。

 

著者が提唱している進化論のロジックは、「マルチレベル選択説(multilevel selection theory)」と呼ばれるもので、私が理解した限りで大雑把に言うと、社会を構成する家族のような小数団から国家のような大集団まで各層の集団において、集団内の競争環境では成員の個体としての利己的な衝動と個体単位の淘汰が働くと当時に、グループ間の競争環境からは自分の所属集団に貢献する協力的衝動と淘汰が働くと考える。この方がホモエコノミクスの人間観よりずっと現実の私達の感覚に適合する。

 

こうした認識に基づいて、さらに著者らは協力関係が優位に働く集団の形態、あり方を具体的に分析、提示する実践活動もしている。

 

ただし協力関係が、より上位のレベルでの他のグループとの競争環境から生じるとすると、地球規模の問題に対する国家や民族を越えた地球人としての協力関係や意識は、「宇宙人の襲来」でもなければ生じないのだろうか?

 

この点は、そうでもないようだ。地球は「大海原を行くひとつの船」であると考えれば、地球環境の持続的な保全の必要から生じると淘汰圧が人類に働いていると言えるからだ。

 

ただし環境に適応するように淘汰圧が働いていることは、全ての種が適応に成功することを保証しているわけではない。適応に失敗して滅びる種も沢山あるわけだ・・・・。

ダイヤモンドオンライへの寄稿です。
今朝掲載されました。
https://diamond.jp/articles/-/236273

冒頭部分引用:「中国・武漢に始まった新型コロナウイルスの感染爆発は、瞬く間に世界に広がり、世界経済は「パンデミック世界不況」とでも呼ぶべき未曽有の事態となった。

 戦後最大の不況に世界が直面する状況下、米国のトランプ大統領は相変わらず自国中心主義を唱えている。一方、中国政府は感染爆発の発生源であるにもかかわらず、露骨なまでの自己正当化に余念がない。こうした現状は国際政治的な観点からは、国際秩序の要となる中核国不在の時代のように見える。

 ところが金融投資の視点から見ると、興味深いことに現状は「米ドル一強」とも呼ぶべき傾向がますます鮮明になっている。端的に言うと過去10年、そして今回の危機でも、ドル相場と株価指数共々に米国の優位が鮮明になっている。それが何を意味するのか考えてみよう・・・



毎度ダイヤモンド・オンラインへの寄稿です。今朝掲載されました。

***
引用1:「投資家の観点から見て、次に起こる重大事はマンションなど不動産価格の下落である。市場流動性の高いREIT(リート:不動産投資信託)価格はすでにパニック的な急落を起こした後、ある程度反発して荒い値動きとなっている。
 しかし現物不動産としてのマンションなどは、流動性が乏しい分だけ下がるときも上がるときも、一般企業の株価やREITに3カ月から6カ月程度遅れて変動することが分かっている。今回は東京の中古マンション価格を対象に、今年年末までにどの程度の下げが予想されるか考えてみよう。」

引用2:「「なんだ4%程度の下落か、たいしたことない」と思うのは早計だ。まず景気動向として「今年6月末に底を打って回復に向かう」というのは比較的楽観的なV字回復シナリオだ。感染爆発の終息が長引き、景気の底打ちが遅れれば、下げ幅はそれに応じて広がっていく。
 ちなみに上記の景気後退の底が今年の6月ではなく12月になった場合は、マンション価格指数の下落(前年同月比)は12月時点で6.4%となる(赤の点線)。
 また当然ながら、マンション価格は個別性が高く、指数の下落が年間4%でも、ほとんど価格の変わらない物件もあれば、10%以上下落するものもある。さらにローンの返済が滞った場合など担保処分の場合は売り手が売り急ぐので、価格は平均よりずっと下がる傾向が強い。資金繰りに行き詰まったマンション・デベロッパーが在庫処分に動く場合は、新築でも当初の公式価格から20%程度のディスカウントがざらに出てくる。」

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202003 グラフ1
202003 グラフ2



ダイヤモンドオンラインへの寄稿です。本日3月2日午後4時に掲載されました。
脱稿日時は2月27日(木)午後5時なんですが、掲載されるまでに株価が急落し(特に28日金曜日の爆落)やきもきしました(^_^;)

https://diamond.jp/articles/-/230461

冒頭リード引用:「新型コロナウイルス感染拡大を伴って日本の景気後退が誰の目にも明らかになった時、株安はどこまで進むのか。「大悲観ケース」と「小悲観ケース」に分けて予想推計を試みた(本稿は227日午後5時の脱稿。その後、相場は変動しているが、原文のまま掲載)」

「結論を先取りして言うと、すでに日経平均株価指数で1万9000円程度への下落が視野に入っている。さらに深刻化してリーマンショック級の不況になった場合には1万5000円前後まで覚悟すべきだろう」

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202003 グラフ1

202003 グラフ2

ダイヤモンドオンラインへの寄稿です。今朝掲載されました。

https://diamond.jp/articles/-/228348


冒頭部分引用:「世界保健機関(WHO)は現状では新型コロナウイルス感染症の中国国外での広がりが限定的であることから、本稿執筆時点では「パンデミック(世界的な感染症の大流行)」ではないと語っている。

 しかし状況は依然不確実で流動的であり、仮に世界的な規模での感染爆発にならずとも、中国の経済活動の停滞で日本をはじめ世界経済へのマイナスの影響は不可避だ。現時点では想定に基づく大ざっぱな推測しかできないが、今回は日本経済などへの影響度を考えてみよう。

 結論を先取りすれば、先進国では日本、ドイツ、韓国をはじめ、中国と経済の相互依存関係の深いアジア諸国を中心に景気後退局面への移行はほぼ不可避に思える。主要企業のこれに関連した収益見通しの下方修正もこれから続出するはずだ。その一方、個人消費を中心とする内需主導の米国経済が受けるマイナスの影響度は相対的に少ないと考えられる・・・

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202002 図表1

202002 図表2



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