たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

ダイヤモンド・オンラインへの寄稿です。今朝(11月11日)掲載されました。
私の論考は、掲載後48時間は無料で読めます。
https://diamond.jp/articles/-/286854

冒頭引用:米連邦準備理事会(FRB)の量的金融緩和が今月11月から段階的に縮小されること(テーパリング)が決まった。詳細はメディアの報道記事に譲るが、見込みでは来年6月にはFRBによる債券類の新規購入がゼロとなり、同年後半には短期政策金利の引き上げが見込まれる。

 ただ、景況面ではインフレ率が上振れる一方で、景気動向に一部鈍化の兆しも現れ、物価高と景気低迷が同時進行するスタグフレーションの可能性を語る声も聞かれる。

 景気後退が起こらずとも、インフレ率の上振れが予想以上に持続した場合、超金融緩和の終了から金利引き上げに移行する来年にかけて、債券市場の利回り上昇(価格下落)が予想以上に大きくなるリスクを懸念する声もある。その時には大幅な債券安・株安の激震に見舞われることもあり得よう。今回はこうしたリスクについて考えてみよう・・・」

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  図表1
202111 図解①11月用

  図表2
202111 図解②11月用

さて、先日facebookで取り上げた篠原滋氏(元野村証券G)の日本株投信については、過去3年~5年、アクティブファンドの運用平均がインデックスファンドの成績を上回っているという指摘について、「それはおかしいでしょ」という批判をしておこうか。

 

1、リスク調整後のリターン比較でないと意味がない。

アカデミズムでの金融・投資研究も含めて、投資の成績は単純なリターンの相違ではなく、リスク対比でのリターンで行うことが常識だ。先物を使うか、借り入れを使うか、手段はともかく金融レバレッジを上げればリスクの上昇を代償にリターンは簡単に上がるからね。この方はその点を承知のはずなのに無視している。

 

リスク対比でのリターンは一般に「シャープレシオ=(投資リターン-無リスク資産リターン)/リスク」で計算される。リスクは投資資産のリターンの変動性の標準偏差を計算し、リターン同様に年率換算するのが一般的だ。以下、日本では無リスク資産リターンとしての短期国債利回りは長年ゼロ近辺なので、ゼロとして計算した。

 

図表1は、Morningstarのサイトからとった国内株式対象の投資信託のインデックスファンドと非インデックスファンドの過去3年間のリターン、リスク、シャープレシオだ。リターンでもシャープレシオでもインデックスが上回っているのがわかる。

 

2、購入時手数料、反映していないよ。

同氏は保有期間に比例してかかる信託報酬差し引き後のリターンで比較しているが、当然ながら購入時手数料もネットリターンの違いをもたらす。ただし近年は同じ投信でも販売窓口の違いで購入時手数料が違うから、単純な比較が難しい。しかしアクティブ型投信(非インデックス)の購入時手数料は概ね2~3%(平均2.5%前後?)、インデックスは0.5%(?)以下程度が普通だろう。

 

したがって、5年保有するとすると、販売時手数料の相違は平均で0.4%(=2.0%/5)、3年保有なら0.67%(=2.0%/3)ほどアクティブ投信のリターンをさらに相対的に押し下げる。

 

3、TOPIX連動だけが日本株のインデックス投資ではないよ。

同氏のデータでは、シャープレシオではなく、単純なリターンのみの比較でも過去3、5年インデックスが負けている結果が提示されていたが、その理由は、インデックス投信としてTOPIX連動型のみを抽出したからだ。(図表2)

 

過去3年ほど、TOPIXに比較して日経225のリターンが顕著に上回っており、同氏は日経225を除くことで「インデックスファンドの負け」を演出しているのだ。

 

全上場銘柄の加重平均値で計算されるTOPIXのロジカルな明瞭さに比べると単純平均法でありながら、やや複雑な調整法を採っているのが日経株価指数ではあるが、日本株を代表するインデックスとして外されるのは公平ではないだろう。

 

日本ではTOPIX連動と並んで日経225連動がインデックス投信として大きなシェアーを締めている。これを除外するするのは「インデックス自体との比較ではなく、実際のインデックスファンドと比べてみる必要がある」という同氏自身の主張に反するであろう。

 

4、小型株優位のアノマリー?

また日経新聞の田村さんから「小型株優位の効果で非インデックスのリターンが上回っているのでは?」と言う趣旨のコメントがあった。私も日本の2000年代以降の長期で見ると、小型株優位のアノマリーが存在しているのは承知していたのでそうかと思ったが、過去3年で計算すると、非インデックス投信のリターンに小型株優位は消えている。(図表3)

 

5、検証期間が短すぎる。

この種の投資パフォーマンス比較は、アカデミズムも含めて米国では遥かに沢山行われているが、十分に長期の成績を見る必要があり、最低でも10年かそれ以上の比較が常識的だ。同氏の3~5年の期間は妥当な比較をする期間としては短すぎる。

 

6、生存バイアス?

今存在する非インデックスファンドの成績には、成績不振で途中で消えたファンドの成績は反映されていないという「生存バイアス」で押し上げられているというコメントもあった。まことにごもっともなのだが、現在開示されているデータでこの点を補正することはできないので、今回は検証外とせざるをえない。3年程度の短期では、このバイアスはあまり強くないだろう。

 

結論

というわけで同氏の「インデックス相手にアクティブファンドは負けていないor 優っている」という主張は公平、妥当性に欠ける。やはり「高い手数料のアクティブ投信を買わせたい」という業界利害のバイアスが背後に隠れていると感じざるを得ないな。

問題の篠原滋氏のコラム (←クリック)


202110 図表1


202110 図表2


202110 図表3




ダイヤモンドオンラインの論考です。今朝掲載されました。
掲載当日は無料でアクセスできます。

冒頭引用:自民党総裁選に4名の候補が出そろい、9月29日の投開票日に向けて政策提示や論戦が展開されている。一方、立憲民主党は「アベノミクス検証委員会」を立ち上げ、批判的な検証結果を総選挙に向けたキャンペーンに利用しようとしているようだ。
 そこで改めて第2次安倍政権期の経済的な実績をレビューし、経済政策面で何を継承し、何を修正、追加すべきか考えてみよう。
 結論から言うと、「アベノミクス3本の矢」として提示された最初の2つ「デフレ脱却のための大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」については、今や日米欧既存先進諸国では事実上の政策スタンダードになった感がある。日本ではすでに金融緩和政策の効果は尽きているものの、どの候補が自民党総裁を経て首相になったとしても、今の枠組みから大きく離れることはできないだろう。
 むしろ重要な違いが生じるのは、「第3の矢、成長戦略」に盛り込む各論である。その各論として何が望まれるのか。それも安倍政権期の実績レビューから示唆されることは少なくない・・・」

202109 図表1
202109 図表2


ダイヤモンド・オンラインに論考が掲載されました。

冒頭引用:米国株価の一強とも言える相場展開が今年2月中旬以降続いている。図表1が示す通り、2015年初を起点に見ると、中国株価指数(MSCI China)や日経平均株価指数も昨年2~3月の新型コロナショックからV字型回復基調で上昇してきた。
ところが、米国株価指数S&P500は今に至るまで上昇基調である一方、今年2月中旬を境に中国株は下落に転じた。日経平均もそれに合わせて下落、その後は頭打ちの状態になっている。
米国株は堅調なだけでなく、昨年10月の小反落を最後に目立った反落がない。実に安定的なじり高基調だ。果たして今の米国株一強と言える展開はまだ続くのだろうか?死角はないだろうか?今回はその点を考えてみよう。
結論から言うと、現在の米国株の強い上昇基調はGAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)に代表されるハイテク企業群の高い成長期待に牽(けん)引されている。しかし同時に、かつてない金融緩和政策によって経済の名目成長率に比べ短期・長期金利が非常に低く抑制されているという事情に依存している面も小さくない。
その意味では「資産バブルのリスク」も内包している(参考「コロナ株高はバブルへGO?米国発『マネー急増とDXブーム』の行き着く先」2020年9月16日掲載)。株価だけでなく、米国の住宅価格指数(S&P/Case-Shiller Index)が前年同月比16.4%も高騰しているのも不気味だ(5月現在)。
その結果、来年にかけて予想される量的金融緩和の段階的縮小(テーパリング)、その後2023年にかけて見込まれるゼロ金利からの金利引き上げ開始局面で、相応の反落・波乱場面は避けられないだろう。その反落としてどの程度のものを覚悟すべきか。ピンポイントで予測することは不可能だが、過去のパターンからおおよその見当をつけてみよう。」

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         図表1
202108 図表1
         図表2
202108 図表2

日本株が今春以降冴えないのは、新型コロナ感染でも「オリンピックで~」もなく、中国株の下落に引っ張られているのだよ(-ω-)/

 

こんなことは、もっと早く気が付くべきだった。

 

MSCI Chinaも日経平均株価指数も高値を付けたのは今年214日週、以降、日経平均株価指数は中国株価指数との連動性(正の相関)を強めてじり安だ(上段の図、赤い点線が相関係数)。

一方、米国株(S&P500)は逆にジリ高で、日経平均との相関は低下している(下段の図、黒い点線が相関係数)。

 

中国株との正の相関係数は日経平均の方がTOPIXより高い。日経平均の上位構成銘柄は、ファーストリテイリング、ソフトバンクG、東京エレクトン、ファナック、ダイキンなどいずれも中国収益比率の高い銘柄だから、自然な結果だ。

 

投資家層(主に海外投資家層?)は、中国経済・金融リスク(規制強化、社債デフォルトなど)とその日本への負のインパクトを強く意識しているのだろう。そして米国市場はそうした中国リスクの負の影響からは相対的には堅固と意識されているということだね。

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