mojoさんから頂いた次のコメント&質問
 
「現在、国内の資金需要は払底して、国外もよくありません。そのため、日本国内の資金が国債に集中して、それをたけなかさんは「逆バブル」と表現したと理解しています。そこで数年の金利の推移を調べてみました。
2005 1.62 2006 1.76 2007 1.94 2008 1.86
しかし、サブプライム前は当然外国の資金需要は今よりも高かったはずですが、2005-2007の金利上昇は0.32%です。そうなると外国でサブプライムをはるかに上回るようなバブルが長期間継続しないと金利の上昇=国債の暴落は起こらないのではないかと思いました。ですから、たけなかさんは国債暴落のメカニズムを踏まえたモデルケースをある程度想定しているのではと考えている次第です。」
 
2005年から07年までの世界景気の好況を背景とした日本経済の好況局面でも国債利回りは0.32%しか上がらなかった。どの程度の好況(あるいはバブル)が起これば10年物国債利回りの例えば1%ほどの上昇(価格の8%程度の急落)が起こるのか?
 
mojoさんのアプローチは直近の過去の実体経済と国債利回りの変化に基づいているので合理的なように見えるのですが、実はこの考え方では金融・投資市場の変化を予見することはできないと考えています。
 
例えば、山の斜面に雪が1メートル積もった。そこからさらに1メートル積もった。雪の重みで雪の層が10センチほど下にずれ落ちた。だからその上に、さらに1メートル雪が積もった場合も10センチのずれ落ちを予想するという発想は正しいだろうか?
 
正しくないですよね。雪の層が高くなっていくとどこかの時点で、それまでの変化とは異なった大きな崩れが起きる。つまり雪崩現象です。一種の相変化ですね。
 
市場の参加者が蓄積する様々なリスク・ポジションも同様で、実体経済の規模との比較で無限に積み上がることはあり得ない。どこかで崩れ始めると、投資家は一斉に期待(予想)の変更を行い、資産価格の変化は雪崩現象的な大きな変化になる。そういうことがバブル崩壊の度に起こっているわけです。
 
日本の政府債務の累積、国債価格も、逆バブルとして同様だと私は考えているわけです。ただし、現代の経済学はこうしたバブル崩壊的な現象を上手くモデル化できていません。私も別に予想モデルなど持っていない。経験則で考えています。
 
私自身2000年代半ば頃までは、アメリカのエコノミストに日本の政府債務の累積、国債価格の問題を問われると、日本の政府債務は日本国内の貯蓄によってファイナンスされており、政府債務の半分以上が海外投資家によってファイナンスされている米国とは事情が違うから、国債価格は安定的だと説明して来ました。
 
しかしそれも限度がある。2007年までの景気回復過程でプライマリーバランスベースの赤字が比較的急速に縮小したので、私は先行きをそれほど悲観していませんでした。しかし、2009年からの政府債務急膨張で、私は自分の楽観的見通しを修正する時だと考え始めたわけです。
 
もちろん、政府債務のソフトランディング・シナリオは全く可能性がないわけじゃない。日本国民としてそれを望んでいる。そのための条件は、やはり政府が本格的に増税を含む長期的な財政再建計画を設計して、投資家の信頼を将来にわたってつなぎとめることができるかどうかにかかっている、と考えているわけです。
 
鳩山首相にはもはや何も期待できない状況となりました。政局は混とんとしてきました。与党と野党が大連立でも組んで、財政再建問題に取り組まないと、やがて雪崩が起こり、儲けるのは国債の空売りをしたヘッジファンドばかりというとんでもないことになると心配しています。