yos*i*sieさん.のコメントを取り上げてみましょうか。黒字がyosさんのコメント
青字の部分が私の対応コメントです。
 
「健全な需給によるインフレか、通貨価値(信頼)の棄損によるインフレか、
最近円高是正をサボっていると日銀に批判が集まっていますが、では批判している人は上記のどちらを行えと言っているのだろうか?はっきり言い切ってもらいたい。
 
インフレというものは程度の違いはあっても、本質的に通貨価値の下落、棄損であることに変わりない。その程度が2%程度か、10%か、あるいはハイパーインフレのように100%を超えるかという程度の違い。
 
「健全な需給によるインフレ」というのは、現在日米欧みなそうなっているGDPのマイナスの需給ギャップ(需要過少)が解消して、デフレから軽度インフレ(一般に金融政策当局が望ましいと考えているCPIで2%~3%程度のインフレ)になることをイメージしているのだと思う。
 
「なぜ日本だけデフレなの?」シリーズで解説した通り、インフレ・デフレ要因は、①マネタリー要因、②実体経済要因(需給ギャップ)、③経済主体の期待要因の総合的な結果だと考えている。どれか一つの原因だけでインフレ・デフレは説明できない。
 
また、軽度のインフレが望ましいという場合に、それがどの要因によってもたらされるかは関係ない。
だからご依頼に応じて、はっきり言わせて頂くと、「現状のデフレから脱してCPIで前年比2%程度のインフレになることが今の日本には望ましい」とだけ言える。
 
マネタリーな政策であってもデフレを終わらせることを市場参加者に期待させることができれば、デフレ期待がインフレ期待に変わり、経済主体の行動選択が債務返済から資金調達・実物投資に転換し、マイナスのGDPギャップも解消に向かう。
 
また、インフレが過度になりそうだったら、それを予防するには金融引き締める、つまり金利を上げればよいのだから、通常の金融政策で対処できるという点で、デフレより対処しやすい。 デフレの厄介さは、金利政策が機能しなくなる点にあるんだから。
 
前者の手段はほぼ存在しない(アジア円経済圏を作ってアメリカから独立するぐらいか)。

「アジア円経済圏」がなぜマイナスのGDP需給ギャップが解消する方策になるのか、不明。

国益といえばハードランディングをしないこと(ハードランディングをして混乱が起こると、安いところを外資に買い叩かれて奴隷になる。日産をフランスに取られた。毎年何千億円も貢いでいる)。そのためには今の政府の過剰な借金(国債バブル)や世代間格差のようなひずみを大きくしないことが一番の国益と思う。

それはその通り。ただ、「日産をフランスにとられた」という言い方には賛成できない。それを言ったら、「GMはトヨタによって破綻させられた」とか、「ソニーがアメリカの映画産業を奪った」とか言えてしまう。 相互に買収し、買収され合うのが、グローバル経済の現実。

そもそも通貨の信頼を毀損するような円安政策を取ったとしても、余計な金利を払うだけ。その金利は結局将来世代に付け回されるだけ。今、無鉄砲に緩和しろとわめいている人たちは、今さえ良ければ後は知らないというようにしか見えない。自分の任期さえ無事に過ごせばOKという公務員となんら変わらない。まあ、有効な手段がないとわかっている人も結構多いとは思いますが。
少なくとも私は一方的な円安論者ではないことは、弊著ご覧いただければ分かるはず。
 
ただし景気が脆弱な状況で購買力平価よりも円高になるというのは、風邪をひいている時に体を冷やすようなもので害が大きい。第1次世界大戦の後、通貨価値が低下したにもかかわらず割高な旧平価で金本位制に無理やり復帰して、デフレ不況になったのと同じ影響がでる。
従って、過度な円高にはしない方策が、金融・為替政策に求められる。
 
また、デフレの方が政府債務問題にとって望ましいと、もしお考えならば、全く間違っている。政府債務問題のソフトランディングには軽度のインフレの方が望ましく、デフレは政府債務問題をますます困難なものにして、最後にはハードランディングを導く要因となる。これは世界の財政学者のコンセンサスだろう。
 
この点は、ビジネスオンラインで以前、桑原進先生が次のように解説しているので、勉強しておいて頂きたい。関連命題:ドーマーの定理
「このように、デフレが起こると名目上は財政への負担が減るような気がします。ところが実質はどうかというと、デフレが起こっている裏側では名目GDPが小さくなっているんです。将来、国債を返すもとになるのが名目GDPです。国民全体の所得です。これが縮んでしまうと返せなくなります。  債務残高はデフレでも減ってくれませんからね。従って、返済義務の相対的な負担はむしろ増大します。このようにデフレ下では見た目の財政赤字が隠され、実質では増大するということが起きてしまうのです。」
 
だいたいこんなところで良いでしょうかね。