8月に日本経済新聞に掲載された為替関連記事を2つホームページにアップしました。まだご覧でない方は、以下のサイトからご覧頂けます。
 
世の中、円高阻止のために政府・日銀が市場介入(円売り・ドル買い)するの?しないの?と話題になっているので、先日エイハブさんから頂戴した市場介入関連の問題提起について、ちょっとまとめておこう。
 
「介入に関し、疑問に思うことが幾つかあります。
1.自国通貨に関しては非不胎化しているけれども、相手国通貨の短期金融市場への影響は放置しているという理解でいいのでしょうか?特に相手国の賛同を得ていない単独介入の場合、先方の中央銀行からは「メンドウなオペを押し付けやがって」という話にはならないのですかね?」
 
エイハブさんのこの質問、「何言ってんだかわかんねえ」方も少なくないと思うので(いや、分からない方が普通)、補足しよう。
日本政府・日銀が円売り・ドル買い介入すると、民間に対して円資金を提供して、見合いにドル資金を吸収することになる。 当然、マネー市場の資金需給は日本では円資金が供給されて、その分だけ円資金余剰になる。
 
介入で生じたこの円資金余剰分を、公開市場操作で別途吸収して円資金需給への影響を中立にすることを「不胎化」と言う。逆に「非不胎化」とは、供給された円資金による余剰を放置すること。
 
外為や国際金融の議論に疎い方は、「不胎化なんて、へんな言葉じゃないか」と思うだろうが、私もそう思う。いっそ、円資金を放出するけど、同時に回収して「妊娠」させないのを「避妊化」、放出しっぱなしを「妊娠化」とでも読み変えておくと頭に入る。
 
一般に、不胎化を伴う円売り介入は、外為市場の需給には一時的なインパクトを与えるが、円マネーの供給量が増えるわけではないので、持続的な円安効果はないと考えられている。逆に、非不胎化を伴う場合はある程度の円安効果も見込めるはずだということになる。
 
さてエイハブさんの質問は、ここから先で、円売りの対価のドル買いでドル資金はマネー市場から政府・日銀が吸収することになる。それは最終的には日本政府が米国債を購入して、外貨準備になるわけだ。 そのことはドル資金としては、民間市場からドル資金が吸い上げられるので、ドル資金の需給がタイトになる。 
 
デフレ不況回避のためにドル資金ジャブジャブにして、短期ドル金利もゼロ近辺の水準にしておきたいのは米国FRBも同様だから、日本によるドル資金吸収の影響を相殺するために、FRBはドル資金供給の公開市場操作をする必要がある。 そこで「日本が介入したおかげで、メンドウなオペ(公開市場操作)を押しつけやがって」とFRBが思うことはないのか? というのがご質問ですね。
 
ほとんど全ての国はなにがしらの外貨準備を保有して、その60%以上はドルで保有している。米国マネー市場における諸外国の政府・中央銀行のドルの支払いや受け取りは、毎日莫大な規模で起こっており、FRBはそうしたドル資金の供給と需要の全てを含めてマネー市場での操作(ドル資金の吸収、あるいは放出)を行なっている。別に日本だけの介入見合いに追加的な手間が増えると言うことはないと思う。これが私の答え。
 
別の質問はまた後で。