アメリカ経済、2007-09年金融危機と不況から回復過程にはあるが、「回復力は弱く、アメリカの失われた10年が始まっている」という議論がある。
失われた10年を「所得が伸びない10年」と定義してみようか。その上で9月に発表されたアメリカのCensus Bureaの家計所得データを見ると、失われた10年は今始まったのではなく、過去10年が「失われた10年」だったことになる。
「えつ~、そんなバカな、2006、07年頃までは経済成長し、アメリカ経済はイケイケでやっていたのではないのか?」 以下のアメリカ家計を年間所得で5分位にした実質年間所得の推移を見て頂きたい。
過去約10年間ほど上位20%から下位20%までの全クラスの実質所得の伸びは、ほぼフラットである。
示された所得金額は、下位から4位までの場合、各階層の一番上のクラスの所得であり、トップ階層(むらさき色)の場合は、その階層の中の一番下の所得を示している(約18万ドル)。平均値ではないので勘違いされないように。 このトップ20%の中に、大企業のCEOなど私達には大き過ぎて頭がくらくらするような金額の所得を得ているスーパーリッチがいるわけだ。
また過去20年、30年で見ると、上位20%と下位層の所得格差は歴然と拡大している。超格差社会である。
最も分布が多い階層の所得は年5万ドルほどだ。90円で換算すると450万円。このミドルクラスも過去10年、実質でほとんど増えていない。もっともデフレの日本と違い、2~3%程度のインフレ率だから名目では増えている。でもそれで豊かになっていると錯覚できるほど人間はバカじゃないだろう。
「アメリカのミドルクラスは所得増加の希望がほとんどないのか、日本と同じやな」と思うのはちょっと誤解しているかもしれない。というのは組織で出世するか、事業で成功すれば、下の所得階層から上位の所得階層に上がれるので、アメリカのミドルクラスにも所得増加の希望がある。ま、日本も同様だけどね。
ただし失職や事業に失敗して下の所得クラスに落ちる人もいる。
またこれはサーベイによる調査であり、日本で言うと家計調査と同じだから、マクロの所得データとは一致しない。マクロの所得データ(国民経済統計)を見ると、2008-09年の2年間は横ばいか若干減少しているが、10年間では増加している。
どちらがより実態に近いか? これは難しい問題で、お答えできる用意がない。
このデータを見てなんと思うか、様々だろう。
日本だけデフレと低成長で情けない、ふんだりけったりだ・・・と悲観したり、愚痴りたい方がおられれば
これを見て、まあ、なかなかうまくいかないのは日本だけじゃないよ、という気持ちになるのも良いだろう。
それとも、ただ今急成長中の中国に生まれたかったですか?あの国に?まさか本気じゃないでしょ・・・?

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