今日、10月4日付のWSJの“Americans Sour on Trade”という記事が目に止まって読んだ。
「アメリカン・サワーっていうカクテルの取引かい?」
ちゃうちゃう。
「アメリカ人が貿易で酸っぱい思いしている」
もうちょっと・・・
 
日本では「Sour(サワー)」というと、すっきりした爽快感のイメージになぜかなるのだが、アメリカ人にとってsourは、酸っぱい=まずい=不愉快の意味になる。
副題は;Majority Say Free-Trade Pacts Have Hurt U.S.
 
要するに「自由貿易協定なんかくそくらえだ」「中国の野郎、自国の為替相場を操作して、安い製品ガンガン輸出して、アメリカから雇用を奪っているのさ」というムードになってしまっているという記事。
 
それも、低所得層から高所得層、ブルカラーからかなり知的労働層まで、そういう気持ちに傾斜していると記事は言う。11月の中間選挙を控えた議員さん方は、言うに及ばない。
 
まあ、経済が停滞して失業率が上昇している時は、いつもそういう意見が台頭するのだが、今回は失業率が9%台と30年ぶりの高さだし、それが長引きそうなので、あなどると見誤るかもしれない。
 
「大きな政府、反対」「増税反対」「オバマのヘルスケア・リフォーム反対」で政治的な台風の目になっているTEA Party運動が、もし保護主義に傾斜したりすると、保護主義の力もけっこう大ごとになるかもしれない。
 
1980年初頭のアメリカの不況の時は、やはり失業率が10%前後まで上昇し、当時は日本、特に日本の自動車輸出が目の敵にされて、バッシングされた。 90年代になってもクリントン政権で日米貿易問題で執拗に攻撃された。 今度は中国が標的になっているのだが、日本と違って脅せば折れる相手じゃなさそう。 で、どうする? 対中輸入関税で報復やっちゃうか?
 
そうなればむき出しの保護主義となり、つまりはケンカだ。
エコノミストが当然の議論として、「自由貿易は双方の国の利益になります」とリカード以来の比較優位と自由貿易の原理を説いても、「おまえは、すっこんでいろ!」状態になるかも・・・。
 
ちなみに、比較優位・劣位の概念は、今日でも、世間で最も広く誤って理解されている経済理論のひとつだね。
 
日本政府には、とばっちりを食わぬように、上手に立ち回って欲しいのだが・・・。