大学のシニアな先生から「これおもろいから、読んで、著者はボクの友人なんだけど」と言って文庫本を一冊頂いた。
 
2006年に文芸春秋から単行本で出た「ベンチャー失敗学」の文庫本版である。
京都大学工学部を卒業して、住友商事に勤務し、独立して(株)1999年に関西ベンチャーキャピタルの設立に係り、その後その社長をしている村上建夫さんという方の抱腹のベンチャーキャピタル経験談である。
まるで落語を読んでいるような洒脱な文体がなんとも言えない。
 
えらく面白いのに、単行本でも文庫本でも「とても売れている」という状態ではないようだ。
以下に一部だけ引用しておこう。
 
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「先生、出資者に対するリスク開示はどこまでしたらよいのですか」
「それはね、説明された人が出資する気をなくすまでしなければいけないとグローバルスタンダードになっています。」  ~中略~
「そんなことをしたら、お金が集まらなくなってしまうじゃないですか。お金を集めることが目的なのに、それでは説明会など開かない方がましです。」
「心配いりません。儲けようと考えている投資家はリスク開示文章を読みもしないし、説明を聞こうともしません。リスク開示をいくらしても、それが投資意欲を損じることがないと経験的に分かっています。安心してどんどんリスクを開示してください。」
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全体を通じて、こういう感じで話が展開している。
あえて難点を言えばビジネス本としてノウハウを期待して読んだ方は、期待に反して「落語を読まされた」と思うことだろうか。 しかしそれでは料簡が狭すぎるだろう。だって、優れた落語は人間観察の粋じゃあないか。