中国のインフレ上昇と住宅などのバブル的高騰が最近ますます気になる。そうした記事が今日1月10日の日本経済新聞にも載っていたので、記録のために以下に張り付けておく。
マネーストック(以前は「マネーサプライ」と呼んだが、今はマネーストックの呼称が一般的)は、銀行部門の信用創造機能で増加し得る。中国では土地の所有権はないが、代わりに「長期使用権」が取引される。それを独占している地方政府は、農民から二束三文で土地をとり上げ、銀行(国有銀行)からのな融資で、工場団地や住宅用地に仕立て上げ、それを供給することで莫大な税外歳入にしている。当然、役人の賄賂、着服が横行している。
土地の長期使用権は元値がただ(無価格)なんだから、地方政府・共産党の役人にしてみれば、濡れ手に粟、不動産錬金術のようなもので、記事が指摘する通り、「やめられまへんな」が実情だろう。
要するに不動産の長期使用権を担保に莫大なマネー増発が行なわれている。デベロッパー事業自体が、地方政府の作った別会社で行なわれているケースも多いと言う。こうして増発されるマネーが急速な購買力の拡大や様々な投機現象も生み出している。
典型的なバブルメカニズムに思えるが、このメカニズムが具体的にいつどういう形で破綻するかは、まだよくわからないが、バブルの膨張が無限に持続しないことだけは確か。破裂する時にはもの凄いことになるだろうなあ・・・。
以下記事:
中国、土地収用巡るトラブル深刻
住民が爆弾武装や自殺 中央政府の強制禁止に地方役人従わず
2011/1/10付
住民が爆弾武装や自殺 中央政府の強制禁止に地方役人従わず
2011/1/10付
ニュースソース
日本経済新聞 朝刊
【北京=尾崎実】中国で土地収用を巡る地元当局と住民とのトラブルが深刻化している。強制収用に反発した住民が爆弾で武装し、焼身自殺を図るなど対立は激化の一途をたどる。中央政府は乱開発の取り締まりを強めているが、「農村の急速な都市化政策が土地収奪の温床になっている」といわれ、政策のゆがみを指摘する声も多い。
年に暴動数万件
農村問題を専門に研究する中国社会科学院の于建●(やまへんに栄の旧字)・副研究員の調査チーム約10人が昨年12月31日、浙江省楽清市にある海沿いの農村、寨橋村に入った。目的は同月25日、建設業者のダンプカーにひかれて死亡した同村村長(53)の死因究明。同村では2004年、火力発電所の建設に伴い広範囲で土地が収用されたが、補償額の少なさに住民が反発。村長は地元政府への陳情や抗議を繰り返していた。
死亡の数日後、インターネット上に車輪の下敷きになった村長の写真が掲載された。地元警察は交通事故と判断したが、住民らは「謀殺された」と反論。今月1日には約1000人が線香を手にデモ行進し、警察は参加者を一斉摘発した。
村内には数百人の特殊警察部隊が常駐し、住民の行動監視を続ける。于副研究員は「住民側の合理的な要求を6年間も無視し続けた政府の姿勢は問題だ。人々の怒りは抑え込めないほどに高まっている」と指摘。補償問題だけでなく、村長の不審死を巡る住民らの疑問も解消しないままだ。
中国では、強制立ち退きや官僚腐敗への不満に根差した農民らの暴動が毎年数万件発生しており、昨年後半からは抗議行動の過激化が目立ち始めた。江西省撫州市で9月初め、地元政府から立ち退きを求められた住民3人が集団で焼身自殺を図り、1人が死亡。黒竜江省ハルビン市でも11月末、政府の土地収用に3人が手製の爆弾や刃物を使って抵抗した後、爆弾で焼身自殺を図った。
中国国務院(政府)は昨年11月、温家宝首相の主宰で開いた常務会議で、農民の意思に反した強制的な土地収用を禁じる方針を決めた。しかし、安値で買い取った農地を開発し、利益につなげるうまみを知った地方政府の役人が中央の方針に素直に従うはずもない。
不満高まる一方
于副研究員が同月、江西省の農村を訪れ、地元トップの党委員会書記に対し、性急な開発と反発した住民の身柄拘束を批判すると、書記は「発展がなければ、あなたはホテルも高速道路も利用できない」と聞く耳を持たなかったという。
住宅価格や物価の高騰、腐敗、就職難、そして力ずくの土地収奪――。都市と農村の別なく国民の不満は高まる一方だ。胡錦濤国家主席は12月末、貧富の格差是正と国民の生活改善に取り組むことを強調する新年の祝辞を発表。国営の中国中央テレビは胡主席が北京市内のアパートを視察する模様も伝えた。
中国は今年7月、共産党創立90年の節目を迎える。統治の正統性を改めてアピールしたい党・政府にとって社会安定の維持は最優先事項となるが、あるネットユーザーは「民衆の苦悩を理解できない政権に、住民不満の解消など期待できない」と訴えている。
開発業者との癒着が背景 農村の都市化推進も拍車
2011/1/10付
ニュースソース
日本経済新聞 朝刊
【北京=尾崎実】中国各地の地方政府が農地の収用に奔走する背景には、政府と企業が一体となった開発が利権を生み出す構図がある。政府系シンクタンクの国務院発展研究センターによると、開発に伴う地価上昇で発生した利益のうち、5割程度を地元政府側が、4割以上を開発業者が得るのが一般的で、農民に渡るのは立ち退き補償金に当たる5~10%程度だ。
中国紙記者は「地元政府幹部の親族や知人らの経営する業者が、事業を受注するケースが目立つ」と指摘。「業者の利益の約5割が、政府幹部らへの裏金として還流するといった噂が絶えない」という。
共産党・政府は2006年ごろから、都市と農村の所得格差を是正するため都市化政策の推進を表明。政策運営の基本方針を示す昨年の「中央1号文件」も「積極的かつ穏当に都市化を進める」との文言を明記した。長年にわたり農業・農村・農民の「三農問題」の解決に取り組んできたが、「農業経営の効率化は実現が難しく、都市化にかじを切るほかないと判断した」(鄭風田・中国人民大教授)形だ。
党・中央の方針を受け、地方政府は住環境整備などを名目に農地の収用・開発を一層活発化。昨年11月の不動産販売価格は、前年同月比の上昇率が甘粛省蘭州市で11%に達するなど、沿海部だけでなく内陸部でも大幅な伸びを示した。
各地で地価が高騰を続ける一方、立ち退き補償額が少ないことから、政府が新居に指定したマンションなどに入居できない住民も続出している。北京の大学教授は「党・中央が都市化の推進を通じ、農地収奪を容認しているのも同然の状況だ」と批判した。
中国の土地制度とは
2011/1/10付
ニュースソース
日本経済新聞 朝刊
▼中国の土地制度 中国ではすべての土地が国有で各地方政府が管理しており、土地の使用権だけが取引できる。使用権の購入後も利用方法などについて政府の指示に従う必要がある。四川省成都など一部地域は農地や林地の使用権の売買・賃貸を扱う「農村財産権取引所」を設立。市場を通じた需給に基づく透明な価格形成を目指しているが、緒に就いたばかりだ。一般的には各地方政府が使用権を強制的に安値で買い取り、商業施設やオフィスビルを強引に開発するケースが目立っている。
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