既に報道されているが、1月21日、内閣府による「経済財政の中長期試算」が報告された。
以下に添付したのは、同報告書の掲載グラフの一部であるが、グラフを使って分かりやすく説明されているのでぜひ報告書本文をご覧頂きたい。
 
2023年までの経済成長と財政収支の姿を、楽観シナリオ、悲観シナリオの2つに分けて試算が示されている。楽観シナリオでは、2012年に消費者物価指数が前年比プラスとなってデフレを脱却し、名目成長率は平均3%台、実質成長率は2%台で推移した場合を想定している。
 
この楽観シナリオでも、基礎的財政収支(プライマリーバランス)は赤字のままでGDP比率で2.0%までしか縮まらない(2010年のプライマリーバランスのGDP比はマイナス6.5%)。また財政収支そのもののGDP比率は(2010年-8.6%)は、いったん-6.3%まで縮むが、その後また拡大して2023年には
-9%近くになる。 
 
つまり楽観シナリオでも残高としての政府債務の対GDP比率は上昇を続けるということだ。
「日本のPIIGS化」である。悲観シナリオは推して知るべしであり、ご覧頂きたい。
 
日経ビジネスオンライン「民主党は潔く分裂して出直せ」(2010年12月27日)で、既に先進国となった今の日本にとっては(インフレが暴走するなどして)名目成長率が非現実的なほど高くならない限り、「成長率の引き上げで財政赤字の解消など不可能」であることを単純だが分かりやすい図表で示した。遥かに精緻に行なわれている内閣府の試算も、結論は同じだと言うことだ。
 
日本の財政は給付と負担の構造的な乖離(給付>負担)に陥っており、成長率を現実的な可能な範囲で引き上げるだけでは解消しない。こうした試算を「財務官僚によるやらせ試算」だと考える方々もいるだろうが、こんなことはほとんどの財政学者やエコノミストにとっては常識的な知見に過ぎない。コンセンサスと言えるだろう。
 
せっかく民主党菅内閣が、「税と社会保障の一体的改革」の具体化の議論に舵を切ったのに、野党自民党は「解散・総選挙に今持ち込めば、前回落ちた自党議員も復活して、政権に返り咲ける」という党利党略ばかりが先行して、超党派の改革議論に進もうとしていない。困ったことだ。
 
それでは野党時代の民主党と全く同じではないか。仮に解散・総選挙で自民党&公明党政権が復活しても、消費税増税を含めた「税と社会保障の一体改革」は避けて通れない課題だ。その時には再び野に下った民主党が、「自民党の議論なんかに加担できない」と言って超党派の作業に背を向けるのだろうか。  
 
ああ、そうやって改革できずに、年月ばかりが過ぎてゆく。亡国の道だろう。
 
菅内閣に参加した与謝野馨氏の動きが批判、罵倒されている。
与謝野さんは私の住む東京都新宿区の選挙区で、私が中学生だった時に初めて自民党から出馬した。私は当時まだ中学生だったが、ちょっとませたガキだったせいだろう、その時に近所の小学校の体育館で開かれた氏の講演会に参加した時のことを覚えている。 
 
与謝野氏は選挙民の歓心を買うようなことをあまり言わないので、選挙では強くない。前回の総選挙でも小選挙区で負けて、自民党の比例で復活したのだから、確かに自民党の立場からすれば「裏切り者」「恥知らず」であろう。
 
しかし「ただ大臣になりたかったので菅内閣に迎合した」ような人物では決してない。「恥知らず、裏切り者」と罵倒されることを覚悟で矢面に出ることを引き受けたのだと思う。だからその点をメディアで質問されても「口で申し上げても分かって頂けることではないでしょう」と弁解していない。
 
与謝野さんは日本の経済・財政がこのまま沈没していくことを看過できずに、「恥知らず」になる覚悟で、自分の政治生命がこれで終わりになることを承知で引き受けたのだと思う。 
並みの人物にできることではない。嗚呼、憂国の心、誰ぞ知る・・・。
 
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