2008年に出版されて日本SF大賞を獲得した小説の文庫本版が1月に出て、買って読んだ(上中下3巻)。
作者、貴志佑介は私にとって初めての作家だ。これが大そう面白かった。
 
 
時は今より1000年後の未来の日本、少数ではあるが呪力を有するミュータント人類と通常人類の間で世界戦争が起こり、現代機械文明は滅亡する。その後のミュータント独裁者の時代を経て、通常人類は姿を消し、呪力人類によって文明と秩序が再興された時代を舞台にしている。
 
文明は再興されたが、科学技術のレベルは江戸時代末か明治初期のレベルで、人口も日本全土に数十万に過ぎない。日本に幾つかの町をつくり、外界と結界で遮断された牧歌的な世界で暮らしている。
 
まあ、そりゃ念じたことが実現できる呪力があれば、高度な科学技術は不要だろう。子供たちは呪力に目覚める思春期になると、目覚めの順に呪力を学ぶ学校に入学して、そこで技を磨く。
 
出だしの上巻は、呪力=魔法、少年3人と少女2人=少年2人と少女1人に置き換えるとハリーポッター・シリーズを連想させる展開で始まる。呪力を使った対抗戦ゲームはポッターのクィディッチを想起させる。作者はポッターシリーズにinspireされていると思う。
 
しかし、ポッターに似ているのはそこまでで、中巻、下巻では町の外、つまり結界の外の世界で展開している意外な出来事がどんどん膨れ上がり、主人公の子供らが巻き込まれていく。やがて町全体をひっくり返す大騒動に発展し、過去1000年の歴史の闇が明かされるのだが、それは読んでいない方のために語らないでおこう。