三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の貸借対照表(2011年3月末、連結ベース)を見て驚いた。 保有する「有価証券」の残高が71兆円(総資産の34.4%)にも増加し、貸付金80兆円(同38.8%)に匹敵する第2の資産項目になっているのだ。保有有価証券は国債と地方債が大半であり、64%を占めている(国内株式の比率は5.1%)。
 
2005年3月末の有価証券保有残高は48.5兆円(総資産の25.9%)、貸出金85.7兆円(同45.8%)であるから、6年間で有価証券の保有残高は22.5兆円も増えたことになる。
 
みずほFGや三井住友FGも見てみたが、同様に国債と地方債を中心にした有価証券保有の急増と貸出比率の低下が見られる。
 
元来日本のマネーフローは、家計貯蓄の株式や社債などへの投資の多様化が進まず、銀行預金を通じて企業部門の貸付金に流れ、郵貯への資金は国債の購入に集中していた。ところが2000年代以降は、民間銀行の資金も国債に流れるという変化、つまり「民間銀行の郵貯化」が進むことで政府債務はその急膨張にもかかわらず超低位に安定している。
 
融資が本業の銀行が、国債保有残高ばかり膨張させている。これじゃ経済が成長しないのは、当然だね。
 
「経済の低成長が続いているので、企業部門の資金需要は弱い。一方、政府の赤字は増加して政府部門の資金需要が拡大している。従って国債に金融機関や投資機関の資金が流れるのは当然だ。それで何か問題があるのか?」  そう考える方もいるだろう。
 
しかし、それは大間違いだ。なぜか? 今週の金曜日掲載の予定の日経BPビジネスオンラインに書いたので、金曜日にご覧頂きたい。
 
竹中正治ホームページ