雑誌の表紙、あるいはカバータイトル、特集テーマというものは、その時々の世相を反映して猫の目のように変わるものではあるが、毎日新聞社の「エコノミスト」の今年の米国経済に関する編集ポリシーは、「超猫の目状態」というべきか、「くるくる回るよ風見鶏」というべきか。
 
今年1月のタイトルが 「米国デフレ」で大悲観論、3月1日号(2月下旬発刊)は「米国復活」で大楽観論、それで今週出た7月5日号は「米国景気大失速」でまた大悲観論。 ふ~ん、文字通りなら、米国景気はわずか6カ月でデフレと回復と大失速をやってのけたわけだ。  
 
もちろん、そんなことはあり得ない。巨船と同じで米国の実体経済はゆっくりとしか変化しない。くるくるめまぐるしく変わっているのは、景気動向をみる人間、雑誌編集者、エコノミストの主観に過ぎない。
 
私なんかは、金融機関のエコノミスト稼業は足を洗ったので、「短期予測は一切しない」という方針のもとに、2011年の米国経済はGDP成長率で3%弱で「ゆっくり回復」という見通しを昨年11月の某講演会でやってから一切変えていない。「エコノミスト」の3月号「米国復活」特集では私も寄稿したが、あくまでも「中長期的に慎重ながら楽観」の内容で書いた。
 
まあ、実はいばるほどのことじゃないな。毎月、毎週、あるいは毎日のように「・・・で、ここから先、景気はどうなりますか?」と投資家や取引先に尋ねられ、説明する稼業じゃないから、ズドーンと見通し不変でやっていられるだけ。 
 
毎日のように小うるさく「・・・で、ここから先、どうなりますか?」て聞かれると、人間は雰囲気にのまれる動物だから、その時々の世間の超短期的な勢いに影響されて、楽観に傾いたり、悲観に傾いたりしてしまうものだ。
でも時期とタイトルを見ると気がつくと思うが、表紙タイトルは実は「逆指標」になっている。世間の景況感の変化を編集者が感じとって、特集にして出すまでにタイムラグが生じる。その結果、「デフレ!」と打ち出した時には、すでにデフレ懸念は消え始めており、「復活!」と出すと実は既に超短期的な楽観論には影が差す状態になっているのだろう。 
 
だから7月5日号(6月27日発売)が「大失速」と出したことも、実は逆指標になるのかもしれない。
実際、27日から米国の株価がまた上昇し始めているしね・・・・。
 
竹中正治ホームページ
 
イメージ 1
イメージ 2
イメージ 3