本日掲載された(下)は小幡績教授の執筆だった。私の論考は円相場の長期・中期の読み解きが中心だったが、小幡さんの内容はミクロレベルの企業の対応に関する内容だから、編集としてはバランスのとれたものになった。
最後の部分で次のように書かれている。
「 最後に、資本市場の効率化が円高をプラスに変えるもう一つのカギとなる。蓄積した国内資本を国債という形で政府部門の非効率な投資、消費に回すのではなく、成長性の高い新興国や途上国に投資して、資本所得を増やし、国内の雇用所得の減少を補う。」
この点、100%賛成で、私も強調したい点なのだが、どうすればそういう方向に投資フローが変えることができるのか有効な政策手段がわからない。小幡さんは、書かれていないけど、アイデアあるのかな?
だから私は「円高をチャンスに変えるアニマル・スピリッツが求められている」と書いて締めくくったんだが、これでは「アニマル・スピリッツ様」にお祈りしているのと同じだ。
企業は自社の死活の問題だから、海外への投資を増やしているが、1500兆円の家計の金融資産は銀行や郵貯銀行を通じて赤字国債に流れ込むばかりで、付加価値を生み出すための未来への投資になっていない。((+_+))
それから1点、今日の日経記事で気になった点を指摘しておこう。
FTの記事の邦訳で、次のように書かれている。
「1つは適正価格から大きく乖離(かいり)しているスイスフランと違い、円は特別高いわけではないことだ。日銀の試算によれば、円は輸出競争力を示す「実質実効為替レート」では過去30年間の平均とほぼ一致する。このため現在の円の価値は、1995年初めに79円95銭に達した時点よりも3分の1ほど低いことになる。」
それはその通りなのだが、問題は実質実効相場を計算するデータにある。
現在公表されている日銀の実質実効為替レートは、各国の消費者物価指数で計算されている。しかし購買力平価(あるいは同じことだが為替相場の実質化)に適合する物価は、貿易財だから非貿易財の比率が高い消費者物価指数は妥当性が低い。
その点は日銀の担当者もよく承知で、以前は企業物価(あるいは生産者物価)を開示している国は企業物価で、そうでない国は(中国を含むほとんど途上国)は消費者物価で計算していた。ところがBISが消費者物価で実質実効指数の算出を統一するようになったので、日銀もそれにならってしまった。
その結果、日銀の実質実効相場は、輸出産業へのインパクトを考えると上で妥当性が低下した可能性がある。
というのは中国だって、消費者物価は前年比6%で上がっているが、輸出品はそれほど値段を上げずに、あるいは値段を下げている。だから企業にとっての円高の「体感温度」はやはり貿易財物価で評価しないとね。
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