今週号のThe Economistは、ユーロ圏政府債務危機に関する以下の記事がカバー・ストリーになり、極めて強い危機感と対策の必要性を説いている。
 
How to save the euro
It requires urgent action on a huge scale. Unless Germany rises to the
challenge, disaster looms
 
まあ、危機感の強調度としては当然の状況だろう。
どうしたら良いかという点では、要約すると以下の通り。
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ギリシャの政府債務は既に履行不能の状態にあるのだから、「払える」ような幻想を捨てて、債務削減を含む債務リストラに踏み切るしかない。一方、他の国の政府債務はそうした状態にはないので、その点をはっきりさせるべきだ。
 
問題は、ギリシャの債務リストラが、「ポルトガル、スペイン、イタリーも同様の事態になる」になるという連想で飛び火する延焼をいかに防ぐかである。 この点では断固たる態度でECBによる無制限の流動性供給や国債の買い支えをすることだ。市場の投資家を納得させるような厳格なストレステストを銀行に実施し、自己資本が足りなくなる可能性のある銀行に公的資本の注入も必要。
 
この処置はドイツを筆頭にユーロ圏諸国の巨額の財政コストを要し、政府債務はいったん一段と増加せざるを得ない。それでもこのまま事態の悪化を放置した場合のコストよりずっとましだろう。
より長期目標では財政ルールに関して財政主権まで踏み込んだユーロ圏の再構築が必要だが、それは目先の危機の爆発を回避した後の政策目標である。
 
一方、ギリシャのユーロ離脱という選択肢は、状況を一層悪化させる危険が高い。というのは、離脱を口にしたとたんに、ギリシャの金融機関から資金は一斉に海外に流出する。なぜなら価値が大幅に下落するギリシャ・ドラクマに戻る前にユーロのまま資金を海外に移そうとみんなが殺到するからだ。その結果、ギリシャの金融機関、金融システムは崩壊するだろう。しかもその危機が他国に飛び火する危険がある。
メルケル・ドイツ首相は、この事情を有権者に説得する政策的な決断をしなくてはならない。
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やや粗い要約だが、ざっと、こんな内容。
一方、中国がイタリアなどに「ユーロ国債、こうたるさかい、見返りに対中国の武器輸出禁止などやめんかい(なぜか疑似大阪弁)」とアプローチしていると報道されている。中国らしい・・・・。
 
ユーロ圏全体では対外負債が膨張しているような危機ではない。つまり海外からの資金援助を必要とするような状況ではない。ユーロ圏の銀行のドル資金調達問題は、日米欧中銀のドルスワップでECBがドル資金供給することで対応できている。
 
要するに、ユーロ圏のPIIGS国債を断固として買い支えるかどうか、というECBと各国政府の決断の問題。それはユーロ・スタート時点では想定していなかった、あるいは自ら禁手にした手段ではあるが、決断すればできることに過ぎない。
 
だから中国なんかにつけ込まれずに、決断して欲しい。ユーロ圏が世界経済を道連れに崖から転落するかどうかの瀬戸際だと思う。でないと欧州末代までの失政として歴史に刻まれるぞ。