本日の日経ビジネスオンラインの國枝繁樹先生の掲題論考は、財政赤字・政府債務問題にご関心のある筋は、是非読んでおく価値がある。
 
私の記憶では10年ほど前にもリチャード・クー氏が、同氏の積極財政政策の正当化のためにラーナー流の「内国債(国内で発行される赤字国債)は将来世代の負担ではない」と主張して、財政学者の総批判を浴びていた。
 
学問の世界では決着がついた知見でも、世間には普及しておらず、ご都合主義で誤った俗論が再登場、横行するものだね。現代に蘇った天動説のようなものか。
 
まあ例えばアメリカには本気で創造説を信じ、アポロによる月面着陸を「でっちあげ」と信じている人達が沢山いるから、財政赤字問題に関する俗論の横行は、不思議でもなんでもないけど。もっともアメリカでは「財政赤字問題ない論」ではなく、「財政膨張は、なんでもかんでも反対論」という日本とは逆の極論がTEA Partyなどで草の根的な影響力を広げていることが興味深い。
 
もとより、不況は大震災などで景気が長期的な成長路線から下振れした時に、財政赤字を許容して景気刺激をすることに私は賛成である。ただしその時の赤字は、景気良好な局面での財政余剰で相殺されなくてはならない。そうでなければ、政府債務が累積し、将来に負担を先送りするポンジスキーム(ねずみ講)になってしまうからだ。ケインズだってそう考えていたはずだ。 
 
増税なんかしなくていいじゃないか、と考える国会議員さん方も是非、國枝先生の論考を読んで、熟考して欲しいものだ。万一、読んでも理解できない方がいたら、それは国政を担うだけの知能がないとしか思えないので、即刻辞表を出して頂くのが、日本のためだと思う。