さて、前回の自由貿易論でかなりマジに経済学の議論をしたが、今回はディーラー感覚で語らせて頂こう。欧米の株価がかなり回復してきた。24日(月)のS&P500は1251まで回復した。損益上、個人的にも嬉しいが、回復は本物だろうか。
 
S&P1250台、この水準は心理的には重要だ。ユーロ危機が深刻化して急落した8月以降、株価は値幅の大きい上下動をしてきたが、S&P500で見ると反発局面で1200台前半に3回トライして上抜けることができなかった。今回4度目のトライで1250を超えると、形としては「上放れ」になる(うわっ、まるでチャーティストの語りや(^_^;))。欧州の株価指数もだいたい同様の形だ。
 
しかも昨年末の引け値が1257なので、今年あと約2カ月残して、昨年末の1257を超えて終われば、雰囲気は楽観的な方向に変わるだろう。
 
ただし足元で出てくる経済諸指標は欧米も世界全体も不冴えで、このまま来年再度の景気後退に向かっても不思議ではない数字が出続けている。その結果、例えばJCERの世界景気インデックスは「雨」になってしまった(以下サイト)。http://www.jcer.or.jp/research/wbci/index.html
 
この株価と経済指標の逆行はなぜか。EUの一連の危機対応が今週水曜日になんとか最終合意にこぎつける見込みになったことによる株式売り筋のショートカバーだと理解すれば、納得できる。ヘッジファンドなどは、全般的に今年はリターンが不冴えだそうだが、欧州危機を材料に株式ショートで一発儲けを狙ってかなり売り込んだ筋が少なくないのだろう。
 
問題はショートカバー後に実体経済の回復トーンが出てくるか、あるいは悪化が続くかである。年末の株価はそれ次第だろう。 米国について言うと年末商戦の出来栄えでかなり左右されそうだ。
 
「住宅と株価の下落でまいった((+_+))」とは言え、懲りないのが米国のエクイティー・カルチャーだと私は思う。株価の回復がミドルクラス以上の家計の心理を楽観的な方向に動かし、年末商戦は思いのほか上々の結果となれば、自己実現的に景気を上向かせるだろう。
 
年末までの展望として、そういうチャンスが出てきたかな・・・と今晩の海外株の回復はちょっと感じるね。
 
 竹中正治HP
 
追記(10月29日):本日の日経新聞朝刊記事
「これまで急落していた金融株が値を戻し始めた。27日の欧州市場では仏ソシエテ・ジェネラルが23%、仏BNPパリバが17%上昇した。民間銀行が保有するギリシャ国債の価値を50%に減額することになり、ギリシャの債務返済計画がより現実に近いものになった。ギリシャ問題が何も解決せずに混乱が周辺国に広がれば、銀行の経営が危うくなりかねなかった。
 東京市場でも野村ホールディングスは直近の2日間で10%上昇し、三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループも同6~7%上げた。
 もっともこの日、ある外資系証券が受けた買い注文の大半は空売りをしていた投資家の買い戻し。「一段の株価上昇を期待した買いは入れにくい」(同社トレーダー)」
 
やっぱりね。この後、株価回復が持続するかどうかは、やはり景気指標が実体経済の回復を示すかどうか次第だな、と思う。その可能性がないわけじゃない。