沖有人という不動産業界の方が書いた「不動産投資の罠」という日経ビジネスオンラインの論考記事を読んで、強い違和感を感じた(以下サイト)。
 
沖氏によると不動産投資は個人投資家には難し過ぎる対象であり、本当に儲けている人は全体の3%程度に過ぎないだろうという。
「実態は、儲けている個人は結局のところ全体の3%程度に落ち着くだろうと想像する。その他は、トントンか、マイナスと言ったところだろう。成功か失敗かは一見分かりにくい。その理由は2つある。 1)キャッシュフローは初年度が一番良くて、徐々に下がっていき、マイナスになるので途中まで儲かっているように(錯覚だが)思える。2)不動産を売却してみないと、最終収益は確定しない。」
「不動産投資はいつ終わるか分からない「ババ抜き」をやっているようなものだからだ。高く売り抜けたら、このゲームを終えることができる。最後にババを手元に残した人が大損して、最悪は自己破産することになる。相当な数の人が不動産投資をやっているので、これから自己破産者が続出することになる。そのXデーはいつ来るか分からないが、必ずやって来る。」
 しかし私の経験を語れば、それは不動産投資一般ではなく、都心の中古マンション投資という一分野に過ぎないが、比較的一般化しやすい幾つかのルールに従う限り、株式投資で儲けるよりずっと簡単だと感じている。 
際、以前書いた通り、1998年に最初のマンション投資を始めて1億円(銀行借入れ7000万円)まで投資残高を積み上げた。景気後退前の2007年に価格が上がったので一番築年数の旧いマンションを売って、回収したした資金で残りのマンションの借り入れも全額返済してしまった。 
マンションを全部売却することが投資のEXITとは私は思っていない。相応の収益を上げている限り、保有を続けていてよいと思う。ただしローンがあると賃料が全部ネット収益にならないので、マンション投資から生じたキャッシュフローでローンを完済してしまえば、それがレバレッジ投資のEXITと考えて良いだろうと思う。ローンさえ完済してしまえば、資産のリターンが下がることはあっても、返済できずに破綻することはないからね。
しかし沖氏は次のように言う。
「私は賃貸住宅の市場調査を日本で一番多く手掛けているので、市場の実情を最も知り得ている一人だろう。実はリーマンショック後、多くの法人が倒産したので、自分たちのサービスを個人向けに展開をしようかと考えた。実際に、本1冊分の原稿を書き終えたが、お蔵入りにもした。その理由は、個人投資家を儲けさせる手立てを持ち合わせていないからだ。個人が不動産投資で確実に儲けるのは至難の業だ。顧客ニーズを満たせないことを生業にすることはできない。それがせめてもの自分のプライドだった」
要するに業者として個人投資家相手に不動産投資のビジネスをすると「客を食い物にしなくてはならない。だから自分は潔くそれをしない」ということだ。
沖氏と私の認識の違いはどこから生じるのか?(?_?)? 再読してわかった。
個人投資家としてマンション投資で成功する必要条件(主要なものだけ)は、私が考えるに以下の点だ(弊著「資産運用のセオリー」に書いてある)。
1、中古マンションを徹底的にショッピングして安く買うこと。目標にする条件が出ない限り手を出さない。新築マンションは新築プレミアムが平均2割ぐらいはのっているので絶対に買ってはいけない。
2、空室リスクを最小限にするために都心の駅近(徒歩10分以内)の物件のみ投資対象にする。利回りが高いからと言ってロケーションの悪い物件を買ってはいけない。
3、購入マンション価格の3割は自己資金を用意して、金利もショッピングして銀行から低い金利で買うこと。自己資金比率が低いと銀行は与信リスクが高くなるので金利も高くなる。低い金利で借りて、高い賃料利回りとの利鞘を確保し、レバレッジを効かすのがポイント。
4、買う時は不景気時、売るのは好況時。
5、ワンルーム・マンションよりファミリータイプ・マンションを優先する。ワンルームは住んで買う人がいないので利回り計算する投資家にしか売れない。一方、ファミリータイプは住むために買う人がいるので高く売れるチャンスがある。
この5条件は別に人に習ったわけじゃないが、投資家として合理的に考える当然の選択だと思っていた。ところが、沖氏の記事を含め最近破綻する個人投資家のケースを聞くと、この5条件をまるで満たさないままマンション投資をしてしまった個人投資家の破綻が増えているようだ。
つまり、「新築ワンルーム買い、自己資金ゼロに近い、借入れ金利が高い、2005年~06年の好況時に買っている」の条件だ。こうした連中は資金に余裕がないから、テナントが退出してしばらく空室になると毎月のローンが返済できず、銀行の要請で任意売却とかに追い込まれる。 それは当然の結果だろう。非合理的な投資家は淘汰されるのが市場原理だからね。
マンション投資で業者が一番儲かるのは、自ら新築マンションを建設し、売ることだ。中古の仲介業務などは3%の手数料しか儲からないので、薄利だ。だから中古の仲介でスタートした業者も、小銭をためて元手ができると自ら建設、販売を手掛けようとする。しかしその新築プレミアムののった価格では投資家は絶対にリスクに見合ったリターンを上げることはできない。
沖氏も次のように言っている。
「新築物件を売る側は土地を購入し、建物を建て、利益を乗せて販売をする。これは積算価格と呼ばれる。
 新築投資用マンション価格=土地代+建築費+事業利益
 これに対して、市場で売却する価格は、収益還元法という別の方法で設定される。
 収益還元価格=年間賃料収入÷期待利回り
 この価格のギャップが購入した矢先で損が出る仕組みである実は新築投資用マンションは最初から「大損の負けいくさ」と決まっている」
これでわかった。不動産業者として個人を相手に儲けるには、なんとしても新築物件を売らなくてはならない。しかしそれでは個人投資家にリスクに見合った投資リターンを提供できす、食い物にすることになる。
顧客ニーズを満たせないことを生業にすることはできない。それがせめてもの自分のプライドだった」
と最初の方で述べているのはそういう意味だったんだ。
ははは、だったら個人投資家相手にぼられないためのアドバイス、コンサルタントをしてあげれば良いのだが、そんな商売では「自分が儲からない」ので個人投資家を相手にするのは潔く「やめました」ということだろう。合点、合点、大ガッテン(^。^)
 竹中正治HP
 
追記(1月14日):
統計データで確認できないのがもどかしいが、以下のような方が増えているらしい。
私のマンション投資原則に照らせば、この種のケースは破綻必然だ。
しかし、「営業マンの言いなり」になっちゃう人間がいるもんなんですねえ・・・不思議。
また追記:
以下の「独立系不動産コンサルタント」による失敗事例集も面白い。
世の中、たわいもなく騙される方々多いんですね。
もうちょっと自分の頭で考えないのかな(^_^;)