本日2月17日の日経新聞夕刊「ウォール街ラウンドアップ」に載った記事、私もボルガー・ルールはピント外れな面があり、全面的には到底支持できない。2007年-08年の危機の教訓から大きくずれていると思う。
まず記事を引用しよう。
「銀行が過剰なリスクをとるのを防ぐボルカー・ルール。金融危機の反省から生まれた同規制の7月施行を前に、ルール案への意見募集が13日、締め切られた。
米連邦準備理事会(FRB)によると、その数1万7000件。問題点を指摘する内容が多く、さながら発動阻止を狙った“紙爆弾”だ。
「ルールはむしろ金融システムのリスクを高める」。ゴールドマン・サックスは60ページ超の文書でそう訴えた。JPモルガン・チェースなど他行も反対論を展開。保険会社、ファンド、企業、産業団体、果ては外国銀行や当局など反対派の裾野は広がる。
ルールの内容は極めて単純だ。銀行は自己資金で市場取引を行わない、これを行うファンドへの出資もしない、という点に尽きる。だが規則を詰めるうちに、当初3ページだった文書が、ほぼ300ページまで膨らんだ。
厄介なのは例外の定め方。新規制は市場で取引される金融商品の値付けを銀行が助けるのは禁じない。保有する金融商品の値下がりなどに備えるヘッジ取引も認める。だが、こうした目的に沿うことを詳細に証明する必要があり、負担が過大だと銀行は主張する。
他の業界からは「銀行から市場に入るお金が減り、流動性が低下する」「これが金融商品の値下がりや信用収縮を招く」との声が上がる。日本やカナダなど国外勢が懸念するのも、こうした動きが自国の国債取引などに及ぼす影響だ。」
まず、2007年夏にサブプライム危機として勃発したバブルとその崩壊の震源地は、米国の財務省やFRBがshadow bankingというキーワードで正しく判断している通り、銀行外の金融分野であり、その分野でのリスクの過少評価を伴った信用の膨張が主因だ。
日本の証券会社に相当するインベストメントバンク(バブルの主役)は、預金を受け入れる銀行ではないからね。
ただし銀行も、サブプライム・バブルを指をくわえて見ていることはできずに、SIVという自分のバランス・シートから見かけ上切り離された特別目的会社をつくって(抜け穴だね)、証券化商品への大規模投資をやったり、ヘッジファンドへの融資のみならず、傘下のヘッジファンドなどをつくって、シャドウバンキングの膨張、暴走に関与した。
従って、ボルガールールのファンドへの出資や事実上の経営関与を禁じる部分は正しいと思う。問題はルールが国債から外為、各種デリバティブまで市場性取引全般の銀行の自己dealingを原則禁止にして、market making(顧客のための値付け取引)のみを厳しい制約の下に許可しようとしている点だろう。
銀行本体で行なわれていた自己dealingそれ自体が、今回の危機の要因のひとつだったという認識は的外れで、そうした事実を説得的に検証したレポートを私は見たことがない。
私自身、銀行で外国為替、とりわけ通貨オプションのディーリングを永年していたので、自己dealing
とmarket makingは実は不可分であり、取引ひとつひとつを、「これはmarket makingです」
「これは自己dealingです」というような区分けは事実上不可能だということが良くわかる。
market makingであること証明するような管理を要求したら、その事務負担の膨大さで取引は機能しなくなるという主張は正しい。
いっそのこと1週間ほど全米で主要銀行は、market makingのストライキでも実施して、完全な仲介業務しかしないと市場がどういう状態になるか、見せてやれば良いだろうと思う。取引の流動性は消滅し、売れない!買えない!の騒ぎになるだろう。
さて、この問題、どう最終決着するかな・・・・。
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