ダイヤモンドオンラインで伊藤元重教授が連載を始めた(7月2日付 以下サイト)。
「大いなる安定」が終わった後に必要なシュンペーター的思想とは?
http://diamond.jp/articles/-/20887
以下の点、100%同感。日本社会は不安定を嫌って、守ろう、保護しようという意識が強過ぎるのではなかろうか。いつも「政府がなんとかしろ」ということで、財政赤字ばかり累積して来た。このままだと緩慢な衰亡コースだろう。ぶちこわす力、登場しないだろうか?
引用: 「資本主義の持っている本源的な不安定性と、そして創造的な破壊の持つパワーを意識すること──これが今後の日本や世界経済の先行きを見るために必要なことである。別の言い方をすれば、過去の微調整の先に日本の将来像はない。過去を破壊した先に新たな価値が生まれるという、創造的破壊の将来ビジョンが必要ということなのだ。」(4ページ)
以下の点、100%同感。日本社会は不安定を嫌って、守ろう、保護しようという意識が強過ぎるのではなかろうか。いつも「政府がなんとかしろ」ということで、財政赤字ばかり累積して来た。このままだと緩慢な衰亡コースだろう。ぶちこわす力、登場しないだろうか?
引用: 「資本主義の持っている本源的な不安定性と、そして創造的な破壊の持つパワーを意識すること──これが今後の日本や世界経済の先行きを見るために必要なことである。別の言い方をすれば、過去の微調整の先に日本の将来像はない。過去を破壊した先に新たな価値が生まれるという、創造的破壊の将来ビジョンが必要ということなのだ。」(4ページ)
論考の前半でイデオロギー的には保守(右)を代表する新古典派的なアプローチとリベラル(左)を代表するケイジアン的なアプローチの対立から説き起こしている。そして、こうした既存の左右の対立の構図から抜け出す視点としてシュンペーターのイノベーションと創造的破壊(creative destruction)を議論している。
この発想法は、伊藤教授が初めてではない。私が知る日本の経済学者では吉川洋教授が以下の著書のなかで、ケインズとシュンペーター的アプローチの総合とでも呼ぶべき議論を展開している。
ダイヤモンド社2009年
さらに遡ると、吉川教授は以下の著作で、ケインズ的な短期・中期の有効需要のアプローチにシュンペーターのイノベーションと長期経済成長の視点を繋ぐ議論を展開していた。
「転換期の日本経済」岩波書店、1999年
大雑把にその要点を説明すると、同じ財やサービスばかり供給していると必ず需要は飽和して、成長の限界に突き当たる。たとえば携帯電話は国民一人に1つまでは普及するだろうが、それ以上は保有する動機が急速に減退する。したがって、そこまで普及したら、あとは更新需要しか生じないので、携帯電話の成長は鈍化するだろう。経済全体でもそうだ。
そうした状態では、たとえば政府が財政赤字を拡大して有効需要を増やしても成長を後押しすることはできない。そうした市場の飽和を超えて経済が成長するのは、イノベーションで新しい財やサービスが生まれ、それが私たちの生活や仕事のスタイルを変革して、新しい市場が開拓されるからだ。
馬車から自動車、ラジオやTVの発明、PCの登場など、すべて大きなイノベーションは私たちの生活や仕事のスタイルを変革し、飽和した旧商品群にとって代わる新しい市場を開拓して長期的な経済成長を実現する駆動力になってきた。
その過程は、当然ながら、創造的破壊のプロセスである。ワープロ・マシンはタイプとタイピストを駆逐してしまった。そのワープロ・マシンもPCで駆動するワープロソフトの登場で、あっという間に駆逐されてしまった。
従って、極めて原理的に大雑把に言うと、経済ビジネスにかかわるルールは、こうしたイノベーションと創造的破壊を促進する競争促進的なものである必要がある。
ルール(諸規制)が保護主義的でイノベーションを抑制するものであるならば、競争促進的なものに変革する必要がある。そうでないと、短期的には既存の職を守ることができても、長期的な経済成長のチャンスが損なわれるということになる。
今回の伊藤教授の論調も、吉川教授の論調に近い。
いずれも日本を代表する経済学者の議論だ。傾聴しておこう。
竹中正治HP
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