12月のロイター社コラムに寄稿した「債券バブルへGo!」を読まれて私が米国と日本の先行きに警戒的、あるいは悲観的な見方をしていると勘違いされている方もいるようだ。しかしそれは勘違いだ。
 
私は債券にシフト、あるいは集中しているポートフォリオを保有している方への警鐘として書いているのであって、日米経済の先行きには慎重ながら楽観的であり、債券、株式、不動産などをある程度バランス良く保有している投資家にとっては、デフレ期待からマイルドなインフレ期待に転換すれば、投資リターンの上昇が期待できると考えている。
 
2012年に債券比率を上げ、株式比率を下げてしまった投資家としては、生保業界をこのブログで指摘した。また元々国債保有に集中している投資家は郵貯銀行だ。こうした投資家はマイルドインフレへの転換が起これば、大きな評価損を被るだろう。
 
日銀でさえ、長期国債の保有を増やすのに躊躇しており、短期・中期債券、対銀行融資、ETF、REITの購入をしているのは、本当にマイルドインフレになった時の長期債券の価格下落による損失を恐れているからだ。ただし彼らはそれを口にしない。中銀の立場上、それを口にした場合の「自己実現」を恐れているのかもしれない。
 
ただし生保の資金ソースは長期なので文字通り「長期にわたる期待利益の損失」を結果する。一方、郵貯銀行は実現損となる可能性が高い。なぜなら金利が上がれば現在はゼロに近い定額郵貯は引き出され、もっと利回りの高い金融資産や他銀行の定期預金などにシフトする。
 
郵貯銀行が現金引き出しに応じるためには、国債を売るしかないが、その相場は下落しているのだから損が実現する。 唯一それを回避する方策は、定額預金の金利を引き上げることだが、それは既に低利回りの長期国債に固定されている運用利回りとの逆ザヤをもたらして、長期にわたる損失発生が避けられない。
 
デフレ期待がマイルドインフレに転換することでどの程度の株価上昇が期待できるか、簡単な想定で計算してみた。
 
想定:
投資家の期待する趨勢的な資本利益率(ROE)=割引率=10%
インフレ(CPI)率の変化=ROAの変化
ROEの変化=ROAの変化(5%→6%)×2.8(日本企業の平均自己資本比率35%をベース)
企業の平均余命:30年
株価のファンダメンタルな価値は、ファイナンス理論の語る原理に従って将来30年間の純利益の現在価値の合計で求める。
 
以上を 前提に計算すると、
インフレ(CPI)率1ポイントの変化に対する株価の変化は38.5%となる。
日経平均の底値が8500円前後だから、38.5%上昇となると11,772円となる。
 
極めてあらい推測だが、もっともらしい結果がでたな(^_^;)
 
ただしインフレ率が上がると当然企業の負債コストもあがることを勘案していない。
仮にインフレ率の上昇と同じだけ企業の借入れコストも上がるとすると
ROEの変化=ROAの変化になる。
その場合の株価変化はインフレ率1ポイントアップで+11.8%に過ぎない。
 
CPIが前年比+1%になっても日銀が金融緩和を続けて借入れコストが変わらないとすると
上記の結果の最初の結果になる。
 
もちろんリスク要因はいろいろある。たとえば本日の日経新聞ではストラテジスト4氏がみな日本株強気の見通しを述べている。経験的な直感でいうと、こういう時は、予想はでだし当たるのだが、後で何か予想されていなかった波乱が生じる可能性も高いんだが・・・・
 
追記:上記の試算はやはり粗すぎると言うか、論理的におかしなところがあるので
やはり考え直しが必要のようです。いずれ再論します。1月3日
 
追記:試算方法を含めて再検討しました。
結果は1月7日の週後半にロイター社のサイト(コラムと外為フォーラム)掲載予定の論考で示します。(1月6日)
 
竹中正治HP
http://masaharu-takenaka.jp/index.html (←ホームページ、リニューワルしました(^^)v)
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