2020年東京オリンピックに向けて、東京を中心とした「ミニバブルへGo!」の雰囲気が急速に高まっている。
本日の日経新聞Web版に掲載された長嶋修さんという不動産コンサルタントの大局的な見通しについて、私もほぼ同じ判断だ。おそらく不動産業界の関係者も似たりよったりの予想イメージだろうか。
ただし問題は、そうした予想イメージをベースにどのような投資ポートフォリオを保有するかだ。投資の成否はその具体的な判断にかかっているので、引用しながら、私のコメントを付しておこう。(以下青字が引用文、黒字が私のコメント)
「私は日ごろ、市場動向予測については慎重なのだが、今後、少なくともオリンピック開催まで、湾岸や東京都心エリアの地価が上昇するのは既定路線といっていいだろう。 08年のリーマン・ショック、そして11年の震災の影響で長らく低迷していた不動産市況は、昨年後半から徐々に改善し、底打ちの兆しが見られていた。そこに政権交代のアナウンス、アベノミクスによるインフレ期待が加わり、完全に底を脱したといえる。」
そうそう、不動産業界関係者はほとんどみなそう感じている。これから起こることは「上がる」という予想が自己実現するハッピー局面でしょうね。
「海外勢にも日本の不動産は注目の的。現在は、日本はもちろん、世界的に「超」がつくほどの金融緩和状態にあること。さらには株式市場同様、リーマン・ショック後に他国が持ち直すなか、低迷していた日本の不動産は相対的に割安感があると見られていることなどが挙げられる。」
2005年~07年に内外の不動産ファンドが東京を中心に不動産投資に殺到したのも、当時の相対的な割安感(すぐに割高に転じてしまったが)と、日本の超低金利の結果、金融レバレッジによる投資リターンの引き上げが容易だったことが働いていた。
「ではいったい、どのくらい価格が上昇するのか。東京都心部や湾岸地区以外の他の地域はどうなるのか。具体的にどのくらい上がるのかまでは私も見通せないし、誰にもわからない。
なかには、これから東京湾岸地区のマンション価格が2割上がる、2倍まで上がるとの予測もあるようだが、さすがにそこまでいくとは考えていない。2割の上昇ということは、5000万円のマンションが6000万円になるということ。あくまで感覚の問題だが、これは上がりすぎだと思う。1割程度の上昇はありそうだと思うが。」
1割の上昇というのはかなり控えめな予想だと思うが、オリンピックまでに2割~3程度の上昇はありそうだと私も思う。 ただしここでいう上昇率というのは、築年数を含めた同種物件の上昇率であることに注意しておこう。
例えば新築の場合、価格の2割前後は新築プレミアムであり、一度誰かが入居すれば「中古」となり、価格は2割下落する。つまり「東京のマンション価格は上がる」と予想して、新築を買った場合、予想通りに新築価格が2割上がっても、中古物件になった自分のマンションは元々の買値と同じ価格でしか売れないということだ。
さらに経年、老朽化による価値の減耗を考える必要がある。東京都区部のマンションの老朽化による平均的な価値の減耗は私が東日本不動産流通機構(レインズタワー)(以下)のデータで計算する限り、年率2~3%程度だ。
仮に2.5%とすると、購入から5年経過したマンションは市況水準が同じでも、老朽化で12%は買値から下落する。 つまり中古で買って、5年経過し、市況が2割上昇しても、実際に売れる価格は8%の上昇
(=20%-12%)ということになる。
もっとも長期のマンション投資は、インカムリターンをベースに考えるものである。仮に年率のインカム・リターン6%にキャピタルゲイン8%が加われば、投資結果としては上出来だろう。この場合、8%のキャピタルゲインは年率にすると約1.6%なので、年率総合リターンは7.8%になったことになる。
というわけで、繰り返し強調しているように「マンション投資で成功したければ中古で買え」が鉄則だ。新築で買うのはカモネギ顧客である。
「人間のこうした感覚は時間の経過によって変化していく。実際にオリンピックが近づき世の中の雰囲気が変わり、現在とは異なるある種の熱狂に入れば、いくらでも価格上昇の予知はできてしまう。経済成長や所得の上昇を伴えば健全といえるが、そうでない場合にはその後下落する。そしてその下落分が、後になってバブルだとわかるのだ。」
2007年までのミニバブルが2009年にかけて崩壊したように、今回もミニバブルが起こればその後に反動の「崩壊局面」が起こるだろう。それまでの上昇予想が自己否定に追い込まれるアンハッピー局面だ。
「バブルが起こり、その反動も起こる」と業界関係者が予想しているなら、だれもバブル価格で買いたいとは思わないから、バブルと崩壊も起こらないのではないか?」そう考える方もいるだろう。これは一種の合理的期待形成論だな。
ところが、現実にはこの種の合理的期待形成論はワークしない。プロの業者は無知な素人を巻き込んでチキンゲームに走るからだ。それがバブルに至る道だと認識していても、皆が走る以上、業者も走らざるをえない。それがバブル・プロセスというものだ。(この点は弊著「なぜ人は市場に踊らされるのか?」日経新聞出版社2010年に詳しく書いたことなので、ご関心あるかたは弊著をお読み頂きたい)
「いずれにせよこれから住宅を購入する方は、35年の住宅ローンが終わるころには、日本の人口は3300万人以上減少、つまりカナダの全人口と同じくらいの人がいなくなっている、さらには65歳以上が全体の40%程度になる、ということを踏まえておく必要がある。」
そうそう、だからとりわけ日本の場合、バブル局面ではしっかりと売り抜いておかないと投資としては成功しないよ、ということ。
「今回の価格上昇局面では、その地点は東京都心や湾岸、その他大都市圏など一部に限られるだろう。 人口・世帯数が減少していく中で、国内の不動産すべてが上昇するなど土台無理な話。都市部でも駅から遠い、生活利便性に欠けるなどの難点がある場所は、難しいだろう。高度成長期に分譲された郊外ベッドタウンは、一部の例外を除いてその多くが長期的に衰退していく。」
泣いても騒いでも、今の少子高齢化のトレンドを受け入れる限り、これが避けられない運命だ。
「08年3月期決算は不動産市場のプチバブルの中で、どのマンションデベロッパーも過去最高決算を迎えていたが、このときには価格高騰や在庫余剰などから、バブル崩壊の兆しありとして警告してきた。その後多くのデベロッパーが破綻、そしてリーマン・ショックを迎えることになる。これからオリンピックが終わるまで、こうしたアップダウンを市場は再び経験することになりそうだ。」
さあ、みなさま、勝ち組・負け組を分かつ大波・小波が再びやってきそうです。
NHKドラマ「アマちゃん」の歌 「寄せては返す波のように 激しく」バブルと崩壊は繰り返しますねえ。
ワクワクしちゃうなあ(^。^)
新著「稼ぐ経済学~黄金の波に乗る知の技法」(光文社)2013年5月20日
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