今月下旬にトムソン・ロイター社に寄稿する骨子と図を一部先行して、以下チョロ出し致します(^_^;)
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為替相場に関する弊著をご購読頂いた方々、あるいは本ブログのリピーターの方々はおわかり頂いていると思うが、為替相場の変動は長期と短期・中期の変動、その要因を分けて理解する必要がある。
 
ご参考
「この先のドル買いはハイリスク・ローリターン」2013年5月、トムソン・ロイター社コラム
「米国経済は尻上がりに改善」2013年6月、トムソン・ロイター社コラム
 
1、長期の相場動向は、2通貨のインフレ率格差に規定された相対的購買力平価原理で説明できる。
 
2、為替相場が長期的にはPPPからの乖離と回帰を繰り返す限り、名目相場をPPPで割り算して算出した実質相場指数は長期的な平均値からの乖離と回帰を繰り返す(以下掲載の上段の図)。これが短期、中期の相場変動だ。
 
3、、短期・中期の相場変動は複雑で、特定のマクロ経済変数で長期にわたって一貫した説明をすることは困難だ。ただし数年から10年前後の期間に特定すれば、その期間について影響力の強いマクロ経済変数を特定し、有意な説明をすることは可能だ。
 
私が調べる限り、2005年以降足元までのドル円実質為替相場指数に強い影響力を与えている変数は、①日米実質金利格差、②グローバルな投資家のリスク許容度だ。 
そこで以下は2005年1月~2013年12月末について、ドル円実質相場指数の対前年同月比(%)を
次の2つの変数で回帰分析すると、決定係数(R2)=0.63となり、いずれの変数についても有意な結果が得られる。
 
変数①日米実質金利格差:
 (O/N FF rate-生産者物価指数前年同月比)-(O/N Call rate-企業物価指数前年同月比)
変数②米国社債市場のリスクプレミアム:Baa格社債利回り-Aaa格社債利回り
 市場が不安定化して投資家のリスク許容度が低下するとリスクプレミアムは上昇する。
  →リスクオフの状態、円高を伴う。
 市場が安定して、投資家のリスク許容度が上昇するとリスクプレミアムは下落する。
  →リスクオンの状態、円安を伴う。
 
下段の図を見ておわかり頂けると思うが、2013年春の時点では実際の実質相場指数が推計値から大きくドル高方向に乖離している。こうした分析を基に、私は昨年春の時点では長期的のみならず短期・中期でもドル高方向に行き過ぎている(ドル反落リスクが高い)と判断したわけだ。
 
今回、2013年12月までのデータで再び回帰分析すると、昨年秋にかけて推計値がドル高方向にシフトする形で、現実値と推計値の乖離が縮小していることがわかった。これは日米のインフレ率格差(日本企業物価、米国生産者物価)が逆転した結果だ。(ご参照1月4日の以下ブログ)
 
ただしその後は再び現実値と推計値の乖離が広がっている。これは12月のデータで日米のインフレ率逆転の幅が少し縮んだ一方、ドル円が一段とドル高にシフトしたからだ。
 
ちなみに、以下の図表の最新時点2013年12月の平均ドル円相場は、名目相場103.42、実質相場指数105.91(1973年=100)、日本の企業物価対前年同月比2.5%、米国の生産者物価指数は同1.2%となっている。
 
既に1月4日のブログで述べたとおり、米国の生産者物価はシェール・ガス&オイルの増産を背景にエネルギー価格の抑制、あるいは低下でディスインフレ傾向にある。一方日本の企業物価は反対に円安と原発停止を背景にエネルギー価格の上昇が目立つ。 この変化は中期的に日米物価の動向に影響を与えそうであり、また2015年からは米国の金利引き上げも視野に入ってくるので、実質金利格差要因は当面ドル高要因として持続する公算が高い。
 
予測困難なのは社債リスクプレミアム(あるいはVIX指数も利用できる)に反映される投資家のリスク許容度の動向だ。割高感が出てきている米国株価が急反落すれば、投資家のリスク許容度の低下(リスクオフ)→リスクプレミアムの上昇→日本株売り、円買い戻しという動きに直結するだろう。
 
しかしながら、そうした米株の反落が、どういうタイミングでどの程度の規模で起こるかは事前には予測不能だ。合理的な予測は不能だから、とりあえず直感的な判断で、米国株、日本株は高値から10%程度、ドル円相場は105円のドル高値から5%程度の反落はいつ起こっても不思議ではない・・・と想定しておこうか。 反落の幅が大きい場合は、その倍(株は20%、為替相場は10%)程度の調整もあり得ると思っておこう。
 
投資スタンスとしてはこれまでと変わらない。
ドル円相場:
私はドル資産の68%までドル売りヘッジを入れた。今後110円前後まであればさらに売り上がる。
ドル反落があれば、多少買い戻してヘッジ比率を下げ(変化幅で10%程度)、また上がったところで売り直し、平均持ち値を引き上げるためのトレーディングもするつもり。
日本株:
日本株は高値更新局面をテイクチャンスして既に昨年保有していた残高の55%程度までは売ってキャッシュ化した。今年、日経平均1万8000円前後の水準まで上がれば、さらに売り上がろうか。  大反落したら恐る恐る一部買い戻してみようか。
米国株:
米国株は長期で永続的に保有する「コア持高」(昨年の最大持高の約3分の2)を残して売っちまったので、よほどの高騰がなければ現状維持。
マンション:現状維持。
 
参考論文:竹中正治、佐久間浩司 「2000年代の金融危機と外国為替相場の変動」(財)国際通貨研究所、国際経済金融論考、2013年6月
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
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