別に安倍内閣を「よいしょ」するつもりはないのだが、日本経済の現況を点検していたら、アベノミクス期と民主党政権期の雇用動向について、きれいなまでのコントラストが描けてしまったので紹介しておこう。
 
雇用動向の改善を見るにはまず失業率の変化を見るのが当然の見方だろう。2009年9月から12年11月までの民主党政権期も失業率は5.3%から4.1%まで改善(低下)している。 2012年12月~現在(直近データ15年2月)までの安倍内閣期は、4.3%から3.5%まで改善している。
 
しかし失業率だけでは十分な判断とは言えない。もうひとつは賃金動向、さらに労働参加率の変化などを見る必要がある。 賃金動向については既に前回扱ったので繰り返さない。↓
 
今回は労働参加率の変化を見てみよう。 労働参加率とは以下の通りで、実際に就業している人口と就職活動をしているが失業中の人口を総人口で割ったものだ。
 
労働参加率=(就業者数+完全失業者数)/総人口
労働力人口=就業者数+完全失業者数
失業率=完全失業者数/労働力人口
 
よく言われる「失業率は低下したが、景気が悪くて就職活動を諦めた人達が増えたからだ」というような論評を目にしたことがあるだろう。 就職活動を一定の期間にしないと無職でも「非労働人口」に分類され、失業者にはならない。つまり分母の労働力人口が減るので見た目の失業率は改善する。
 
実際、米国では2009年以降の景気回復過程で失業率が改善しても労働参加率が低下したために、「景気が悪くて就職活動を諦めた人が増えたから失業率が見た目低下しただけだ」と繰り返し指摘されてきた。
 
米国の労働参加率の低下は、実際はベビーブーマー世代の引退ラッシュという人口動態的な要因と上記の「諦め組」の増加の双方の結果だ。(それでも雇用動向全体はじわじわ改善して来た。)
 
以下の掲載図は、民主党政権期と安倍内閣期の失業率(横軸)と労働参加率(縦軸)を散布図にしたものだ。 
 
民主党政権期には失業率は確かに改善(左にシフト)しているが、同時に労働参加率が低下し、全体に左下がりに動いている。 一方、安倍内閣期に入ってからは失業率の改善が持続していると同時に労働参加率が上昇し、全体として左上方に動いているのがわかるだろう。 
 
こういう傾向が出るのではないかなと思って作図してみたのだが、これほど明瞭な違いになるとは思わなかったので、ちょっと私自身も驚いた。
 
日本は団塊世代の引退、高齢化で他の条件が同じなら労働参加率はじんわり低下する長期トレンドにある。 民主党政権期にはそれにさらに「就職活動諦め組」の増加が加わって労働参加率が低下したのだろう。つまりこの期の失業率低下には「就職活動諦め組」の増加が寄与しているのだ。
 
一方、安倍内閣期には労働市場の好転で「就職活動復活組」が増え、それが引退する人口の数を上回り、労働参加率が上昇しながら同時に失業率が低下するという好トレンドを起こしているわけだ。女性や元気な高齢者の就業も増えている。
 
単純に就業者数の増減を比べただけでも、民主党政権期には21万人の減少、安倍政権期には
124万人の増加だ。
 
もうこうなると「勝負あった」としか言えない。 民主党の方々も経済学のしっかりとしたブレインを招いて経済政策論を勉強し、練り直して対応しないと意味のある野党勢力としての復活は期待できそうにない。