8月21日(金)の中国でのPMI指数が6年半ぶりの低さとなったという発表を契機にした世界の株価の急落、とりあえず短期的な底を打った感じにはなってきた。そこで8月28日の引値ベースで各国主要株価指数と新興国株価の合成指数であるMSCI-Emerging連動ETF(ドル建て)の騰落率を一覧にしてみた。

上段の表は年初来の騰落率で順番にしてある。これを見ると日経平均はプラス9.9%とトップの位置にある。ボトム4つは、台湾、MSCI-Emerging ETF、シンガポール、香港と並ぶ。

中段の図は今年の高値からの下落率の小さい順に並べてある。日経平均はマイナス8.3%で下落率の小ささでは米国(S&P500)に次いで2番目である。 ボトムには中国、香港、MSCI-Emerging、台湾が並ぶ。

下段は7月31日比の騰落率だ。日経平均はマイナス7.0%で上から4番めだ。ボトムには香港、中国、MSCI-Emergingが並ぶ。

まだ1週間しか経っていないが、以上の状況を素直に読み取る限り、今回の世界同時急落は中国を中心とする中華経済圏に対する投資家の景気、経済成長への期待(予想)が大幅に下方修正されたことが背景にあると理解して良いだろう。日本を含む先進国の株価は、その負の影響を受けたのだ。

この点で野口由紀夫氏は以下のように語っている。

引用:「確かに、表面的に見る限り、世界の株式市場での値下がりを引き起こしているのは、上海株式市場での株価下落が収まらないことだ。
 しかし、現在生じていることは、短期的・一時的現象として捉えるのでなく、長期的な展望の中で捉えるべきだ。具体的には、「リーマンショック後続いてきた金融市場での世界的なバブルの終了」と捉えるべきである。現在生じている株価下落は、リーマンショック後の新しい均衡を求める動きである。・・・アメリカの金融政策は投機を煽った。」

問題の核心が米国の3次にわたる量的金融緩和とそれによる株式バブルであるならば、米国株の下落が一番大きくなるのが自然であろう。また、2013年から同様に大胆な量的金融緩和と円安への転換で株価が上昇してきた日本の株価の下落幅も並んで大きくなるのが自然な帰結だと思うが、事実は反対なのだ。

一方、小幡績氏は以下のように述べている。
引用:「今回の株式市場の暴落が、中国の金融政策によるものではなく、米国の利上げという金融政策によるものでもなく、純粋に、中国経済の後退を中心とする世界的な新興国の実体経済の低迷が理由だからだ。この暴落は、ある意味静かで怖い。
 
最後に、なぜ日本の株価がなぜ世界の主要国で一番下がるかを述べよう。それは、日本が一番上がってきたからである。日銀が買う、GPIFが買う、という理由で海外の投資家が買い、GPIFが買うから海外の投資家が買うから、と言う理由で国内の投資家も買い、個人の投資経験の浅い人々も、最後にその流れに乗ってきた。

だから、下がり始めれば、日本だけは、金融的なセンチメントでも下がるのである。・・・今後、株価は乱高下と言うよりは、次第にいったん戻したり、また下がったり、という一進一退を繰り返すようになるだろう。そのときに、明示的な、大きなネガティブショックが来たときが、大きく崩壊するときだ。それは日本発ではなく、中国か米国発だろうが、そのときに一番下がるのは日本であろう。」

前段の理解には大いに賛同するのだが、日本株が一番下がるという主張は、とりあえずこの1週間は真逆に外れているし、その理由づけもあまりに粗雑過ぎてほとんど説明になっていない。アベノミクスは失敗すると言い続けてきた方だから、ここで「日本株暴落論」で当てて一気に憂さを晴らしたいと思っているだけではないかと勘繰りたくなる。

もっともまだ中国ショックから1週間経ったに過ぎない。1か月後、6か月後、1年後にまた振り返ってレビューしてみよう。

私自身の直近の見方を言うと、日本株については悲観的な見方はまだしていないが、日経平均2万円前後の水準からは、それほど強気・楽観的にはなれない。中国の経済成長の下方屈折は深刻で長期化すると思う。この点については来週トムソン・ロイターのコラムで詳述する予定だ。
請う御期待。

 
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