たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2010年07月

なんでデフレなの?どうしたら良いの?その1マネタリー要因説
 
宿題になっていたインフレ、デフレについてできるだけ分かりやすく考えてみよう。
 
 その前に、なぜインフレやデフレが問題かというと、いずれも価格が不均衡に上昇、あるいは下降することで社会の富の分布を意図せざる方向に変えてしまうからである。またデフレは負債性資金を調達して財やサービスの供給を行なうための資産を保有している事業体の収益を悪化させる。その結果、事業投資が減少し、経済成長を妨げる効果がある。
 
さて、インフレ・デフレの要因をどう考えるかで諸説ある。以下は要因別にした私流の分類である。
 
  マネタリー要因
  マクロ実体経済要因
  需給ギャップ要因 
  経済主体の期待要因
 
 
まずインフレターゲット論をめぐる議論を考えることで、①のマネタリー要因について考えよう。インフレターゲット派の方々(代表的な論者:原田泰、深尾洋光、岩田規久男)は、概ねマネタリー要因と後で述べる期待要因でインフレ・デフレを説明する。
 
単純な貨幣数量説 PQ=MV
P 価格
Q 取引商品数量
M 貨幣(マネー)の量
V 貨幣(マネー)の流通速度(回転速度)
 
 QVが一定ならば、貨幣量Mを増やせば比例してP価格は上がり、逆は逆となる。貨幣(マネー)の量をどう増やすか? 例えば日銀が金融機関(銀行)から国債を買えば、対価としてマネーが銀行の日銀当座預金(日銀に預けられている民間銀行の当座預金残高)に振り込まれ、当座預金残高が増える(日銀当座預金残高と日銀券発行残高の合計をマネタリーベースと言う。
 
 国債を日銀に売った民間銀行が国債保有残高が減った分を投資家から買えば、投資家の銀行に置いてある預金残高(当座、あるいは普通預金)が増える。
 
 このマネーの増加は短期・長期金利の低下も同時に引き起こすだろう。マネーは商品の売買を媒介するのだから、マネー供給量が増えれば商品価格全体も上ると考えるわけだ。逆にマネー供給量が減れば、価格全般が下がる(金利は上がる)。
 
 このようにインフレに対して金融政策でマネー供給量を調整することで対応できることは経済学者間でもコンセンサスがある。
 
問題はデフレの場合だ。マネーを増やしても、インフレにならないケースはマネーが退蔵されてしまう場合だ。その場合は貨幣の流通速度Vが低下して、MVの右辺全体は増えない。従って左辺の価格も上がらない。
 
 現在の日本のようにマネーマーケットの金利がゼロになるまで中央銀行がマネーを供給しているのにそれが退蔵されてしまうような状況はなぜ起こるか? ゼロ金利ではなく、金利水準がある状態ならマネー(日銀券や当座預金残高)を保有することで金利収入を得られないコスト(期待利益の喪失)が生じる。従って誰でもマネーは必要以上には保有しない。
 
しかしデフレが一般に予想される状況では、金利収入を生まないマネーを保有していても、デフレでマネーの購買力は上るので、無制限に保有していてもかまわないと思うようになるだろう。
 
つまりある程度以上の金利水準があり、一般の期待がデフレではなく、多少でもインフレに傾いている状況下では金融政策でマネーの供給量を変化させることで価格変動にも影響を与えることができる。ところが、デフレ期待が一般化して状態では、「マネー量の増加→物価の上昇」とならない。これが今の日本の状況だということになる。
 
だからインフレターゲット論者の方々も、日銀によるマネー供給の増加と同時に日銀が達成するインフレ目標を掲げて世間のデフレ期待をインフレ期待に転換させるという「期待の修正」を通じた経路が働くことが必要だと考えている。
 
一方で、日銀は世間のデフレ・インフレ期待を変えるようなことは日銀にはできない(あるいは極めて困難)と考えている。これが日銀vsインフレターゲット論者の対立点だ。
 
本当に量的金融緩和は効かないのか?
果たしてどちらが正しいのだろうか? 中央銀行が大量に国債を買って、マネーを供給してもデフレ期待が支配的になった状況ではデフレを解消できない理由は次のように考えると分かりやすいだろう。
 
世の中で民間はあなたひとり、それと中央銀行があると想定しよう。あなたは国債50兆円と現金50兆円、合計100兆円を保有している。既に金融緩和で国債の金利はゼロに近いほど低くなっている。中央銀行があなたから国債50兆円を購入し、対価として50兆円の現金を払った。その結果、あなたの資産は100兆円の現金のみとなった。この結果、あなたの消費・貯蓄行動は変わるだろうか? 
 
あなたの所得が増えたわけでもなく、また僅かばかりの国債からの利息収入は無くなったが、デフレが続くと思っているのだから、利息が得られなくてもインフレによる現金の購買力の喪失はないと思っている。だから、あなたは消費を増やしたり、実物資産を購入したりする気にはならないだろう。だから日銀が国債を買ってマネー供給を増やしても、デフレ期待がある状態ではデフレを解消する効果はないと考えられる。
 
「水を飲みたい馬の手綱を引いて飲ませないことはできるが、水を飲みたくない馬に飲ませることはできない」ということで金融政策には非対称な限界があるということになる。でも、本当にそうだろうか?日銀が仮に民間が保有している800兆円ほどの国債を全部買い切って全てマネーに交換しても、インフレにならずにデフレのままだろうか?
 
それならば、いっそそうした方が良いだろう。というのは政府にとって国債は返済期日があり、利息も払わなければならない債務である。ところがマネー(紙幣)は返済期日も利息の払いも不要の紙幣であり、国債を買い切ってそれを全部紙幣に交換することができるならば、やったら良いだろう。なにしろ国債が全部返済期日のない紙幣と言う特殊な「債務」に転換できるのだ。それができれば財政赤字問題も解消してしまうだろう(日銀は組織運営上は政府から独立しているが、経済的には政府の一部である)。
 
政府にとって有利この上ない国債と紙幣の交換は、民間の立場から見ればこの上なく不利な取引だ。だから中央銀行が国債購入を進めれば、いずれどこかの時点で民間の主体が「こんな不利な取引はもうしたくない」という限界点に達し、マネーを商品の購入や実物資産のへの投資に費やす動きが生じるだろう。すると物価と資産価格が上昇を始める。つまりデフレ期待はインフレと資産価格上昇の期待に転換すると考えられる。
 
デフレからインフレへの転換は穏やかではすまない?
問題はそうした期待の転換が穏やかに生じるかどうかだ? 穏やかな転換ではないかもしれない。なにしろ、国債との交換で中央銀行が民間に100兆円単位のマネー供給を増やした挙句のことだ。デフレ期待で物価も資産価格も下落するという期待が強かった時はみんなマネーを退蔵していた。ところがインフレ期待に転換し始めたとたん、一斉に商品や実物資産を買う動きに殺到するだろう。
 
バブルで資産価格が上ると思っていた時は割高の資産でも買って抱えていたが、資産価格が下がり始めるや我も我もと投げ売りが始まるのと同じような転換が、デフレからインフレに転換する時に生じるリスクがある。
 
そうなったら今度は金融を引き締めれば良いはずだ。具体的には中央銀行が今度は逆に国債を売ってマネーを回収すれば良い。ところがここで問題が生じる。中央銀行がデフレ下で国債を買い、仮に500兆円(平均期間5年、平均利回り0.5%)の国債を保有したとしようか。デフレ期待1%がインフレ期待2%に転換すると(3ポイントの変化)、実質金利が同じなら5年物国債金利は3.5%(=0.53.0)に上昇し、国債の価格は逆に下がる。
 
この場合国債価格がいくら下がるかと言うと、12.8%下がる。その結果中央銀行の500兆円の国債の価値は64兆円評価損(=500×12.8%)を抱えることになる。日銀の自己資本は数兆円だから、大幅な債務超過になる。
 
日銀は自分のバランスシートが巨額の損失を抱えることを嫌がっている?
「別に日銀が債務超過になったって政府全体は既に莫大な債務超過なんだからどうでもいいじゃないか」とは日銀は考えない。「中央銀行が債務超過なんてとんでもないことは受け入れられない」と思っているはずだ。その結果、現実には日銀は国債の買い切りは、ちびちびとしかして来なかった。しかも国債保有総額は日銀券発行残高の範囲内にとどめるという方針で制限を課している。
 
中央銀行が国債を買ってマネーを供給することを「マネタイゼーション」と呼ぶが、それは通貨の信認を損なうリスクがあると考えられている。国債買い切りの上限設定は、そのリスクを防ぐための歯止めだと日銀は言っている。しかし、実は日銀自身のバランスシートが棄損して債務超過になるという「許し難い事態」を回避したいというのが本音ではないかと私は考えている。
 
もっとも国債価格暴落のリスクをヘッジする手法もある。例えば日銀が株式や不動産(REITでも良いだろう)などの実物資産を買って保有しておけば、将来のインフレと資産価格上昇に転換した場合に生じる国債価格下落の損失をヘッジできるだろう。ただし、どれほどのヘッジ残高を保有すれば妥当なヘッジになるか予測ができない。それはどれほど国債を買ったらデフレが解消し、どの程度のインフレになるか予測が不可能だからだ。
 
日銀にとって事前に計算できないリスクがあっても、日本がこのままデフレを続けるよりはマシだから、「エイヤー」でやってみるべきだと思うのだが、日銀はそう考えていないということだ。
 
 
その2、需給ギャップ論は次回に。
 
補足1、「ケインズ説得論集」山岡洋一訳、日本経済新聞出版社、2010年4月
1919年から31年にかけて書かれたケインズの論説集で、ただいま読書中。
最初の章がインフレーションとデフレーション、まだ世界が金本位制の尻尾を引きずっていた時代のものだが、今日的な状況との共通点もあり、面白い。 学術論文ではないので、分かり易く書かれており、平易に読める。
 
補足2、「インフレ、デフレはマネタリーな現象である。少なくとも、かなりな部分は。」
これは経済学の議論に馴れていない方には、実はなかなか理解されない。しかしこういう話なら分かってくれるだろう。あなたは君主であると想定して頂きたい。
 
国では金貨が流通している。通貨の呼称は「ドル」で金貨1枚=1ドルである。
 
君主であるあなたは財政難に苦しみ、秘策を思いついた。金貨一枚の金の含有量を半分に下げて、旧金貨1枚から新金貨2枚を鋳造した。これにより君主であるあなたは、国中に流通していた総額1億ドルの金貨から2億ドルの金貨を作り出し、差額の1億ドルを収益として得ることができる。
 
「これで財政赤字問題は解消だ」と思ったが、金貨の金の含有量の半減に気がついた商人たちは、これまで1ドルだった商品を2ドルに値上げすることで対抗した。その結果、国中に流通する金貨の量(マネー供給量)は2倍になり、物価も2倍になった。単純な貨幣数量説が示す通りの結果となったわけである。

朝ドラ「ゲゲゲの女房」のことである。
また、感動しちゃったので、そのシーンを書いておきたい。記憶だけで書くので不正確だが、ご勘弁頂きたい。
 
時は1960年代後半か、「墓場の鬼太郎」をTV化しようとしたが、スポンサーがつかない。そりゃあそうだろう。不気味過ぎる。
 
そこで出版社と制作会社は、「悪魔くん」をまずTV化しようと考える。視聴者の目を慣らしてから、最終的には鬼太郎に持っていこうという作戦だ。
 
水木はまず週刊マンガ誌に新版「悪魔くん」の連載を出版社から依頼される。ただし以前出版して全く売れなかった旧版(オリジナル版)悪魔くんは不気味過ぎるので、悪魔くんの想定を魔族から人間の子供に換えて書いてくれと依頼される。
 
しかし、水木の筆が進まない。旧版「悪魔くん」には精根込めて書いても書いても売れず、貧乏続きの当時の境遇への憤りの念が込められていた。旧版悪魔くんは売れぬまま打ち切りになってしまった。その時のこだわりをあっさり捨てて、可愛く人間の少年にした新版悪魔くんを書く気に水木はなれなかった。
 
悩む水木に女房は言う。
「あなたがあの時悪魔くんを書いていた時に、私が悪魔くんが死んでしまうラストシーンは、悲し過ぎて嫌だって言ったら、あなた『心配するな、悪魔くんは必ず復活する。だから悲しくはない』って言ったわよね。私、悪魔くんはあなたのことだって、その時思ったのよ。どんなことがあっても復活するって。
悪魔くんが復活する時が来たんじゃないの?新しい姿で?」
 
この女房の一言が水木の気持ちを一変させた。
新版「悪魔くん」の復活だった。
 
 
 
 
 

7月26日本日の日本経済新聞、田村正之さんの記事「点検 新規投信」
 
以下引用しよう。
 
「新しい投信」ばかりに注目すること。歴史を振り返ると結果的に“高値づかみ”に終わったケースが目立つ。
 新規投信は結果として高値づかみになりやすいという指摘はこれまでもあった。その時々の話題のテーマが対象ということは「裏返せばすでに人気化し高値圏にあるものに投資すること」だからだ。
 グラフAで今回対象に選んだ投信全体とインデックスの差の平均を求めて年度別にみると、00年度を除き指数をかなり下回った。投信の成績(基準価格)は運用コストである信託報酬(例えば海外債券の積極運用型なら年1.3%前後)が引かれた数字だ。
 ちなみに純資産上位は各年度ともすべて市場平均を上回ることを目指す積極運用型投信。「販売会社は、手数料率が高い積極運用型の方に力が入る」(大手運用会社幹部)という面がある。コストが低いインデックス(指数連動)型投信はゼロだった。」
 
ほとんどコメントを追加する必要は感じないが、蛇足しよう。
例えば投信選択にモーニングスター社の投信検索サイトを利用し、過去の投資リターン、手数料コストなどを点検して選ぶ方々は、個人投資家としてはかなり金融・投資リテラシーのある層だ。
 
それでも非常に根強い選択のバイアスがあって、過去3年、5年の期間で最も投資リターンの高い投資信託を選ぶ傾向があると思う。 過去3年、5年リターンが高かったことが、次の期間も高いリターンを生むと期待するのは果たして合理的だろうか?
 
私達はコインを投げて5回続けて表が出たから、次も表の確率が高いと予想することが、全く非合理的であることを知っている。
 
投信選択でも過去5年リターンが高かったから次の5年も高リターンが期待できると思う人は「トレンド志向のバイアス」に捉われているだけだろう。
 
「じゃあ逆に過去5年間リターンの悪かった投信を選べばよいか?」
 
それほど単純ではない。それはコインを投げて5回続けて表が出たから、次は裏の出る確率が高いと考えるのと同じで、同様に非合理的な選択だ。これを「逆張り志向のバイアス」と呼ぼうか。
 
「じゃあ、どう選んだら良いの?!」
それはまた後で。

最近お寄せいただいたyka**31さんの以下の質問
 
「今回お伺いしたいのは、対する日本株が20年に渡り低迷している(EPSが伸びていない)理由に関する竹中さんの見方です。
米国との対比で言えば、日本人(経営者)は利益成長より事業の安定性・雇用維持を重視→不採算部門の継続→供給過剰→価格競争→利益低迷、となっているような気がします。
またこのことが、デフレ・円高・財政危機の遠因ともなっているような気がするのですが、如何でしょうか?」
 
お釈迦様じゃないんだからね、経済の分野でも分かることよりも分からないことの方が遥かに多い。
企業利益率の違いはちょっと脇に置くとして、なんで日本だけデフレなの?については、先日発表されたばかりの内閣府の年次経済財政報告書(いわゆる経済白書)が日米の相違をテーマに採り上げている。
 
 
とりあえず私のコメントなしにお読みいただきたい。これで合点されるか?されないか?
私のコメントはまた後で。
 

日本のREIT(上場不動産投資信託)、私は値が大幅に下がって買いごろだと思って、昨年後半からずいぶん買った。しかし個人投資家の資金がREITに向かっているという話はとんと聞こえてこない。
 
ネームバリューもある優良REITでも利回りは、5~6%だ。どうして買わないの?不思議でしょうがない。
その一方で、未だに証券会社や銀行のセールスに乗せられて、手数料ばかり高い外貨投資信託買っている人が後を絶たない。
 
彼らが勧めるハイイールド債を組み込んで、ブラジル・レアルの為替リスクまで乗っけた投資信託なんて、どうなるか分からないよ。「ハイイールド債」と言えば聞こえが良いが、Junk Bond(クズ社債)だよ。
 
まあ、いいでしょ。私が既に退職したメガバンク・グループもそういう高手数料の投資信託を売って儲けにしている。私の年金(企業年金)が、そうした儲けに支えられて安泰なら、個人的には文句を言う必要はない。
 
不動産証券業協会のデータで日本REIT全体の投資リターンを確認してみた(下の図)。
青い線がインカム・リターン、赤い線がキャピタル・リターンである。
 
弊著「なぜ人は市場に踊らされるのか?」(日本経済新聞出版社2010年)「資産運用のセオリー」(光文社2008年)をご覧下さった読者はご存じのはずだが、住宅資産は賃料がとても安定しているので、賃料を基準にして価格の大局的な割高・割安を簡単に見抜けると強調した。
 
REITは主に商業ビルなどに投資しているので、賃料を原資にした配当リターンは住宅賃料よりは変動性が高いと思っていた。商業ビルの賃料は住宅賃料よりは、景気の変動の影響を受けやすいからだ。ところが、データをグラフ化して見てちょっと驚いた。REIT全体の賃料に基づくインカム・リターンも2002年から2010年まで5~6%で大変に安定しているのだ。REIT一覧
 
正確に言うと、インカム・リターンと配当利回りは異なる。インカムリターンは「不動産資産の市場価値」」分母にして計算している。「市場価値」とはREITの上場されている時価ではない。むしろ「鑑定額」に近いだろう。
 
ちなみに、上場時価を分母にREITの配当率の推移をみると、REITのブーム・ピーク時には2%台まで下がり、クラッシュ時には8%近くまで上がっている。つまり、REITの上場価格が、非合理的な高騰と暴落をした結果、鑑定額を分母にした賃料リターン(=インカム・リターン)は安定しているのに、上場価格をベースにした配当利回りはバカみたいに乱高下したのだ。
 
もちろん、私は配当リターン2%~3%%のREITなんてバカバカしくて買えないと思っていたので、インカムリターンが「正常化」した昨年までREITは一切買わなかった。
 
こんなに安定したインカム・リターンの資産なのに、市場の投資家はブーム期には倍の値段で買い、ブームが破裂した後は、ピーク時から半値以下の水準でもなかなか買おうとしないのだ(REITの市場時価総額のグラフ) (東証REIT指数)。
 
まことに、ありがたいことだ。躁鬱病のMr.Marketに感謝しようじゃないか。彼が落ち込んで鬱になってくれたおかげで、優良REITを利回り5~6%という配当利回りが出る価格で買うことができるんだ。
 
個別のマンション投資でも都心の中古物件をショッピングしても、利回りはネット6%程度だろう。ところがREITには個別物件にはない高い流動性がある。何年かして、またMr.Marketが躁状態になって、バカ高い価格になったら、さっさといつでも売り抜けることができる。 
 
「価格が上がらなかったらどうする?」 超低金利の日本で5~6%ものリターンを生んでくれるのだから、ありがたくことだと思って、いつまでも持っていればいいだろう。
 
「日本は低金利で資産形成なんてできない」と嘆いている方がいれば、本当に嘆くべきなのは「日本の低金利」ではなく、その方の金融・投資リテラシーの不足だ、と申し上げておこうか。
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NHKの連続朝ドラなどは見ないのだが、今放送している「ゲゲゲの女房」はとうとうはまって見るようになった。
大学の講義で朝一、9時からあるのは水曜日だけだから、8時からの放映を見ている。
普通のサラリーマンの方は出勤時間だろう。
この辺が、大学の先生という職の「優雅?」なところだ。
 
ご存じ異色のマンガ家、水木シゲルとその妻をモデルにしたドラマである。
時は1960年代、「貸本屋」というビジネスが日本に広くあった時代だ。
私の小学生のころであり、私も貸本屋でマンガを借りて読んでいた。
「貸本マンガ家」という、儲からない貧乏底なしの絶滅危惧種として水木はスタートする。
 
昔の貧乏物語は、なぜか受けるパターンだ。
今も貧乏だったら「昔の貧乏だった時代」を思い起こして楽しむことはできない。
なんだかんだ言っても、今の日本が豊かだから昔の貧乏時代物語がうけるのだ。
 
私も子供時分、水木シゲルのマンガも読んだ。
「ゲゲゲの鬼太郎」、「河童の三平」、「悪魔くん」など覚えている。
たしかに水木のマンガは異色だ。どう見ても子供向けではない。
目に見える現実世界と、その背後にある(ような気がする)妖怪や幽霊がうごめく異次元が隣接している不思議な怖さを描いている。背後?あちらから見れば、こちらが背後か。
 
何と言っても、マンガ絵の風貌が異色だ。
見方によっては、「気持ち悪い、薄気味悪い、健康的でない」そう言って、子供マンガに相応しくないと感じた人も多かったのだろう。そうした状況が、ドラマでも良く描かれている。
ねずみ男なんて、絵から耐えがたい臭さが伝わってくる感じがする。
 
ドラマでは、とうとう大手週刊マンガ雑誌にデビューしたのに、最初は受け入れられず、掲載取りやめかの瀬戸際、これが本日木曜日の放映内容だった。この後どう展開するのか、明日の朝の放送が楽しみになってしまう。
 
ゲゲゲの鬼太郎は後年テレビアニメにもなった。その結果、アニメでは薄気味の悪さという毒が抜け、明るく健康的になってしまった。これは水木の望んだ展開ではなかったろうと思う。
 
1960年代に少年マガジンに連載を始めた当時のゲゲゲの鬼太郎(当初は「墓場鬼太郎」)の復刻版が発刊されている。アマゾンで注文した。週末には配達されるだろう。これも待ち遠しい。
 

住宅価格の割高・割安を見抜いて、「ブーム期の割高での購入を避け、割安時に買う」 そのための指標としてPRR(Price Rent Ratio)という概念を著書の中でこれまで紹介してきた。「資産運用のセオリー」(光文社、2008年)、「なぜ人は市場に踊らされるのか?」(日本経済新聞出版社、2010年)
 
実際のこのPRRについては、東京の中古マンションに関してPRRの推移を筆者のホームページ「住宅価格指数/賃料指数で継続的に公開している。
 
弊著をご購読下さった方はご存じだが、PRRは株価の割高・割安を示す株価収益率(PER、あるいはP/E)と基本的に同じだ。ただし株価については企業利益(earning)の変動が極めて大きく、株式市場全体をとっても利益の著しい変動の故に、「PERさえ見ていれば、大局は分かる」というわけにはいかないのが難しい点だ。
 
その点、住宅については賃料の変化が極めて安定しているので、これをアンカーに置けば、価格のバブルとその崩壊を見抜くことができると考えているわけである。
 
さて、問題の株式市場全体の割高・割安について、ものぐさな私でもとりあえず「これだけ見ていれば、大局は分かる」そういう便利な指標はできないものか?
 
その観点から、とても役に立ちそうなものを見つけた。
multpl.comというサイトが米国の株価指標S&P500について、S&P社のデータとロバート・シラー教授のアイデアに基づいて、P/E指標を長期時系列で公開している。(ロバート・シラー教授は有名だからご存じでしょ?)
 
ミソは、このP/Eは通常の「直近の決算利益」や「次期の決算見通し利益」ではなく、過去10年間のS&P500の企業の利益をインフレ調整(実質化)して使用している点だ。
“P/Es are based on average inflation-adjusted earnings from the previous 10 years ”
これを“P/E10”と呼んでいる。
 
その結果、短期的な企業利益の変動に翻弄することなく、長期的な企業利益水準に基づいて株価全体(S&P500)の割安・割高が見抜けるという仕掛けである。言われてみれば単純なアイデアだ。
このP/E10を見ると以下の通り。
 
現在        19.6
2000年代平均  26.3
1990年以降平均 25.8
1980年以降平均 21.1
1970年以降平均 19.1
 
インフレ調整後のS&P500の企業収益は長期的には「過去の平均値に回帰する」と考えるならば、この見方で株価指数の長期的な割高・割安が判断できる。
しかし、同じサイトに掲載されているインフレ調整後の企業利益(S&P500)の推移をみると、趨勢的な水準の変化(増加トレンド)も感じられる。従って、やはり10年単位ぐらいでP/Eの中心レンジを修正しながら判断する必要がありそうだ。
 
そう考えると、現在のP/E10が19.6というのは1990年以降のレンジでは若干割安という判断ができそうだ。もっともこれでS&P500のインデックスファンドやETFに投資する場合、当然投資のタイムスパンは10年、あるいはそれ以上の長期となる。
 
「長期的にはオレは死んでいる」 そういう方は有り金消費して人生を全うすれば良いだろう。
次世代まで見据え、子子孫孫のことを考えている方向きである。
 
なにしろ現在60歳以上の世代は、莫大な国民的な負の遺産(政府債務)を残して死ぬのだから、余裕のある方々は子子孫孫のために超長期投資をしてプラスの資産を残して逝くのが、せめてもの罪滅ぼしだろう。
 
私は日頃から学生諸君にはこう言っている。「かじらせてもらえる親のスネのある諸君は、アルバイトなんかせずに自分の将来のために勉強しなさい。つまり、遠慮せずにスネの骨までしゃぶらせて頂きなさい。私も含めて君たちの親の世代は莫大な負の遺産を残して逝くのだから、多少でもそれで埋め合わせないとね・・・」
 

なんだかブログのアクセス件数が微妙に上がっている。
1ドル80円台の円高基調だから、為替相場系の方々が、「たけなかが何か言わないか」とチェックされているのだろうか。 
ははは、言わないよ~。言うべき程のことは既に言った、書いた、やった。
 
それでも円高が気になって気になって眠れない方は、インターネットの相場サイトではなく、アニメでも見ている方が良いと思う。
 
男子系アニメ、マンガはある意味ではほとんどバトル・ストーリーだ。
私が昔楽しんだバトル系マンガ・アニメから3つだけ選ぶと、
 
北斗の拳
幽遊白書
聖闘士星矢
 
この3つかな。
「何言ってんだ。『明日のジョー』だろ」という方もいるだろう。相対的に若い人は「ドラゴンボール」か。
 
最近みつけたが、聖闘士星矢のThe Lost CanvasがGyaOのサイトで見られる。
毎週月曜日に一話づつ進む。今は第7話まで掲載されている。
けっこう面白い。パターンは昔も今も同じだ。
 
強い敵に打ちのめされる度に、
「オレは、まだまだこんなもんじゃないお!」とか
「こんなところで、オレはくたばるわけにはいかないん
と星矢は吠えながら、何度も立ち上がる。
 
完璧に同じパターン、しかしなぜか飽きないから不思議。
昔に比べるとアテナが「豊乳」になっている気がするが、時代による嗜好の変化か。
 
 

エイハブさんのご質問
 
「このところの消費税の議論では、逆累進性が大きく問題視されています。
ただ、日米英で低所得から高所得まである程度体験してきた身としては、日本はそもそも所得税の累進度がとてもスティープで、消費税率の低さも考慮すると実質的な累進度はかなり高いのではないのか実感です。この点に関し、各国を比較した実証的で分かり易い研究はあるのでしょうか?」
 
経団連も消費税率引き上げと所得税の累進税率の引き上げ、法人税の引き下げをセットで提案している。
消費税が所得に対して逆累進的であることは誰も承知している。消費税率を上げるだけでは格差を拡大してしまう。それではさすがに「格差拡大反対勢力」の批判に耐えられない。
 
私も消費税の逆進性は所得税率の引き上げで相殺すればよいと主張した。
では、日本の所得税の累進税率は他国比較どれほどなのか?
これは議論を進める上で確認しなくてはならない事実だ。エイハブさん、いいとこ突いている。
 
ところがこの国際比較は、それほど簡単な問題ではない。
単純に所得階層別の税率だけではなく、各種の所得控除なども反映した実効税率で比較する必要があるからだ。
検索したところ以下の大阪経大の藤本清一さんという方の研究論文が見つかった。
37ページ 図1
 
税制調査会資料をベースにしている。これによると日本は全体的に他先進国比で税率はやや低いが、特に年間所得500万前後から1000万円台前半のミドルクラス(夫婦&子供二人のモデル)の税率が低めと見える。
 
ちなみに米国では1980年代前半にレーガン大統領の大減税で累進税率のフラット化が進んだ。
これは世界的な傾向となり、西欧や日本でも少し遅れて累進税率のフラット化(最高税率の引き下げ)が行なわれてた。
 
また以下の三菱東京UFJ銀行調査室(私のもといた古巣だが)の最近の調査レポートも本件問題に絡んで参考になるだろう。
主要先進国の所得税の最高税率(含む住民税)は40%~50%で概ね収斂している。
ただし、実態は表面的な税率だけでは分からない。
 
例えば、日本を含め主要国は株式配当など投資資産所得に軽減税率を適用している。
例えば日本は株式配当は20%だったが、今は時限処置で10%の軽減税率になっているはずだ。
所得水準の高い家計ほど配当などの所得が大きいと考えられるから、こうした点も含めた実態調査に基づかないと本当のことは分からない。
それに以前も書いたが、自営業の家計の課税所得の補足が過少評価されている問題は昔から指摘されている通りだ。

私はエコノミストの視点で民主党の財政再建&消費税率引き上げへの論戦転換を論じたが(「そっくりマニフェストは悪くない」)、政治ジャーナリストの視点ではこのForesightsの記事「消費税上げ便乗の目算」が的を得ていると思う。
 
以下、引用する。
「民主党はあらゆる政策を遂行するにあたって、つねに他党から「財源はどうするのか」と追及されてきた。このため、いつかは消費税の問題に触れなければならないことは分かっていた。だが、言い出せなかった。そんなとき、自民党が消費税率10%を掲げた。ここが勝負どころと判断した菅首相は、自民党の提案に便乗するという大きな賭けに出たのだ。
 
 マニフェストには税率引き上げに関する具体的な数字が書いてないところをみると、菅首相にとって、あの記者会見での10%発言は、あらかじめ用意しておいたものではなかったのだろう。自民党の同日の発表内容を知って、急遽、飛び乗ったのだ。
 しかも、自民党と歩調を合わせることによって、増税を嫌う国民からの批判を浴びるリスクを減らせると考えたに違いない。このあたりの判断能力は小政党を渡り歩きながら生き延びてきた菅首相の動物的な感覚のなせる技なのかもしれない。
 
菅首相は今回、慎重の上にも慎重を期し、幾重にもリスク回避の方策を整えながら、そろりそろりと消費税問題に動き始めたというのが実相だ。そこに透けて見えたのは、前任者の鳩山氏とは対極にある菅首相のしたたかで用心深い政治手法なのである。」
 
書いた記者の名前がないが、なかなかの洞察力だと思う。
やはり政治化には高邁なビジョンと同時に、したたかさと用心深さが不可欠の資質でしょ。そういう意味では「理念無き権謀術数」の小沢氏と、「したたかさと戦略眼を欠いた」ハトポッポ首相は、補完的な関係だったのだろう。
しかし結局、その「二重権力」は調子が噛み合わなくなって崩壊した。
 
正論を言えば、菅首相はその「小鳩政権」をきちんと総括すべきなのだが、正論だけでは通用しないのが政治の現実だろう。
菅&仙石政権は私には残された希望に見える。
 

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