昨日読了した「世紀の空売り(The Big Short) 」が面白かったので、ここで振り返って今回のアメリカ金融危機をテーマにした本で、「とても参考になった」のを出版順に3点(邦訳版)あげておこう。
 
2005年まで実際にノンバンク貸金業者としてサブプライムを含む住宅ローン事業を経営していた著者が、サブプライムローンの放縦、蛮行ぶりの実態を描いた内容。金融危機の震源地としての住宅ローンの現場が良く分かる。分かりやすい。
 
JP Morgan Chaseのデリバティブ・チームに密着取材しながら、金融証券化スキームとCDSがモンスター的なバブルに急変貌して行ったプロセスを丹念に描いている。金融機関の規制問題に関する記述で一部見逃せない間違いもあるが、金融ビジネスに携わったことのないジャーナリストとしては、よく記述されている。
ただし、沢山登場する金融商品擁護についてある程度の知識がないと、読者は十分に理解できないかもしれない。 
 
著書は1980年代後半にソロモンブラザーズに勤務した後、著書「ライアーズ・ポーカー」のヒットで有名になった書き手。サブプライムローン関連の証券化商品の価格と格付けが「絶対におかしい!」と気がついた中小ヘッジファンドの運用家らに密着して、世のほとんどすべての投資家とは反対に彼らがCDSを使ってサブプライム関連の証券化商品のBig Short(売り)に乗り出す過程を描いている。
その過程で暴かれるのは、証券化ビジネスを通じて投資家を食い物にする投資銀行の放縦、インチキぶりである。
彼らは半分「変人、奇人」扱いされながらも2006年頃から、バブルの崩壊に賭けたポジションに乗り出す。結局、2007年前半にバブル崩壊が始まり、大儲けとなり、彼らはバブル崩壊を的中させた「天才」として注目される。しかし、その心中は、巨大なバブル崩壊に飲み込まれていく金融システムの大洪水を、箱舟から見下ろすノアのようなものだったと締めくくられている。
やはり投資は、どこかで多数派とたもとを分かつ決断ができないと成功しないね、と改めて感じさせる。
 
以上3つ読めば、ローンの現場、投資銀行の現場、ヘッジファンドの現場の3つの異なった視点から、今回のバブルと金融危機の全体像が浮かび上がると思う。
 
コンパクトに、米国の住宅バブルとその崩壊の因果を2章でコンパクトに説明しています。
ご参考案まで。
 
追記:
でもやはり最高傑作は、このブログ紙芝居かもしれない。2007年のネタですけど・・・。