たけなかまさはるブログ

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2011年01月

既にブロッガー、ナドレッグさんのサイトを紹介する形で昨年12月にとり上げた映画、
The Space Battleship ヤマト をようやく昨日見た。
 
実はあまり期待していなかったのだが、細かい不満点は複数あるものの、予想以上の出来栄えだった。いや、なぜか琴線にふれる要素が多く、全く予想外にも「じ~ん」としてしまったと白状しておこう。 そのため何が琴線にふれたのか、昨晩から考えている。
 
まず、なぜ期待していなかったのか? 私には1973年-74年にTVアニメで放映された「宇宙戦艦ヤマト」の印象が心深く刻まれているので、実写版を「キムタクや黒木メイサがやるからって、なんぼのもんじゃい」というイメージがあったからだろう。原作マンガや原作アニメが、実写版映画になってがっかりするほど陳腐化する例は多いからね。
 
なぜ原アニメが私の心深く沁み込んでいるかと言うと、TV放映が始まった1973年は偶然私が大学受験を控えた高校3年生だったことも影響している。番組放映は1974年3月に完結する予定で展開した。まさに大学受験のタイミングにピタリと重なっていたのだ。
 
放映の最後に出る「地球滅亡まで後150日、急げ、ヤマト!」のフレーズは「大学受験まで後**日」という私自身の切迫感、緊張感と重なり、物語で展開する悲壮と希望の交錯が心に沁み込んでしまったのだ。
 
しかし、予想外に感じてしまった原因はそれだけじゃないだろう。
とりあえず次のような要素が考えられる。
 
1、日本人の大好きな「悲壮感」いっぱい
 悲壮感という言葉、英語に訳そうとすると一語で適切な訳語が出てこない。つまり日本的カルチャー、 価値観に特有な要素を代表している言葉なんだ。
 
2、ヒーローが最後に死ぬ(ネタバレごめん)
 日本では生き残るヒーローは2流で、真のヒーロー(伝説化されたり、神格化される)は死なねばならな い。超タフに生き残るヒーロー物語が大好きなアメリカ人のヒーロー像とは違うのだ。もちろん双方例外 はあるがね。
 
3、「戦艦ヤマト」が日本人に想起させる複雑な思い
  太平洋戦争に対する否定的情緒と同時に、その汚点を濯ぎたい、あるいは否定を肯定に転換するよ  うな復権を希求する感情
 
まだあるだろう。この映画の映画としての評価は別にして、なぜか琴線にふれる構図は、良くも悪しくも、けっこう複雑かもしれないと思い始めている。

2011年の年初雑感
政治・政策
日経ビジネスの本誌記事で「民主党はこう変われ」というのが新春号で出る。
ビジネスオンラインでは本日付けで掲載されている(以下サイト)。
 
10人のエコノミストに民主党の政策の各論の是非を面談取材したもので、私も昨年暮れに取材を受け、10人のうちのひとりとして、ご引用頂いた。
 
しかし、小沢派との党内対立を抱えたままでは、菅内閣は変身することも、イニシアチブを再構築することも不可能じゃないか・・・という気がしてならない。だからといって、党内対立を抑制して政権維持に固執するなら、「昔の自民党政権と同じ」ということになる。やはりすっきりと政策原理に基づいて政党再編して欲しいと思うばかり。
 
経済・金融
日本経済は低成長・デフレ気味だから(かつ家計の金融資産が1450兆円も積み上がっているので)、財政赤字の膨張にもかかわらずこれまで国債利回りは超低位にとどまって来たと考えて来た。しかし経済・金融の因果は相互依存的、循環的だ。
 
ひょっとすると、投資家や投資機関が国債ばかりに投資しているから、デフレ&低成長なのではないか?と逆に思えて来た(エコノミストとしてはやや冒険的な発想だが)。
 
もしかりに、1450兆円のポートフォリオのうち、10%(145兆円)が内外の株式や実物資産投資に今年シフトしたら、実体経済にどういう変化が生じるだろうか? 
 
まず海外投資が増えるので、円安になる。1ドル90円~100円のレンジに戻れば、産業界の売上・損益見通しは、今よりそうとう改善するだろう。国内の株価の上昇で、日本でもある程度の資産効果が生じ、消費にもプラスの影響が出る。 自社の株価の上昇で経営者もやや楽観的な雰囲気になり、設備投資(内外)も増えるかもしれない。 国債利回りはやや上昇して1%台後半まで上がるだろうが、その程度なら景気への影響はほとんどないだろう。
 
少子高齢化という人口動態による低成長で説明できる趨勢的な経済成長率の低下部分は、生産年齢人口の増加率の低下に見合っているはずだ。
 
「10 年毎の生産年齢(15-64 歳)人口平均成長率を見ると、1950年代:1.9%、60 年代:1.8%、70 年代:1.0%、80 年代:0.9%、90 年代:0.0%、2000 年代:-0.6% と一貫して低下している」(「失われた20年」の構造的要因、2010年5月、RIETI
1980年代と2000年代を比較すると、生産年齢人口の増加率の減少幅は1.5%である。1980年代の実質GDP成長率は4.65%だから、その他の条件が同じなら、2000年代も2.15%(=4.65-1.5)の実質成長はできることになる。
従って問題は、「その他の条件」にあるわけだが、日本経済のデフレ&低成長の本質は「心身症」ではないかと思えてくる。(上記のRIETIレポートはTFP(全要素生産性)の低下にその他の原因を求めているが、なぜTFPが低下したかについては、複数の仮説があり得るだろう。)
 
まあ、エコノミストが経済の不振は「心の問題」といっちゃあ、何のための経済学なんだ?という批判を受けそうだ。しかし、経済は人間の集団的な活動による現象なんだから、物理的な経済事情と「集合的な心の問題=期待形成」の双方による相互依存の体系として考えるのは、ある意味で当然かもしれない。
 
以前も書いたが、国債は株やその他の実物資産と異なり、負債の見合いになる資産(付加価値を生み出すアセット)がない。償還財源は将来の税収に過ぎない。国債を発行する分だけ現在の民間の貯蓄によって形成された資産が事実上取り崩されていることになる。
 
未来の付加価値、所得を生まないも国債に現在の貯蓄の多くが投じられていること自体が、将来の経済成長率を引き下げている。これは当然の理だ。
 
歴史
NHKの「坂の上の雲」に刺激されて、遥か昔(20歳代の時)読んだ司馬遼太郎の原作を読み直している。これがすこぶる面白い。原作が公開された当時の日本では、左派の論客から「明治期の日本帝国主義を美化している」といった批判があったように記憶しているが、偏狭なイデオロギー的な批判に過ぎない。
司馬遼太郎の視点は、明治の日本を描きながら、今の日本にも新鮮な教訓となる様々な洞察に満ちている。やはり希有な歴史小説だと思う。

共著で一冊出版致します。発売は1月12日の予定です。
 
PHP研究所、1月12日発売予定
 
以下は出版社による本書の概要説明:
中国、アメリカ、朝鮮半島、インド・パキスタン、イラン……。「政権交代の2012年」の前年、各国で発生する内部闘争が国際政治を大きく動かし、アジアに“大津波”が発生する危険が高まる!
中国の内部情報に詳しい清水美和氏(東京新聞論説主幹)、各国のインテリジェンス活動に精通したジャーナリスト・春名幹男氏、米国経済・為替分析に定評のあるエコノミスト・竹中正治氏、サイバー・セキュリティの専門家・名和利男氏など、当代一流の情報分析のプロ8人が集まり、「ワールドアナリシス・グループ」を結成。
新聞やテレビでは報道されない、プロが独自に集めた最新の現地情報が満載。さらに、そこからの見通された驚愕のシナリオは、大変刺激的だ。 世界各国に事業展開を図る日本企業、さらにはビジネスマンが、リスク管理のために押さえておくべき見方が盛り込まれた、価値のある一冊。
 
補足:
共著者の中で一番シニアな方は、春名幹男氏で代表的なご著書には「秘密のファイル、CIAの対日工作(上下)」があり、私も以前読んで勉強しました。元共同通信で米国政治、国際政治情勢をご専門にされてきた先生です。
 
私は米国経済の章を担当しています。本書の編集方針として、リスク要因に焦点を絞って書くということでしたので、米国経済の抱えるリスク要因にスポットを当てています。ただし、それらのリスク要因が実際に顕現化して、2011年に米国経済の回復が失速、あるいは長期低迷に陥る可能性は、主観的な確率としては「25%、あるいはそれ以下」と明記しておりますので、誤解のされないようにお受けとめください。私の米国経済にかんするメインシナリオは2009年半ばから「回復過程の持続」でずっと変わっていません。
私と欧州経済の章を担当した西村陽造さん以外は、国際政治情勢に詳しい執筆陣ですので、北朝鮮問題や中国を巡る国際政治情勢の変化などについてご関心のある方に、特にお薦めできます。
 
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