たけなかまさはるブログ

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2011年03月

3月14日発売になった毎日新聞社エコノミスト3月臨時増刊号の2つの論考pdfをホームページに掲載しました(以下サイト)。
 
「投資信託はお得な金融商品か」
残念ながら投資信託は昔も今も大衆個人投資家に対する証券会社(今では銀行も加わっている)による手数料収奪のための投資商品です。買っても良いのはインデックス投信だけ。
ここまでは弊著「資産運用のセオリー」でも紹介した事実です。
今回の結論としては、インデックス投資でも手数料は割高、むしろ東証が近年上場銘柄を急速に増やしたETFの方が効率的な投資手段であること、ETFで海外分散株式投資なら長期で為替相場の変動(円高)でも相殺されない高い投資リターンを残せること、以上2点を加えました。
 
「良いREIT、悪いREITがネット上のデータで分かる」
昨年、大学のゼミ生による日本のREITをテーマにした研究を指導しました。その時の成果を私がまとめたものです。データ分析だけでなく、多少の業界ヒアリングも行ないました。
結論は以下の通り。
「収益不動産の賃料のみに特化し、配当可能利益の90%を配当することで法人税を免除されているREITの収益構造は極めて単純だ。にもかかわらず、これだけの暴騰と暴落をやってしまうということは、投資家サイドの集合的な合理性に致命的な欠陥があるということだろう。 しかし、市場の非合理性は冷静な眼も持つ長期投資家にとっては絶好のチャンスである。」
 
ちなみに、2007-08年の米国金融危機について証券化商品やCDSの複雑性がバブルとその崩壊のひとつの原因になったという主張がある。逆にいうともっと分かりやすい単純な投資商品だったらここまでバブルにならなかったというわけ。 ほんとうにそうかな? 
 
証券化商品の評価が難しいから格付けに依存する傾向が助長された点は確かにあるが、単純な投資対象でも人間はチューリップバブルの昔から投機バブルとその崩壊を繰り返してきたというのが真実だ。
 
またデリバティブの設計と業者としてのリスク管理は技術的に難しいが、ユーザーとしての利用は実は簡単だ。
たとえて言うななら、ハイテク・カーの設計、製造には高度な技術が要るが、運転は簡単、アクセル踏めば加速する、ブレーキ踏めば減速する、ハンドルで右左、これだけだ。問題は運転する人間の側にある。
 

人間が未来を予想しようとする時、必ずすることは今と類似した過去の状況を想起して、その後どう変化したかを思い出すことだ。だから今回の大震災に関しても1995年1月の阪神淡路大震災の時が様々に引用される。
 
全く同様に繰り返される過去はないが、背後にある原理を概ね正しく理解していれば、割と頼りになる推測になる時もある。
それで1995年の1ドル=80円までの超円高の後株価がどうなったか思い出しておこう(以下図表)。ちなみに当時の1ドル=80円と現在の1ドル=80円では「実質的な水準」は全く異なる。日米のインフレ格差を前提に計算すると、当時の80円は超円高、現在の80円はそこそこの円高でしかない。
 
その事情がおわかりにならない方は(それが分からないというのは外為相場のことは「全く分からない」ということを意味するので)、どれでも良いけど以下の弊著をご覧頂きたい。
どうせなら一番新しいのが良いでしょ。
「外貨投資の秘訣」扶桑社、2006年
「外国為替の実際」PHP研究所、2007年
外国為替はこう動く」PHP研究所、2009年
 
1995年4月に1ドル=79.75円の円高値(ドル安値)を付けた後、ドル円相場はドル高方向に戻り始めた。超円高の終焉、円安への戻りにつれて、株価は回復、1996年までこのパターンが続いた。
ちなみに1997年にはアジア通貨危機が勃発、98年は日本の銀行不良債権危機となってしまい、この2年間は円安&株安の逆パターンになってしまった。
 
90年以降の歴史で円安&株高のパターンは1995年-96年の期間と、2005年-07年の期間の2つだけだ。後者の場合、株は既に2003年の5月頃から株はもりもりと上がり始めた。当時リソナ銀行の国有化が(竹中大臣)が決まってから、「銀行危機は終わった」モードに転換し、外人の株買いが始まったからだ。2005年から円安に動き始めた主因は、国内ではグローバル・ソブリンなど外貨投資信託ブーム、内外共通ではFXの円キャリー取引のブームだった。
 
ちなみに「竹中大臣は米国の手先で、長銀を米国資本に売り渡した」と本気で信じている(イメージしている)人がけっこういるのに驚いたことがある(「9・11はサダムフセインがやらせた」とイメージしている無教養なアメリカ人並みだ)。長銀を外資に売りとばしたのは小泉・竹中内閣の前の内閣であり、竹中大臣がしたことはリソナ銀行の国有化だ。
 
これから起こることも、もしかしたら円安&株高(というか株価の回復)というパターンの再来かな・・・?という感じがしてきた。円安要因は、①短期的には輸出減少で貿易黒字が減少する(一時的には赤字にすらなるかも)、②日本の景気回復進行が震災前のシナリオに比べて半年ほど遅れる一方、米国は概ねシナリオ通りの回復過程をたどる→日米金利格差が危機前シナリオより早く広がり始める、③介入で円高を止めたので投資家の外貨投資意欲は損なわれずに済んだ。むしろ今後拡大する(一部のFXプレーヤーがロスカット発動で強制損失となったのみ)。
 
株高要因は、最初の数か月ほどは生産は低下せざるを得ないが、その後の復興需要でフローの生産・消費活動は増えるからだ。これに円安が重なれば後から輸出も伸びる。
 
でも再び1ドル=120円なんて円安にはなって欲しくないな。2007年もそうだったけど資源価格の高騰と円安が重なると日本の交易条件はひどく悪化して、結局はマクロで実質国民所得から失われる分が増えるのでね。  イメージ 1
 
 
 

ユーチューブでこんな映像が流れています(以下サイト)。
アメリカ軍が展開している大震災救援活動、Operation Tomodachiです。
 
だれが映像を作ったんだろうか。米軍の協力を得て作成されたプロパガンダ映像でしょうか。
それでもここは素直に感謝しておこうか。
 
「やったらやっただけの効果はあげる」私はそういうアメリカの考え方って、嫌いじゃありませんから。
それに米兵だってアフガニスタンでゲリラ相手に戦争するよりは、こういう仕事の方が嬉しいでしょ。
 
追記:
このYou Tube動画、face bookにも掲載したのに誰も「いいね!」と言ってくれません(^_^;)
やはりプロパガンダ臭すぎますかね・・・。
 

少し前に東京の液状化危険度マップを紹介したが、もうひとつ参考になるデータサイトを見つけた。
東京都都市整備局が開示している「地域危険度測定調査結果」である(以下サイト)。 
 
液状化予測図は以下のサイト
 
火災や建物倒壊の危険度を評価して、AAAからBBBまでの危険度ランクが表示されている。
ふ~ん、お役所の仕事にしては大胆な開示じゃないか。
これを見て、自分の住む、あるいは働く地域(あるいはその近傍が)AAAなら胸をなでおろし、BBBなら((+_+))となるのも一興であろうか。 
これと以下の液状化危険度マップを合わせれば、危険地域を回避できる可能性はぐんと上がるだろう。
投資目的でマンションを買うなら、これは絶対参照したい。
 
「ゲッ、私の自宅はBBB! 住宅ローンたっぷりあるねん。どうしろちゅ-ねん」という方もいるだろうが、備えあれば憂いなしだ。
TV報道で紹介していたが、東北沿岸の町で、なんという町だか忘れたが、大防波堤がなく地震・津波に最も脆弱と言われていた町では、毎年避難訓練を行ない、地震が起こったら即町民全員が助け合い山の避難場所を目指して避難することを徹底していたそうだ。その結果、今回の震災でも町全体で死者は1名を除いてほぼ全員が助かったという「快挙」を達成したそうだ。
 
一方で、日本最大の大防波堤に守られていた町は、そのことが安心感になって、逃げ遅れてしまった方がも多いとか。まことに人生は塞翁が馬だ。

1、ストックとフロー
大震災の経済的インパクトを考える時に、ストックの損失と回復、フローの変動、この2つの違いを理解しておく必要がある。とても基本的なことなので、分かっている方には当然のことだが、メディアの報道などをみるとこの2つのことがごっちゃになっているような記事を目にすることがある。
 
本日のビジネスオンラインに掲載された小峰先生の解説が参考になるだろう(以下)。
 
ちなみにストックとフローの概念、私は大学では1年生相手に教えている。きちんと勉強している学生は高校生時代には理解している内容だ。フロの水位(あるいは入っている水の体積=ストック)とそこに流れ込む(あるいは流れ出る)水の量(フロー)の例で説明した後、それでは「GDPとはフローの概念か、それともストックの概念か?」と問うと、昨年はかなりの学生が「ストック」と答え、私は(*_*)・・・という感じになった。
 
2、東電の「計画停電」
「停電する」と報じた後、「しないですむ」「でも、するかもしれない」と二転三転した東電の対応が叩かれた。 わたしは東電の肩を持つつもりはないのだが、私が常々強調している「予報と選択の変化」がもたらすパラドックスの典型的な事例だと思う。
 
つまり、「明日は部分停電します」と報じるとそれに対応して電車や工場の休止など節電が行なわれ、その結果、電力消費は供給力を下回り、予定していた停電はしないですむようになる。そこで「停電は休止します」と報じると「なんだ、じゃあ活動しようか」という選択の変化が起こって消費電力が増加し、「やっぱり停電するかも」という状況になる。
 
最近の経済学での流行り言葉では、これを「動学的不整合」と呼ぶ。
こういう場合のひとつの対処法は、停電する計画をたてて、当日の電力消費・供給バランスとは無関係に実施することだ。そうすると先々までの計画が選択に織り込まれて、通期では安定的な状態に落ち着くだろう。
 
ただし、最初の発表時は緊急だったので、準備や根回しも間に合っていない状況がありありで、東電としても「できれば停電回避しなくちゃ」という焦りがあったのかもしれない。その焦りが二転三転のふらつき対応を招いたのだろうと私は推察している。
 
追記:
内閣府が3月23日の発表した「東北地方太平洋沖地震のマクロ経済的影響の分析」は以下のサイト
 
 

連休中なので日経ビジネスオンラインはEメール配信はしていませんが、こういう情勢下なので震災、原発、円高などの特集記事を連休中も更新しています。編集者さんから「円高について緊急に書いてもらえないか」と依頼されたので、手短に書きました。昨晩(日曜日)から掲載されています。
 
内容は既に私が著書で何度か書いてきたことと同じですが、弊著をお読みでない方々にはご参考になると思います。
 
外国為替相場情報を含む竹中正治ホームページはこちら
 
追記:
一点修正的な追記をしますと、本日3月21日の日経新聞で今回の震災による地震保険の支払総額が損保業界全体で1兆円規模になると報じられています。引用したゴールドマンサックスの試算よりも規模は大きくなるようですね。もちろん、本文で書いている通り、その金額相当が円買い・外貨売りになるというのは、全く見当外れの認識です。

私が銀行勤務時代の最後の2年間務めた(財)国際通貨研究所、行天豊雄理事長(元大蔵省財務官、元東銀会長)のインタビュー記事です(日経ビジネスオンライン、3月19日)
 
私のインタビューコメントは以下の記事で掲載されています。(日経ビジネスオンライン、3月17日付)
 
来週、円高について私の追加的な寄稿も、同じく日経ビジネスオンラインで掲載される予定です。
 
本日(日曜日)の日本経済新聞の書評欄に国際通貨研究所の西村陽造さん(経済調査部長)の著書
「幻想の東アジア通貨統合」の書評が掲載されました。評者はアジア開発銀行研究所長の河合正弘さんです。 西村さんは研究所の私の後任です。ご関心あれば是非ご購入ください。
 
 
 
 
 
 
 
 

以下のEメール文は、東電福島第2原発の所員(女性)から私の友人の栗原潤氏(ハーバード大学ケネディースクール、シニア・フェロー)に届いたものです。栗原氏からの今朝のメールで知りました。
書いたご本人がURLでの公開を許容されているので、全文を掲載致します。
名前は栗原氏のご判断で伏しています。
 
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今日の朝方 発電所から避難させられ福島の親戚の家で家族と合流しました。
とりあえず私は無事です。
 
お前だけは安全な所へ…と言われ泣きながら企業さんの車で発電所をあとにしました。
 
本当にこのような事になってしまい本当に申し訳ありません。
東電はすごく叩かれてる…
でも逃げずに命懸けで作業を続けてるのも東電です。
どうか非難しないで下さい。
 
私も東電の社員として福島第二原発の所員として昨日まで現場対応にも参加してました。
 
大津波警報で夜中の3時足元も見えないまま死ぬ覚悟で海の目の前での復旧作業…
冷却機能のある機械は海側のため津波でやられてしまいなんとか復旧しようとみんな必死でした。
みんな疲労と戦いながら足を引きずりながら作業にあたっていました。
冷却機能を復旧できなければ第二原発も第一原発のような爆発が起きていました。
それを防いで全号機冷温停止させたのも東電です。
発電所を見捨てて逃げればこんな状況では済まされません。
逃げずに立ち向か っているんです。
津波の影響は想像を遥かに超えていました。
地震だけであれば第一原発の爆発も起きなかったんです。
 
みんな自分の命を顧みず 停止する作業に全うしてます。
多々噂があるけど避難勧告の圏外にいれば健康に影響ある程浴びる可能性は低いです。
 
健康に影響がある程浴びるのは発電所で頑張ってる作業員のみんなです。
殆ど寝ず食わずで現場に行っています。
噂に左右されず 避難勧告圏外へ避難して外気になるべく触れないようにして下さい。
 
彼氏は今もずっと発電所で夜勤を続けてます。
今はただ皆の安全を祈るしかできない…。
一番怖いのは発電所で作業している皆です。
逃げずにそれに立ち向かっているのは東電と関係企業さんです。
 
家族との連絡がつかない人もたくさんいるけど現場へ向かい作業をしてます。
 
それだけは忘れないで下さい。
一人でも多くの人に知って欲しい。
悪用防止の為コピーではなくURL公開して下さい。
発電所のみんなは逃げずに今も戦っています。
住民の 皆様には不安な思いをさせて大変申し訳なく思っています。
誹謗中傷 覚悟の上で名前も載せます。
皆を守る為自分の命と引き換えに今も作業をしている人がいます。
 
こんな状況ですが 自分の命を顧みず立ち向かっているみんなを見て
一緒に復旧作業に当たることができて 東電社員であること 福島第二原発所員であることを誇りに思います。
 
東京電力
福島第二原子力発電所
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Last Defense at Troubled Reactors: 50 Japanese Workers
 
kimさんがコメント欄で紹介してくれたNY TIMESの記事です。同様の記事はCNNでも報道されたようです。
福島原発事故の貴社会見では、報道陣が会社側の報告者をつるし上げるような質問や発言を繰り返しているのにうんざりしました。攻撃的な質問をすることで正義の使者にでもなっているつもりなんだろうか。
 
現場の社員は不眠不休で奮戦しているのだと思う。どうしてそれを報道するのが外国のメディアであって、日本のメディアにはそれがないんだ。<`ヘ´>
 
これほどの危機時なのに東電社長の存在感が全然伝わってこないのも、不満だ。
謝罪をしろと言っているのではない。枝野官房長官ばかりが聞き伝えで説明を繰り返しているが、東電の社長が直接繰り返し説明してくれてもいいじゃないか。 
やはり株式会社とは言え、地域独占の親方日の丸企業の体質だろうか。
 
頼みの綱は、現場で賢明な対処をしている社員諸兄だ。頑張ってください。原発と日本の未来はあなた方の肩にかかっている。
 

TVの報道を無為に見ているばかりではどうしようもないので、とりあえず義援金を寄付しようと思って、日本赤十字社の以下のサイトから寄付しました。
 
日本赤十字社 (←クリックでサイトにとびます)
今般の東北関東大震災により被災をされた方々、ご家族の皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。
日本赤十字社では、現在、被災地に救護班を派遣するなど、総力をあげて救護活動に取り組んでおります。
〈義援金について〉
このたび東北関東大震災の専用口座を開設いたしました。
 
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2005年にアメリカ南部諸州がハリケーンカタリーナで空前の被害となった時、私はワシントンDCに駐在していたが、アメリカ人の寄付文化の大きさ・強さが印象的だった。アメリカ人は税金(特に連邦税)を払うのが嫌いだという点では(好きな国民はいないが)、先進国の中でもずば抜けている。
 
だから選挙のたびに税金(増税か減税か)が大争点になるのだが、一方で彼らには政府には頼らずに「自分らでなんとかしよう」とする文化というか、草の根的な価値観がある。だから災害が起こるとdonationが殺到する。一般庶民から芸能人、政治家、「ウォールストリートの強欲な連中」までが続々と寄付をする。
 
ただ世の中には悪い奴らもいるから、寄付金の詐欺サイトとかも出回る。だからちゃんと名の知れた、間違いのない組織から募金する必要がある。日本でも同様の詐欺サイトは今回出てくるかもしれない。その点、日本赤十字社なら間違いはあるまい。もっとも有名義援団体を詐称したサイトもありえるので、ご注意頂きたい。
 
アメリカのエコノミスト会合(Conference of Business Economists)のメンバーに今週の月曜日の朝、地震&津波の被害についてブリーフィングをかねて手短なコメントをEメールで送ったら、ずいぶんと沢山、支援・励ましの返事が返ってきた。 
“Our thoughts are very much with you, and with the Japanese people.”
こういう表現が一番多い。ここはとりあえず素直に「じ~ん」と感じておこうか。
 

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