たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2012年04月

Incognito, The Secret Lives of the Brain 「意識は傍観者である」デイビッド・イーグルマン著、早川書房
(↑アマゾンに書いたレビュー、よろしければ「参考になった」をクリックしてください)
 
日本語のタイトル「意識は傍観者である」は、あまり適切ではない。読めばわかるが、人間の意識は自分自身を本当に理解しているわけではないが、傍観者以上の役割も果たしているからだ。
 
著者は大学で認知行動学研修室を主宰する神経科学者だ。原題のIncognitoはイタリア語で「匿名者」あるいは「匿名の」の意味。私が編集者なら「私の中の他人」とかの日本語タイトルにするだろう。

要するに私達の意識は多くの場合は自分自身の本当の動機を理解しているわけではなく、それは無意識のプロセスの結果であり、自分の中に正体不明の他人(匿名者)が存在しているようなものだという意味だ。

一番興味深かったのは第5章「脳はライバルからなるチーム」だ。脳は無数のサブルーチン(サブエージェント)が行動という出力チャンネルを求めて競争し合う議会のようなものだと例えられる。したがってある意味では葛藤こそが人間の脳の本質だということになる。

ただし大きく分けると(2大政党制のように)理性的意識的ネットワーク(認知的、体系的、明示的、分析的、内省的)と感情的ネットワーク(自動的、潜在的、発見的、直感的、全体的、反作用的、衝動的)に分かれ、葛藤、競合する。

現代社会では前者の方が評価される優位があるように思えるが、おそらく前者だけでは行動の決断力に欠ける結果になるのではなかろうか。合理的な判断も感情的な衝動をばねにしないとできない・・・そういうあざなえる縄のような関係にあるのではないかと思う(これは著者が明示的に語っていることではない)。

そうした脳の構造の中で意識にはどういう機能があるのか?仮説として意識はこうした葛藤し合う無数の無意識下のサブシステムを制御、そして制御を分配するために存在する。要するに意識は大会社のCEOのようなものだ。

意識は新しい環境で新しい行動パターンを組織しなければならない時に出番となり、機能する。環境への行動パターンの適応が進むにつれて、行動は自動化が進み、意識は直接関与しなくなる。これは私達が、運動でも知的な学習でも必ず繰り返すことだ。この無数のサブシステムを必要に応じて再編成する知的柔軟性こそが意識の役割であり、それがもたらす環境適応上の優位性こそが人類史において意識が進化してきた理由だと考えられる。

ふ~ん、なるほど。しかし同じ人類でも意識の機能度、つまりそれがもたらす知的柔軟性の個人差は大きいようだね。自分が慣れた環境の中で、周囲の人達と同じことだけを繰り返して済ませたいという生活をしている方々も多いからね。
 
竹中正治HP
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「タックスヘイブンの闇」(Treasure Island, Tax Havens and the Men Who stole the World)(朝日新聞出版2012年2月)を読んだ。(↑本のタイトル・クリックでアマゾンに飛びます。例によってアマゾンにレビュー書いています。レビューご覧になった方、よろしければ「参考になった」クリックお願い致します。)
 
著者はニコラス・シャクソンというFTのジャーナリスト。

犯罪マネー、汚職マネー、脱税マネー、節税マネーなど黒からグレーまでのありとあらゆるマネーがタックスヘイブンの守秘義務を隠れ蓑に流れ込んでいることを語っている。守秘義務というよりは、タックスヘイブンは設立法人の情報をほとんど求めないことにより、ダークサイドのマネーにとって「そもそも情報がないことによる究極の守秘法域」を提供しているという。

先進国や国際機関からの途上国への援助資金も、ざるで水を汲むようなもので、必要な活動に投じられるのは一部に過ぎず、残りは腐敗官僚、政治家に着服されて国外に流出し、そのルートにタックスヘイブンがなっている。
 
ロンドンやウォールストリートの金融業界は、規制が極めて緩く、金融資本にとってやりたい放題のタックス・ヘイブンのネットワークを隠れ蓑に使って、ブラックマネー、グレーマネーの流れに手を貸し、自らもそこに各種のペーパーカンパニー(SPAなど)を作り、やりたい放題やってると批判する。
 
中央銀行(Bank of Englandが特に批判されている)や先進国の金融監督当局も、この国際金融のダームサイドに対して目をつぶったり、あるいは「ロンドンの国際金融ビジネスでの優位を維持するため」に積極的に関与知らしてきたと言う。
 
タックスヘイブンは独立国、あるいは自治領であったりして、外国政府や金融監督当局は直接関与できないというのは、実は虚構で、金融資本は国内の政治家と結託して背後で影響力を行使し、タックスヘイブンを使い勝手が良いように支配しているとも語っている。
米国ではデラウエア州が事実上の「国内タックスヘイブン」になっているとして1章があてられている。

金融に関する著者の見解には、いくつか的外れな個所もあるが、莫大な取材と文献調査を積み重ねていることは読めばわかる。 著者は思想的には左派であるが、現在の国際マネーフローのダークサイドを指摘する内容は一読に値する。私も本書を読んで、金融ビジネスの透明化のためにタックスヘイブンに対する国際ルールの強化が必要だと感じた。
 
竹中正治HP
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なんだか今日4月21日の日経新聞記事は妙にコメントしたくなる記事が3件、以下の通り。
 
1、日本の大学教育
アメリカの高等教育も様々な問題をかかえており、理想視する気は毛頭ないが、日本の現状に対する指摘としては妥当だと思う。

引用:
... 「在日米国商工会議所のブライアン・ノートン氏は「日本企業の競争力低下の原因は人材、特に文系人材の劣化だ。その責任は大学にある」と言い切る。 「米国の大学は論理的な思考力や分析力を徹底的に鍛えるが、日本では塾のように知識を教えるだけ。グローバルビジネスに最も必要な能力を学ばせていない」と日本の文系教育を批判する。」

「考える知的技法」これを伝えたいと思って私は教壇に立つ。簡単じゃないけどね。
 
アメリカの大学についてもコメントすると、たとえば経営学、経営のための「知的技法」がマニュアル化されていて、それを身につけると皆ステレオタイプのソリューションを生む出すようになる。 オリジナルな発想を生み出す知的技法というのは、結局学生が受動的な講義では教えることはできない。自分でつかみとるしかないんだ。それができるようになる諸君は少数。
 
2、尖閣諸島
引用:
「民主党の前原誠司政調会長は20日、都内で講演し東京都の石原慎太郎知事が沖縄県の尖閣諸島(石垣市)を都の予算で買い取る意向を示したことに関して「もし買うのであれば、国が買って実効支配を続けないといけない」と語った。「東京都が所有するのは筋違いだ」とも指摘した」

「国が買うならそれでいいよ、さっさとやりな」というのが石原さんの腹の内ではなかろうか。
一方、前原さんは、石原さんの術中に落ちた様に見せながら、実は自分でもそうすべきだと考えていたことを実現しようとしているのかもしれない。 もっとも民主党政権が契約時まで存続できるかは別の話だが。
 
3、ワシントンポストが
引用:
「米紙ワシントン・ポスト(電子版)は19日、野田佳彦首相へのインタビューに関連した「日本は難しい決断ができるか」と題した記事で、首相を「ここ数年のリーダーで最も賢明だ」と評価した。」
 
「野田首相はここ数年のリーダーで最も賢明だ」=「小泉首相の後はダメ&バカ首相ばかりだった。野田はマシな方」
ま、上品な新聞としては左の表現になりますね。夕刊フジ調なら右の表現
 
 
竹中正治HP
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日本の人口動態と経済成長のテーマで単発の講義をする準備をしているときに見つけた人口動態に関するすぐれサイトをみつけた。facebookではすでに紹介したが、ブログでも紹介しておこう(以下)。
 
 
1950年から2010年までの過去データと現在と2050年までのシミュレーションが、人口構成グラフの変化で一望できる。これを学生に見せて説明しながら、自分自身「日本の少子高齢化プロセスはまだ6合目、クライマックスは2040年」という事実を再認識した。
 
たとえば、85歳以上人口は2010年では400万人だが、2040年には1000万人を超える。しかも自分自身が(現在55歳)そのひとりになるという事実に(当然のことなんだが)衝撃をうけた。
 
2040年の人口ピラミッドを1950年のそれに比べると完全に逆ピラミッド状態になっている。日本が直面している長期経済・社会・政治問題で、これ以上に重大な問題はないだろう。
 
老齢年金は、インフレで実質減額になるか、あるいは名目で削減されるか、どちらになるかわからないが、実質大幅減額は不可避と覚悟するのが、私と同世代前後かそれより若い世代の前提になるだろう。
 
問題は今からの制度改革で、負担と給付の21世紀の世代間格差(このままだと途方もなく拡大してゆく)をどこまで縮小できるか? じいさん、ばあさんの有権者人口は増え続けるから、医療も公的年金も給付削減の制度変更はますます政治的には難しくなる。
 
この制度改革を政争の材料にしている限り、改革は無理だろう。超党派で「年金・医療の制度改革を争点にしない」という合意の上に、改革案をつくって具体化する必要があるが、その合意ができそうにない。
 
そうすると、やはり最後の最後はインフレ、円安でしょうか??? 政治ができなければ、市場が暴力的に調整するってプロセスですね。「インフレと円安でいいじゃないか」と思う人もいるだろうが、大津波のような円安、インフレで大勢溺れるぞ。 私は溺れるひとりにはなりたくないので、さっさと高台に避難しますけどね。
 
竹中正治HP
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昨日報道された経団連のシンクタンク、21世紀政策研究所の調査・提言レポート:
グローバルJapan

メディアは「このままだと2050年に一人当たり実質GDPで韓国に抜かれる」と悲観的にセンセーショナルな面を報道しているが、実は日本の一人当たりGDPは2010年の20位から18位に上昇する。
また、それは4つある未来シュミレーションのひとつに過ぎない。
さらに韓国が想定された成長を維持できるかどうかもわからない。

日本の繁栄を長期に維持するため政策を提言した「希望の提言書」なんだが、日本のメディアってほんとにいつも悲観的なバイアスで報道する・・・・バカみたいだ。

以下サイトでレポート読めます。
実は私も本レポートの「有識者ヒアリング」で招聘され、一回プレゼンさせて頂きました(^^)v

http://www.21ppi.org/ 研究所サイト
 
竹中正治HP
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前回ご質問を頂いたこの問題について書いておこうか。これまでの著作ではほとんど書いていないテーマだ。というのは、私の頭の中では解決、完了済の問題であり、あまり書く気になれなかったからだ。
 
私が初めてチャート手法にふれたのは1982年頃だ。ちょうど銀行(東京銀行)で外国為替のディーリング業務に関わり始めたばかりの頃だ。当時の外為ディーラーの間でもチャート手法は、比較的新しく利用され始めたもので、「過去のデータだけから将来の相場変動の手掛かりが得られる」という点で強く惹かれる人と、うさんくさく感じる人に分かれた。
 
もっとも日本におけるチャート手法は江戸時代の米相場の時代に遡るから、当時の外為ディーラーはそうした過去の手法を再発見、再導入したと言うべきだろう。
 
ちなみに当時の銀行の為替資金部為替課の課長で入行3年目の私の上司だった方は、チャートにどんどんはまっていき、年数を経るにつれて「この世の森羅万象はチャートで読み解ける」風の一種の神秘主義に傾倒してしまった。 この方というのは、外為相場の世界で名の知れた若林栄四さんである。
 
チャート・アプローチが有効かどうかは、過去のデータが将来の価格変動に関する情報を含んでいるかどうか、という問題である。将来情報を含んでいるなら、なんらかの手法でそれを抽出することもできるだろう。
 
この問題に対する検証は、概ね2つの手法で過去検証されてきた。
 
ひとつは実際に使われているチャート手法で過去データに基づいて売買すると市場リターンを上回るリターンをあげることができるかどうかをコンピューターで検証することだ。これについてはマルキールの「ランダム・ウォーカー」の中で語られているが、売買コストも勘案した上で市場の平均リターンを超えるチャート手法は発見も発明もされていないという。
 
こうしたコンピューターを使ったチャート売買シミュレーションは、実際の場合よりも過大評価された結果をもたらすと考えられる。というのは、例えば特定の水準(買いシグナルが出る水準)を相場が超えたら「買う」という操作をするわけだが、シミュレーションではその指定した水準で買えることを普通想定する。
 
しかし実際には、皆が共有しているような買いシグナル・ポイントは、そこに達すると相場の変化が不連続になってしまうことが多いので、指定した水準よりある程度高い水準でしか買えない。売るときはその逆になる。なんでそうなるかは、察しがつくだろう。
 
買いシグナルのポイントであることを皆が共有しているので、売りがひき、買だけが殺到するからだ。 そのように過大評価されている可能性のあるシミュレーション結果でも、超過リターンを安定的に得ることはできないのだ。
もちろん、特定の期間、チャート手法が市場平均を超えることはある。問題は長期にわたって超えるかどうかである。
 
第2の検証法は、相場変動の時系列データがある時点を起点にして前と後とで相関関係があるかどうかを検証する手法だ。例えば、過去3日相場の上昇が続いた後、4日目も相場が上昇する確率が50%よりも高ければ、過去3日の変動と4日目の変動には、多少なりとも正の相関関係があると言えることになる。
 
逆にもし50%以下なら負の相関となる。ちょうど50%ならば、コイン投げと同じで相場の動きはランダムということになる。ランダムなら予測不能だから、過去のデータは将来の変動の情報を含んでいないということになり、つまりチャート手法も否定される。
 
この検証結果はちょっと微妙である。様々なタイムスパンで検証された結果、相場の動きは完全にはランダムではないことが分かっている。つまり時系列のデータから多少なりとも相関関係が観測されるのだ。この点は1月に「複雑で単純な世界」の書評で書いたテーマでもある。
 
ただし観測される相関関係は決して安定的ではないようだ。相場はほぼランダムと思われる局面と、自己相関が生じて上げトレンドや下げトレンドが持続する局面とに分かれると同著は語っている。ただしひとつのトレンドが何時終わるのか、あるいはいつトレンドが始まるのか、何らかの予兆でそれを事前に知ることができるか、そうした問題については「まだ研究中」ということで確かなことは言えない。
 
要するに相場のトレンドはある程度は存在するようだが、その始まりと終わりを過去のデータから予測することはできていない。
 
そもそも、儲かるチャートなどがあるとしたら、そんなもの公表したり、売ったりするだろうか?そんなものがあれば発明者が自分ひとりで儲けるはずだろう。 仮に有効なチャート手法があったとしても、チャートシグナルが多くの人と共有されることによって、その有効性は失われるからだ。  
 
昔の上司だった若林さんは講演会などでは、「私の秘蔵する門外不出の罫線によると・・・」というようなことを言うらしいが、まあ、「皆の知らない秘密を自分は知っている」かのように示唆することで人を惹きつけようとする古典的な幻惑商法に過ぎない。
 
それでは私はチャートを全く見ないかというと、そうではない。もし再び短期ディーリングの実務を担当するようになったら(そんな気はないが)、私は再びチャートを見るようになるだろう。なぜか、チャートのシグナルを多くの人が信じて売買することによって、シグナルが自己実現する局面と、自己否定(だまし)になる局面を、現実の相場の短期変動は繰り返すからだ。
 
短期売買では、人々が何を信じて売買しているかという情報は重要だ。そうした情報に接して一瞬早く動くことで僅かな利益機会が生じ、それを蓄積するのが仕事なんだからね。
 
まあ、もっとも近年はそうした超短期売買はアルゴリズム・トレーディングでコンピューターがミリセカンドの時間単位でやっているから、人間が同じことをやって勝てるはずもないけどね。
 
チャートについてはだいたい、こんなところでいいかな。
 
竹中正治HP
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2月から始めた週刊エコノミストでの「賢い資産運用」の連載が、為替相場編に入った。
次数が制約されるので、説明し切れない点がいろいろ残るのだが、金利と為替相場の変化について、ここで補足しておこう。
 
長期では日米間で10年物国債の利回りで計った金利格差とドル円相場の変化が良く一致することは著作のなかで繰り返し強調してきた。つまり、ドル金利が円金利より高い分だけ、ドル相場は円に対して下落する。これは金利平価原理が、少なくとも日米間では長期のタイムスパンで成り立っていることを示している。
 
一方、短期、中期では米国の景況感が良くなってドル金利が上昇する(金利格差が拡大する)期待が強まるとドル相場も上昇する効果が働く。 高金利通貨に投資すれば高いリターンが得られるという誤解は、この短期、中期の相場の動きから、「だから高金利通貨の相場は上昇する」という発想で生じるようだ。
 
これは2重の誤解である。ひとつは短期、中期の傾向と長期の傾向を混乱していること。もうひとつは、金利差が拡大するという予想(たとえばドル金利が上がるという予想)が織り込まれる過程においてのみ為替相場は変化する(ドル高になる)ということだ。
 
従って、いったん金利格差が広がって為替相場が変化した後からドルを買っても、その後は他の条件が変わらなければ、ドル相場は金利平価原理に従って金利差分だけ長期には下落するだけだ。
 
これは株式市場で株価が上がる情報が伝わる過程においてのみ、株価は上がるのであって、その情報が株価に反映されてしまってから買っても、投資リターンは上がらないのと同じだ。
 
さらに補足するとドル金利が上昇して金利格差が拡大する場合にも二通りあることを指摘しておこうか。
 
1、ドル相場やインフレ率に関する市場参加者の長期の予測に変化がない場合:
目先のドル金利の上昇(あるいはその期待)は現在のドル相場を上昇させる。将来のドル相場の市場の予測水準は変わらない。 単純化すると以下のようになる。
 
{現在のドル相場(P)-将来のドル相場の予想(F)} 
                 ← ドル相場の変化率(年率)=ドル金利-円金利
 
上記の場合はFは不変なので、ドル金利の上昇分だけPが上がることになる。
 
2、将来のドル相場の予想が、米国の期待インフレ率の上昇で、低下する場合:
この場合は期待インフレ率の上昇に見合ったドル金利の上昇とFの下落が起こる。つまり金利格差の拡大は、1の場合と違ってPの上昇ではなく、Fの下落で調整される。目先のドル相場は上昇しないということだ。
 
以上の理解が正しいとすると、名目金利格差の変動と直物ドル相場の変動の間には長期では相関関係が見られないことになる。金利格差の変化が将来期待不変の場合と将来期待が変化する場合で直物ドル相場の変化がまるで違ってくるからだ。実際、長期のデータでみると名目金利格差とドル相場の変化の相関関係は極めて不安定で、相関係数は正にも負にもなる。
 
もっとも現在のドル相場は誰もが目にできるが、「将来のドル相場の期待値」は市場参加者の予想の一種の平均値として存在しているはずだ、と言うことができるだけで、明示的に確認することが困難だ。そこに金利平価原理の作用を事前に(つまり将来のドル相場の期待値を変数にして)検証することの困難性がある。事後として私達は知るばかり、まあ、世の中万事そういうものだ。 
 
合点して頂けたでしょうか。
 
竹中正治HP
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知人が年金について窓口で聞いてきたことをfacebookで書いていたことが気になって調べた。
 
民間サラリーマンの多くが加入している厚生年金制度では支給年齢に達しても、厚生年金制度に加盟している企業に勤務して給与所得があると、給与所得に応じて支給額が削減される仕組みになっている。これは「在職老齢年金」と呼ばれている。ある意味では所得のある人には支給額が大幅削減される「掛け捨て年金」とも言える。
 
日本年金機構のホームページの説明に従って、ポイントを示そう。
 
1、60歳から65歳までの場合:
http://www.nenkin.go.jp/n/www/service/detail.jsp?id=3238 (←なぜか年金機構のサイトへのアクセストラブルが4月2日から続いています)
 
例として総報酬月額相当額が46万円以上ある場合を計算してみよう。
基本月額50万円、総報酬月額相当額70万円(年間賞与240万円)、
年間総給与所得840万円(=70×12)という想定だと、以下の計算式が適用される。
 
年金支給月額=基本月額-{46万円÷2+(総報酬額相当額-46万円)}
3万円=50-{46/2+(70-46)}
 
ええええっ!?たったの3万円! ははは、働く者がバカみたい((+_+))。
 
総報酬月額相当額とは、「現時点の標準報酬月額」と「その月以前1年間に受けた賞与総額の12分の1」の合計額と定義されている。
 
2、65歳以降の場合
 
上記と同じ給与所得があると以下の計算式が適用される。
年金支給月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-46万円)/2
13万円=50-(50+70-46)/2
 
たったの13万円である。
 
ただし、ポイント(盲点)は減額対象になる所得とは同じ厚生年金制度に加盟している企業からの給与所得に限定されることだ。別の年金制度、例えば共済制度に加盟している法人からの給与所得は削減の対象にならない。その他の所得、例えば配当、利子、賃料収入なども対象にならないはず。
 
私の場合は銀行を52歳で退職し、私立大学に転職したケース、私立大学は私立大学共済年金だから、この給与は減額の対象にならずに頂ける。やったね! 転職する時はこんなこと知らなかったが、結果ラッキー(^^)v
 
というわけで、60歳過ぎても働く方は年金で割食わない転職先を考えましょう。
ただしこれも「現行制度」に過ぎない。年金財政が長期的にひっ迫するのは目に見えているから、将来は「全ての所得を対象に年金削減」なんて「改革案」も登場するかもしれない。
 
 
追伸:最近はfacebookでの活動を活発化しております。
本ブログのリピーターの方々、facebookで私の名前で検索して頂き、「友達承認リクエスト」を送信して頂ければ、繋がらせて頂きます。
 
追加情報:
1、社会保険労務士・年金コンサルタントのサイト
引用:「働いている場合であっても、厚生年金に加入しない範囲の働き方であれば、在職老齢年金に該当しませんので、年金は受給できます」    (^^)v
   
2、高年齢雇用継続給付との併給調整について、別の年金コンサルタントのサイト
引用:「高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の両方を受けることとなった場合、
更なる支給調整が行われるのです。これを、併給調整と言います
。」
 
高年齢雇用継続給付については以下サイト参照
 
3、雇用保険と年金の併給調整について、厚生労働省サイトの説明
 
本件については以上で概ね基礎情報をカバーできた気がする。
ああ、年金について一気に勉強した。
年金制度については今までマクロ的な観点でしか考えていなかったが、「私の場合はいくら、いつからもらえるの?」というミクロ情報のお勉強でした。 
 

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