たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2012年10月

本日10月31日の日本経済新聞「経済教室」での西垣通教授(東大)の論考は、示唆的で面白い。
集合的な知性が生じるか、生じるならなぜ生じるかを論じている。

引用: 「いまスタジオに100人の視聴者代表がいて、(1)4択問題の正解を知っている者が10人、(2)2つの選択肢に絞り込める者が25人、(3)3つの選択肢に絞り込める者が25人、(4)全然見当がつかない者が40人――の4グループに分けられるとしよう。このとき、アンケートをとると、正解を選ぶ者は平均で約41人と計算できる。

一方、誤った3選択肢については、選ぶ者はいずれも平均で20人弱にすぎないので、集団平均としてはほぼ間違いなく正解が選ばれる。つまり、正解が分かる者はたった1割、全然分からない者が4割に及ぶ素人集団でも、「集合知」としては見事に正解を答えてしまうのだ。(ただし) これはいわゆるランダム選択の仮定に基づいている」

***

最後の前提条件が大切だ。各自の選択は独立していて相互に影響を受けないという想定。しかし、これはむしろ現実には稀なケースだろう。

実際は人間は相互に影響し合う。特に資産価格の相場などについては、ケインズの美人投票の例が示すように多数派の選択がどれになるかを推測して、積極的にそれに追随しようとする。
そうすると、その選択が本当に妥当かどうかは二の次になる。こうして資産バブルやその崩壊が生じる。集団的愚性の実現だ。

また、西垣教授の例は、回答者の選択からは独立して客観的な正答がある場合にしか適用できないことも言い添えておこおうか。 ところが私達の直面する問題、特に経済問題には多数が選択して行動すると、とりあえずはその判断が自己実現してしまう構造になっている。つまり多数が景気は悪くなると予想して行動すると消費と投資は減少し、景気は悪くなる。つまり選択から独立した正答がない。
 
経済や政治的な問題でも集団への付和雷同はいつでも起こる。 「2チャンネル」とかたまに覗くと、集団的愚性の不毛でダークなエネルギーの噴出にぞっとすることも多い(-_-;)
 
集合的知性の実現の条件というのは、なかなか難しいね。
 
追記:
集合的知性については、弊著「なぜ人は市場に踊らされるのか?」日本経済新聞出版社、2010年の中で、「アリ・モデル」を例にして私も議論したことがある。ご関心ある方は以下どうぞご覧ください。
 
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中国の権力闘争、暗闘が続く

中国の共産党幹部、首脳部が不正巨額蓄財をしていることは、公然の秘密だろうが、反対派が西側メディアにリークするというのは、今までなかった展開だと思う。それだけ権力闘争が熾烈化しているのかもしれないし、外部へのリークが押さえ難くなっているのかもしれない。
 
10月27日の日経新聞記事:
「25日には保守派グループが温家宝首相の汚職を糾弾する文書を広め、26日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、温首相の親族が巨額な資産を保有していると報じた。薄熙来・前重慶市共産党委員会書記に批判的だった温首相を狙い撃ちし、薄氏の支持者が情報を提供したとの見方が浮上している。
 
 『温首相の妻、子ども、兄弟など親せきは、合計で27億ドル(約2150億円)に上る資産を管理する』。タイムズ紙は記事でこう指摘した。」
 
これではトップがいくら「汚職摘発」を唱えても、「あんたが一番甘い汁を吸っているのね」ということになる。政治権力と経済権力がこれほど露骨に「一党独裁」されている社会、Kマルクスが蘇ってこれを見たらなんと評するだろうか。 彼の思想が生み出した変化の末裔とは思えないだろうな。
 
NY Timesのオリジナル記事は以下:
追記1:
この声明、中国の国民は信じるんだろうか?

温首相の親族、隠し資産を否定

2012/10/30付 ニュースソース 日本経済新聞 朝刊
 【北京=森安健】中国の温家宝首相の親族は29日までに弁護士事務所を通じ声明を発表し「隠し資産はない」と強調した。米紙ニューヨーク・タイムズが同一族が合計で27億ドル(約2150億円)の資産を保有すると報じたことに反論するもので、同紙に対する法的措置も示唆した。首相の90歳の母が1億2千万ドル分の株式を保有するとの指摘に対しては「給与と年金以外の収入や財産はない」と主張した。
 
追記2:
中国、55%が貯蓄ゼロの極貧状態 反日の背後に「仇富と仇官」 (1/3ページ)
 
追記3:
中国共産党の腐敗構造
 
 
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なぜか金融業界を志望する学生諸君は多い。
先日、大学のキャリアセンターの依頼で金融業界志望の3年生を集めて、「金融業界へのイントロダクション」という特別講義をしたんだが、言い忘れたことがあったので、このブログにて・・・・

「ナニワ金融道」は金融業界志望者の必読書だ。

学生と某先生の架空対談:

「先生、ボクはサラ金なんかじゃなくて、立派な銀行に就職したいんですけど」
「バータレ、金融の極意はサラ金もメガバンクも同じだ」

「でででも、ボクはお金を貸して感謝されるような仕事がしたいんですけど」
「バータレ、貸すだけならサルでもできる。金貸しは利息を付けて返済いさせてなんぼじゃ」

「金融って怖い世界なんですか?」
「金融業界の営業マンの極意は『笑うセールスマン』(藤子不二雄)だ。
ニコニコ顔で営業し、『***だけは気を付けてくださいね』と釘を刺し、
『お客さん・・・・やっちゃいましたね・・・・ドッカーン』と落とし前をつけさせる」

「先生、ボクの兄は**大学を卒業したエリートで、**メガバンクに務めているんですけど、まじめで優しくって、とてもそういう感じじゃないんですけど」
「そんな奴ばかり多いから、日本の銀行はへたっているんだ」
 
おわり

 
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既にfacebookで掲載したことだが、昨日10月17日の日本経済新聞、第1面の記事、強い違和感を感じた。
 
「株取引、7年ぶり低水準 世界でリスク回避
7~9月、債券にマネー流出」

http://www.nikkei.com/paper/article/?b=20121017&ng=DGKDASGD0205H_W2A011C1MM8000

引用:「株式取引が世界で減少している。2012年7~9月の売買代金は約7年ぶりの低水準に落ち込んだ。景気の先行きが不透明になるなか投資家が価格変動リスクを極端に恐れ、株式から債券などに資産を振り向けている。欧米での規制強化の流れも逆風だ。株式市場の活力低下が続くと、企業への成長マネーの供給が滞りかねない」

株式市場の売買出来高は手数料で稼いでいる証券会社には生命線だろうが、そんなこと長期投資家には関係ない。出来高が減れば多少流動性も減る
かもしれないが、やはり長期投資家には問題にならない。

むしろ人工知能を使ったflash tradingでマイクロ秒の単位の超高速回転で売買が増えていたことの方に違和感を感じる。
おそらく、記者は株式売買出来高が減っているというデータに反応して、証券会社の人達中心にインタビューして、彼らの視点をうのみにして書いているんだろう。三流メディアの記事ならそれでもいいだろうが、日経新聞の第1面記事としては、恥ずかしい(-_-;)

日本の株価は全体では相変わらず不冴えだが、S&P500は昨年末比15%上昇、DAXは25%上昇、世界の今年の株価の上昇は上出来だ。

長期投資家が債券にシフト? そういう方々が沢山いるのは事実だろうが、超金融緩和で歴史的な低利回りになっている長期債にこの局面でシフトしているなんて「負け組」のポートフォリオだ。その反対が正解だろう。
 
ちなみに海外の株価指数のリンクをはっておこう。
S&P500
 
DAX
 
FT
 
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日本人は金持ちか?
以下に添付したのは、引き受けた原稿テーマの材料につくった図表のひとつ。

横軸にひとり当たり名目GDP、縦軸にひとり当たり家計の金融純資産
元データがユーロ建てなので、単位はユーロ(円は1ユーロ=100円換算)
 
これで見ると、スイスを除くと日本の家計は米国とならぶ高い水準の金融資産保有
スイスが右上方に突出しているのは、世界のお金持ちが資産を移転して住んでいる国だからだろう。

でも、その割には日本で「リッチな実感がない」と言う人が多いのはなぜ?
10年後も日本は今の水準を維持できるの?
そういうことを語ろうと思う。
11月下旬のエコノミスト臨時増刊号でね。
 
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中国経済の変調について、facebookでは気になる報道を掲載、コメントしてきたが、まとめて以下に新しい順に3つ掲載しておく。
 
1、日本経済新聞、10月7日付朝刊、日曜日に考える
「中国、製品デフレの足音、国有企業、過剰投資のつけ」
引用:生産設備過剰は、リーマン・ショック後の景気刺激策で急拡大した建機業界に典型的に表れる。昨年後半に金融引き締めなど急ブレーキを踏んだ結果、コマツなど外資は前年比で売り上げ半減が続いている。
 
 ところが品質面で劣る中国メーカーの売上高はわずかだが、伸びている。単なる値引きにとどまらず、頭金を販売価格の1~2割に抑え込み、低利融資付きで押し込み販売を繰り広げている。なかには頭金ゼロも多いという。財務は悪化し、油圧ショベルで中国販売がコマツを抜いた三一重工の場合、6月末の借入金が約270億元(1元=12.4円)と年初比50%も増えている。未収金も年初比倍増だ。
 
 在庫の山をさばききれないのか、7月初めに3割の人員削減に踏み切ったと報じられている。建機に限らず人員整理は中国全土に広がり、反日デモ参加者の多くはこうした失業者だったもようだ。
国家トップの交代する共産党大会を11月に控え、富士通総研の柯隆主席研究員は「大胆な政策は採りきれない時期」と分析する。そのうえで、柯氏は「中国の過去10年は失われた10年と言われるようになる」と指摘する。温家宝首相が率いる国務院(政府)は国有化された企業群問題など「改革」にまったく手をつけてこなかったからだという。
 
 確かに、過剰生産設備を競って作った主役は国有企業。各地の共産党幹部が出世競争の実績作りのために、工場誘致に狂奔していたといわれる。市場メカニズムが働かなかったツケがいま、深くて長い停滞につながりかねない局面にきている。
 
コメント:
世界銀行が中国の高度成長は、固定資本形成(官民の建設や設備投資)への依存が高過ぎて、長期的に持続不可能である点を強調したレポートを出したのは、私がワシントンDCにいた2004年だったと思う。
当時、WDCのシンクタンクの中国経済をテーマにしたシンポジウムでも、フロアーから「中国の建設ブームはいつバブル崩壊するのか?」という率直過ぎる(?)質問を中国政府のスピーカーにぶつける人もいた。もちろん、中国のスピーカーは「全然バブルじゃない。必要な建設が行なわれているだけだ」と対応していた。

今年の中国経済はいよいよ大きな変調をきたし始めたと思う。あらゆるバブルは時間をかけて成長し、ゆっくりと腐り始め、そして急激に崩壊する。柯氏は過去10年が失われた10年になると言っているが、逆だろう。これから待ち受けていることが「失われた10年」ではなかろうか。

多党制の民主主義政体ならば、経済成長が失速、頓挫しても、政権が交代するだけで、社会的な暴動や内乱、分裂になることは普通ないが(せいぜいゼネストがせきのやまか)、旧ソ連邦の例を始め独裁的な政体(個人独裁か一党独裁か違いは多少ありますが)の下では、経済的な失速、頓挫が暴力的な政変にもなりかねない・・・というのが大きなリスク。
 
そのリスクを最も恐れているのが中国共産党の幹部達でしょうね。 彼らが私財を海外に移転するのもよくわかる。
追記:10月16日WSJ記事
A Wall Street Journal analysis of that data suggests that in the 12 months through September, about $225
billion flowed out of China, equivalent to about 3% of the nation's economic output last year.
1年間で20兆円の流出、この推計が正しければ凄い規模だね。
 
2、SankeiBiz 9月28日
「闇金融」破綻に中国動揺 経済低迷で不良債権急増「すべてはペテンだった」
 
引用:「仏銀大手ソシエテジェネラルによると、中国の闇金融の規模は推定で2兆4000億ドル(約186兆円)に上り、中国の正規金融融資市場の約3分の1に上るとみられる。ソシエテジェネラル(香港)のアナリスト、ヤオ・ウェイ氏は、中国の闇金融のデフォルトが最大2兆元(約25兆円)に達すると試算している」
 
コメント:
中国の「国家資本主義モデル」
国有銀行は政府が直接コントロールできるとしても、闇金金融はコントロールの外、一種のシャドーバンキング部門だ。それが過去20年間の「改革開放政策」のもとで膨張してているらしい。それが崩壊すると・・・・テイクノートしておこう。
闇金は国有銀行から金を借りることはできないはずだから、その原資は個人から集めた金だろう。この推測、試算が概ね正しいか、あるいはそれ以上のデフォルト規模になれば、巨大なインパクトになる。
 
3、A Chinese Mega City Is On The Verge Of Bankruptcy
オリジナル記事:the South China Morning Post, which cites researchers at Sun Yat-sen
University, this city is now on the brink of bankruptcy.
 
コメント:上記記事、商業ビルや住宅を国有銀行からの借り入れで莫大に建設し、そのレントを財政収入にして、大判振る舞いしてきた市町村が、経済失速でレント収入の急減に直面し、財政赤字となり、返済不能になりつつあるという事例紹介。おそらく紹介事例は氷山の一角
 
開発依存型不動産バブルが大規模に崩壊しつつある・・・ある意味では典型的なバブル崩壊だが、途方もない展開になりそうな気がしてきた・・・・もしかすると「100年の一度のこと」がこれから先に待ち受けているのかもしれない(^_^;)

 
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