たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2013年02月

トムソン・ロイター社への月例の寄稿です。
本ブログをご覧の方には、すでにコアになるポイントはお話し済みですが。以下サイト、開いてください。
 
よろしければ、ロイター社のサイトで「おすすめ」クリックとかして頂けると嬉しいです。<(_ _)>
 
一部引用:「REITは、本来は短期的なキャピタルゲインよりも配当利回りを目的とした長期投資の手段だ。しかし、市況がミニバブル的な高騰をするならば、長期保有の投資家にとっても割高局面ではある程度売り抜くのが合理的な選択だろう。そこで、個別のREIT銘柄と市況水準全般の双方の割安・割高を見抜く簡便な方法をご紹介しよう。
 
 REITの収益構造は一般企業に比べるとはるかに単純だ。にもかかわらず、これだけのバブル的な高騰と暴落を招いてしまうということは、投資家サイドの集合的な合理性に致命的な欠陥があるということだろう。しかし、市場の非合理性は、冷静な眼を持つ長期投資家にとっては絶好のチャンスでもある。
 
投資家にとって気になるのは、目先どこまで割高方向に上昇するかだ。むろん、そんな予測は、地震の予知以上に原理的に困難である。それに、REIT価格のミニバブル的な高騰とその後の崩壊を経験した日本の投資家だけならば、投資家層の記憶力と学習能力がよほど貧困でないかぎり、07年のような割高水準までの高騰は期待しない方が良いだろうと筆者は考えていた。
 
ところが、この点で注目すべき変化が起こっているかもしれない。アジアでの新興REIT投資家層の登場だ。アジアではシンガポールのREIT指数であるSTREIT指数が12 年に45%(米ドルベース)上昇し、香港のハンセンREIT指数も36%上昇するなど、REIT市場の活況が日本より一足先に起こっている。
 
中国を含むアジアの新興投資家のマネーが日本でもREITの新たな買手に加われば(すでに流入しているのかもしれない)、「のど元過ぎれば熱さを忘れる」の例え通り、日本のREIT市場が再びミニバブル的な高騰を起こす可能性が高くなるだろう。割安圏でREITを購入できた投資家には、楽しみな局面となってきた。」
*****
 
竹中正治HP
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野口悠紀雄教授の「日本株は根拠なき熱狂」論
http://toyokeizai.net/articles/-/12895

さて、どうかな?・・・この方の議論。
「円安にもかかわらず輸出が伸びていない」というのが悲観的な見方の最大の根拠のようだが、今回の円安(過度な円高の修正)は昨年12月に始まったばかりだ。 

...
為替相場の変動が貿易収支に影響を与えるまでに最短で数カ月、効果がフルに出るまでに1~2年程度の時間がかかる事実は、経済学者、エコノミストの常識だと思っていたが、野口教授に限ってはそうではないようだ。

今の株価回復が期待先行であることは議論の余地がない。ただし、株価が期待先行で動き始めるのは、毎度のことだ。エコノミストが統計で実体経済の変化を確認できる頃には、株価はたっぷり上がっている(あるいは下がっている)ものだ。

半年後か1年後に再び野口説を検証してみようか。

引用:「円安だから輸出産業の利益が増加」というメカニズムは、いまの日本では働いていない。・・・・したがって、3月期決算における製造業の利益は、11年に比べて増収になるのではなく、減収になる可能性が高い。

日本の株価は低下していなければならない。株価が上昇しているのは、単に短期的な売買益だけが目的の投機的なものであり、グリーンスパンが言った「根拠なき熱狂」(IrrationalExuberance)だと考えざるをえない。」
***
 
追記:想像にすぎないが、野口教授は資産はすべて預貯金で持っている方かもしれない。そう考えると、この方がリフレ政策に大反対、大嫌いなのも合点がいくね。
また、2012年7-9月期までデータの出ている法人企業統計(財務省)によると、金融・保険を除く全産業の経常利益(2012年1月-9月)は前年同期比9%増加している。
 
追記その2(2月21日)本日の日経新聞記事、野口説と反対の情報として。
引用:「2013年12月期決算企業の連結経常利益は、前期に比べ16%増える見通しだ。グローバル展開する製造業を中心に、円安の効果に加えて、低迷していた欧州の販売が回復。北米やアジアでの販売も堅調に推移する。12月期決算企業の収益見通しは、3月期決算企業の来期予想の先行指標として注目されそうだ。
 3月期決算企業に比べ、3カ月早い12月期決算企業の収益見通しは、上場企業の約7割を占める3月期決算企業の先行指標といえる。4~5月に発表される3月期決算企業の14年3月期の収益見通しも増益基調となりそうだ。」
 
もっとも野口教授のこの点については以下のような予防線を張っている。
 引用:「3月期決算における製造業の利益は、11年に比べて増収になるのではなく、減収になる可能性が高い。円安になれば、そうでない場合に比べて輸出産業の利益が増えることは明らかだから、これまでの想定為替レートの下での利益見通しより現実の利益が増加することは明らかだ。しかし、それは、昨年に比べて今年の利益が増加するということではないのである。」
 
製造業の3月決算が全年度比でプラスになるか、どうかはまだわからないが。円安→増益の基調が続けば、いずれ2011年度の利益を越えるだろう。ことさら2013年3月の決算のみが前年度比で増えるか減るかにこだわる意味はない。
 
 
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弊著をご覧頂いている方々はおわかりでしょうが、私の投資方針は目先の方向性に賭けるのではなく、割安の時に買い下がり、割高の時は売り上がるだ。
 
目先の方向性に賭ける投資スタイルは不安定であり、効率が悪い。毎日業務で相場に貼りついているプロ・ディーラーならともかく、まともな本業のある人々には不毛な消耗戦でしかない。
 
さて、割高割安を見る基準は為替相場についてはインフレ率調整後の実質相場だ。またREITについてはP/NAV指数で割高・割安を見抜くことができる。
 
以下に直近のそれぞれの図表を貼り付けておくので、ご参考にして頂きたい。
ドル円の実質相場指数は自前のもの、P/NAV指数はT-MAx社のサイトで公開されている(本日更新された)。http://www.tmaxv.co.jp/service_solutions/fund_forecast_latest1.html
 
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ゼロ金利下での量的金融緩和が実体経済に波及する経路のひとつとして、企業株価や住宅資産の上昇による正の資産効果(資産価格の上昇が消費を増やす)があることを、以前説明した。
 
三菱東京UFJ銀行NY駐在のエコノミスト(元部下)が、2月8日号の週刊レポートで次のように書いているのが目にとまった。
 
引用:「仮に株価上昇が今後の消費性向改善にうまく繋がるとした場合、給与税減税終了による所得押し下げ効果(約0.8%)を相殺するためには、ラフには1~3月期の平均株価が昨年10~12月期を10%前後上回る必要があると試算される。これはS&P500がリーマン・ショック前高値の1576ポイント(2007年10月11日)を上抜き、3月末にかけて1600ポイントを上回ってくることを意味する。」
 
「また、住宅価格については、景気変動に遅行することを反映し、短期的な消費性向の動きにはさほど影響していないことがみてとれる。住宅価格の上昇はあくまで中期的な消費性向上昇要因である。」
 
レポートは以下のサイトに来週月曜日に掲載されるはず。
 
短期見通しの週間レポートなので住宅価格の上昇の影響はここでは無視しましたということらしいが、2013年全体を見通す場合、この点はちょっと問題だと思う。 レポートの読者は別に1-3月の経済動向に関心があるのではなく、2013年年を通じてどうなるか、その中で1-3月はどういう位置になるか、そういうことを見通したいと思っているんだからね。
 
米国主要都市部の住宅価格指数であるS&Pケース・シラー指数は、2012年11月時点で、住宅価格が前年同月比5%前後も上昇していることを示している。 
S&Pケースシラー指数については以下のサイト参照
グラフ化されたものは以下のサイトで見ることができる。
 
住宅価格の復調・上昇が明確になってきたのは昨年後半からだから、この資産効果が2013年全体の個人消費を底上げする中期的な効果が出てくるだろう。
 
ちょっと別件で忙しいので、きちんとデータで裏付けていないが、住宅価格の資産効果を織り込めば、「財政の坂」(もう崖とは呼ばれていない)にもかかわらず、そこそこの株価の堅調トレンドでも、個人消費が腰折れずに推移する可能性が高い・・・じゃないかな。
 
追記:
ゼロ金利下の量的金融緩和効果としてのポートフォリオ・バランス効果については、東大の吉川洋先生が近著「デフレーション」の中で、クルーグマンの論文なども批判しながら、ゼロ金利下ではその効果は限極めて定的でデフレをマイルド・インフレに転換するような力はないと指摘している。
 
吉川洋先生は、日本を代表するケインジアンだが、米国のポール・クルーグマンに代表されるような
ネオ・オケインジアン学派とは一線を画しており、オールド、あるいはオリジナル・ケインジアンと呼ばれるべきだろうか。
 
合理的期待形成論を受け入れてしまっているネオ・ケインジアンよりも私は全般的には吉川先生に共感する部分が多いのだが、上記「デフレーション」に述べられたデフレとQE問題については、ちょっと同意を留保しておきたい気持ち。
 
この点では、日本などを対象にした実証研究なども出てきているようだが、まだ米国では現在進行形の事態であり、データと調査の累積が必要なテーマではないかと思う。 また経済現象における「効果」というのは、以前から書いている通り、市場参加者の「期待」次第で全く違ってくるので、断定的な効果の有無の判断は難しいと思う。
 
竹中正治HP
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これはたまげた。ぶったまげた。
facebook知人が薦めていたので「勝ち続ける意志力」梅原大悟、(小学館101新書、2012年)を読んだ感想だ。
 
私はプロ・ゲーマーという世界があること自体知らなかったが、著者梅原は格闘技ゲームの世界にのめり込み、信じられないような集中力と執着心でゲーマーの一種の世界選手権で優勝する。
 
著者はまだ31歳、しかしその格闘ゲーマーとしての勝負を語る言葉は、まるで数百の戦いを血を流しながら生き抜いてきた剣豪の言葉のような説得力と迫力がある。
 
あるいは、彼が格闘ゲーマーであることを知らなければ、囲碁や将棋を極めた名人が勝負の世界を語っているのだと錯覚してしまうだろう。
 
スポーツや仕事から人生全般にまで通じる印象的なセンテンスを引用しておこう。
引用:
「僕にとって何が自信につながったかと言えば、それはゲームの上手さや強さではなく、苦手なものを克服しようとしたり、あえて厳しい道を選んだりする自分の取り組み方、高みを目指す姿勢を貫けたという事実があったからだ。 手を抜かず徹底的に追求することが、自信を持つ何よりの糧となったのだ。」
 
「勝負を決する彼我の力の差というのは、ごくごくわずかだということだ。」
 
「ほとんどの人は、実力がつけばつくほど自分なりのスタイルというものを確立してしまう。・・・するとその形に縛られてプレイの幅が狭まり、結局は壁にぶつかってしまう。・・・・(だから)99.9%の人は勝ち続けられない。」
「その点、僕の勝ち方にはスタイルがない。スタイルに陥らないようにしていると言っていい。他人から『ウメハラの良さはここ」と言われると、それをことごとく否定し、指摘されたプレイは極力捨てるようにしてきた。」
 
「結果が出なかった時、どう受け止めるかでその後の歩みは変わってくる。」
「僕はこれまで頭の回転が速く、要領が良く、勢いに乗っていると思われる人間と何度も戦ってきたが、ただの一回も負ける気はしなかった。 それはなぜか。彼らと僕とでは迷ってきた量が圧倒的に違うからだ。」
 
「僕はこれまでの人生で何度もミスを犯し、失敗し、そのたびに深く考え抜いてきた。だから、流れに乗って勝利を重ねて来ただけの人間とは姿勢や覚悟が違う。」
 
「(相手の)弱点を突いて勝つ方法は、勝負の質を落とすような気さえする。その対戦相手は自分を成長させてくれる存在なのに、その相手との対戦をムダにすると感じるのだ。だから、弱点を突かず、むしろ相手の長所となる部分に挑みたい。」
 
「正解がどちらの方向にあるのか、迷う必要すらない。すべての方向を探り尽くすから、どこかで必ず正解が見つかるのだ。」
 
「かつて生み出した戦術に頼らない覚悟と、新たな戦術を探し続ける忍耐があるからトップでいられるのだ。」
 
「僕にとっての正しい努力。それはズバリ、変化することだ。昨日と同じ自分でいない。そんな意識が自分を成長させてくれる。」「変化=進化を続けるためには、あえて苦手なことに挑戦してみるのもいい。」
 
「とにかく、考えることをやめなければ出口はみつかる。『ん、ちょっと待てよ、この考えは上手くいくかもしれない』 そんな閃きの瞬間が訪れるのだ。そうやって深く考える癖をつけておくと、考えることが日常になり、人よりも物事を深く考えられるようになる。」
 
「すなわち集中力とは、他人の目をいかに排斥し、自分自身とどれだけ向き合うかにおいて養えるものなのかもしれない。」
 
「やはり、最激戦地と呼ばれる戦場で戦うべきだ。」
 
「手っ取り早い方法や人の真似、安易な道を選んだ人は、どれだけ頑張っても最大で10の強さしか手に入れることができない。・・・・一方で10を超える強さを手に入れるための道は暗闇に包まれている。それまで誰も歩いたことがなく、その先に道があるのかさえわからない。・・・人よりも強くなりたいのであれば、自分を信じて、不安を打ち消しながら進むしかない。・・・10を越えた強さは、もはや教えることもできなければ誰も真似することもできない。」
****
 
31歳の若さでこれだけの覚悟のある言葉を語り、実際プロ・ゲーマーとして勝ち続けたというのは驚くべきことだ。それがどこから生まれたのか? 自分の身一つ、ゲームに勝つことだけに賭けるという生き方と覚悟から生まれたんだと思う。 つまり勝負師の世界だな。
 
私なども、けっこう我が道を行くスタイルで仕事をやってきたつもりだが、それでも所詮、銀行、または大学というものを盾にしたり、支えにしたりしてやってきたから、自分と比較してみて、彼の生き方が並大抵のものではないことはわかる。
 
「一度身につけた技やパターンは捨てる。それにこだわれば、それが弱点になる」という言葉も強い直感的な説得力がある。日本のビジネスが今一番必要としている覚悟がこれだなと思う。
 
「相手の弱点を突かず、むしろ相手の長所となる部分に挑みたい」 
この言葉で思いだしたことがある。学生時代に友人と二人で、傾倒した先生(関西の大学教授)を学園祭の講演会に招き、講演してもらった時のことだ。
 
先生がこう言ったのが印象的だった。
「学問的な論争を挑む時は、相手の論理が最も強固だと思っているところに挑戦して、論破しなさい。
それでこそ論破したと言える価値があるんだ。」
その先生とは、マルクス経済学に数理的な技法を導入するという当時の日本で孤高の道を歩まれた置塩信雄教授だった。
 
追記(2月2日):
「たかがゲームに・・・」と思っている方もいるだろう。しかし、何段だとか名人だとか呼ばれているプロ棋士の世界だって、たかが「吹けばとぶ様なような将棋のコマ」に血道を上げていることになる。
それはあらゆるスポーツにも言えることで、「たかがボールころがし」だったり「たかがボール打ち」だ。
 
遊びで始まったことが、人生を傾注する勝負事になったり、一大事業になってしまう・・・人間というものは実に奇妙な動物だ。でも「文化」とはすべてそういうものだな。
 
以上
 
 
 
 
 

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