たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2013年04月

円相場、株、REITなど流動性の高いものが先行的に動き、流動性の低い現物不動産などの資産が遅れて動き出す。これは4月のロイターへの寄稿でも書いた点だが、やはりそうなるなとますます感じる。
 
本日の日経新聞記事:
「企業の不動産取引が活発になってきた。今年1~3月の土地や建物などの取得額は、2008年の金融危機前の水準を回復した。低金利で資金を調達しやすくなった企業が、事業拡大に備え物流拠点やオフィスなどの先行投資に動いている。設備投資などを通じ、景気回復を後押ししそうだ」
 
「1~3月期のREITによる物件取得は6387億円と前年同期の2.8倍に増え、6年半ぶりの規模に膨らんだ。2月に新規上場した日本プロロジスリート投資法人は千葉県市川市の物流施設など12件を計1700億円強で取得した。「2~3年で運用規模を3000億円にする」方針だ」
 
「「とるべきリスクをとって前向きに資金を供給していこう」。12日、三井住友銀行頭取の国部毅(59)は部長や支店長ら1000人にげきを飛ばした。三菱東京UFJ銀行頭取の平野信行(61)も「政権の脱デフレ路線に貢献したい」と表明。みずほフィナンシャルグループ社長の佐藤康博(61)も「リスクマネーを投じる」と成長事業に出資するファンドをつくった」
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これから起こることは、2003年の後半から07年にかけて起こったことと似た(すべて同じということはないが)コースになると思う。
 
特に銀行に関する最後の記事: 2006-07年の不動産ミニバブルの時に、不動産融資を膨らませ、2008年以降沢山の貸し倒れをつくってしまった(90年代の規模に比べるとミニ不良債権だが)銀行は、あつものに懲りてなますを吹いていた。 今再び同じサイクルで動き出す感じだね。
 
景気回復が持続すると言っても、結局大きな資金需要は企業買収か、不動産投資関連になる。そこへメガ・マネーが向かえば、最初は慎重にやっていても、だんだんと競争が高じて、結局「そこまでやりますか?!」のバブル融資になるだろう。 形は変われど、本質は変わらぬサイクルだな。
 
不動産市場の動向は、いろいろな情報があるが、たまたま本日飛び込んできた不動産研究所のサイトを紹介しておこうか。
 
住宅価格動向については以下のREINS Market Informationも良い。
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追記:5月1日日経新聞記事
「投資マネーも流入している。ドイツ証券の小夫孝一郎ディレクターは「不動産投資信託(REIT)や年金などの出資する私募不動産ファンドが安定した賃料収入を見込んで賃貸マンションを取得している」と話す。貸家は10.7%増の32万戸と、3年ぶりに持ち家を上回った」
 
きてますね・・・っていうか、最近の日経新聞、ちょっとアベノミクス効果を煽り気味?(^_^;)
 
追記:5月4日日経新聞記事
「東京のオフィス市況が回復している。新築を中心に賃料が上昇基調をたどっている。空室率も低下傾向にあり、一段の需要拡大が続きそうだ。設備や新しさ、立地などでオフィスビルの人気が分かれる傾向も強まっている」
 
新築ビルの賃料の変化は中古のそれに対して先行性があるようです。 
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 

昨日4月20日、神戸大学での金融研究会に参加した。以下サイト参照
 
発表者は神戸大学の柴本昌彦講師、関西大学の本多祐三教授、東京大学の植田和男教授(元日銀政策委員でもある)。
 
ゼロ金利下でのクロダショックを含む量的金融緩和の効果をメインに、副作用のリスク、EXITの問題についてまで議論が展開し、懇親会も含めて面白かった。
 
毎度のことだが、自分の浅学を顧みず、フロアーからずけずけと質問や意見させて頂き、楽しんだ(^^)v。
 
以下私の関心を引いたポイントを整理しておこう。
 
柴本氏:2000年代の日銀の量的金融緩和の実証分析から、ゼロ金利下での量的金融緩和政策などが(以下、非伝統的金融政策)が金融市場(長期国債利回り、株価、円相場)に影響を与えることはほぼ間違いない。 しかしそれがさらに物価に与える影響はかなり小さい。
2000年代を対象にした回帰分析結果に基づけば、金融政策だけでインフレ率を2%にするには、生産の28%の増加、株価の280%の上昇を伴う必要がある(そりゃ無理だろう)。
 
私の質問発言:「今回の大胆な量的金融緩和で円安になっているけど、それはインフレ率の上昇→円安というシナリオが働くことを想定して市場参加者は円売り・外貨買いに動いているはずだ。 ところが最終的にインフレにならないなら、それは誤った(裏切られる)期待ということになる。つまり円高への大きな戻りが生じることになるが、そう考えているのでしょうか?
 
柴本氏:「そうかもしれない・・・ただし将来日銀はインフレ2%目標達成のために、更に追加的な緩和政策を行う必要性を強いられ、更に緩和した後、円安が更に起こるという展開になる可能性があると思う
植田氏:「アベノミクスと大胆な金融緩和が一種のイリュージョン(幻想)を生み出している可能性がある。しかしそれが必ず裏切られるかと言うと、市場・経済は期待が自己実現する面もあるので、一概に断定できない」
 
本多氏:同様に2000年代の日銀の量的金融緩和の実証分析(VAR)から、量的金融緩和が実体経済(生産の増加)に与える効果が検証できた。
 
その経路として、株価の上昇が重要な媒介項となっている。
株価上昇→生産増加の経路は以下のものが考えられる。
 
①トービンのQの効果(Q=株価/設備の再生産費用)  他社買収か自前の設備投資かの選択において、株価の上昇は自前の設備投資を有利にする。
②企業の(保有する他社株)担保価値の増加→融資を受けやすくなる。
③銀行の含み益増加による融資余力の増加
④資産効果による消費増
 
懇親会での本多先生への私の質問:「株価上昇→生産増加」の経路は理解できましたが、マネタリーベース(あるいは日銀におかれている民間銀行当座預金)を量的金融緩和で増やすと株価が上がるという部分の経路、メカニズムはどういうものでしょうか?バーナンキが強調したポートフォリオ・リバランス効果で説明できると考えてよろしいでしょうか?
 
本多氏:「実はその点は誰にも確信がない」 
竹中:「えっつ?わかっていないんですか(゜o゜)」
というわけで、期待の変化まずありき、さすれば株価は買われて上がるであろう・・・・ということになってしまったような(^_^;)
 
植田氏:多様な論点を語られたが、日銀が長期債を大規模に買った場合、将来のEXITが難しくなるか?実際にインフレになり、2%を超え始めた時に、金利を上げるのが難しくなるか?この問題について、「みなさんはどう考えますか?」と問われたので・・・
 
竹中:「金利が下がった局面で長期債を日銀が売れば、大きな損失になって、日銀の自己資本が毀損するので、総裁の決断次第だが、国債を売る形の引き締めは取りにくいはず。しかし巨額なリバース・レポで日銀当座預金の超過準備を吸い上げ、コールレートを引き上げることは可能なはずだと思いますが」
 
植田氏:「そうですね。あるいは日銀当座預金の付利(現行0.1%)を引き上げれば、コールレートとの間に裁定が働くので、コールレートも上がる。」
 
竹中:「その場合は、日銀の負債サイドのコストが上昇するので、やはり期間損益が赤字になるので限界があるのでは?」(ここで私は、リバースレポでも当座預金付利金利引き上げでも、日銀の支払い金利コストが増加する点で同じであることに気が付いた)
 
植田氏:「その通りですね。一定の想定の下では、EXITにかかるコストは、期間損益の赤字の総合計も国債売却によるキャピタルロスの合計も同じになる。前者は数年にわたって生じるのに対し、後者は一気に生じるという違いがあるが。
 長期国債を大規模に買う今回のやり方は、将来インフレになった時に機動的に金利を上げることが難しくなるかもしれないというリスク、つまり予定以上のインフレ高進のリスクがあるかもしれないという予想までを織り込んで、円売りや株買いが進んでいる面があるように思う」
 
以上、記述はあくまでも私のメモと記憶によるものであり、3先生の発言趣旨をもし正確に表現できていない場合、その責任はすべて私にある。
 
補足
日銀のバランスシートで負債の約100兆円程度は日銀券の発行残高であり、無利子の負債である。資産サイドには今後、国債残高が一層増えることなるが、低利回りとはいえ有利子資産だ。そこから生じる中銀としての収益(通貨発行益)は大雑把に言って、これまで年間1兆円余りだったはず。
 
将来非伝統的金融政策からEXITする際に生じる可能性の高い損失に対して、この既存の収益源泉は損失を相殺するバッファーとなるはずだが、規模がでかくなるだけに、一定の期間では損失が収益を上回る可能性は当然ある。
 
べき論としては、損が出たって経済的には日銀は政府部門の一部なんだから、数兆円規模の赤字なんか気にせずにやるべき金融引き締めをすれば良い、とは言える。ただしそれがその時の総裁の決断にかかっている問題だろう。
 
余談
懇親会で誰かが言っていた。黒田総裁のもとで今まで日銀が主張してきたこととは大きく違うことをやらされて日銀内部ではストレスが高まっていると思いきや、日銀内部はなんだか吹っ切れたような明るさすら感じられる雰囲気だそうだ。自縛から解かれた? 真偽は存じませんがね。
 
追記:
本日4月22日の日経新聞朝刊記事
「生保、国債新規投資を削減、日銀緩和受け外債シフト」 
日本生命保険など国内主要生命保険各社は日本国債への新規投資を減らす。日銀の「量的・質的金融緩和」で20年債など残存期間の長い国債の利回りが低下し、運用収益をあげにくいためだ。より高い利回りを目指し外国債券や社債などに資金を振り向ける。
 
4月4日に日銀が新しい金融緩和策を打ち出し、長期金利の水準が一段と下がった。これを受け、主要生保は3月末までに立てた2013年度の運用計画を見直した。
日本生命保険は昨年度は1兆円超の買い増し計画を立てた超長期国債の積み増しを抑える。代わりに為替変動リスクを軽減するヘッジ付き外債や満期までの期間の長い社債を買う。三井生命は500億~600億円程度の外債を積み増す。」
 
これはまさにポートフォリオ・リバランス効果そのものですね。
 
追記その24月24日日経新聞記事
「「長めの国債はすべて売った」。日銀が金融緩和に踏み切った翌日の今月5日、横浜銀行頭取の寺沢辰麿(66)は横浜市内で開いたアナリスト説明会で、満期までの残存期間が5年以上の国債を売却し、売却益を確保したことを明かした。
 市場に驚きを与えた日銀の異次元緩和は、地方銀行にとっても衝撃だった。日銀が長めの国債を買う方針を打ち出すと長期ゾーンの国債の利回りが急低下。余ったお金を国債で運用しておけばある程度の利益があがる局面は終わった。
 寺沢は1日に公表したばかりの今後3年の中期運用計画を「5月の連休をメドに見直す」と付け加えた。外国債券や上場不動産投資信託への投資を拡大し、脱・国債依存の傾向を強める見込みだ」
 
こうした動きは昨年までの量的緩和では聞こえてこなかった。ポートフォリオ・リバランス効果を生じるためには巨大な国債市場にインパクトを与えるだけの規模の大きさが必要になる。クロダショックで初めて効果を生み出す臨界点を超えたということだろう。
 
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
 
 
 
 
 

トムソン・ロイター社のコラムへの毎度の寄稿です。
今夕、掲載されました。以下サイト
 
ご覧になってよろしければ「おすすめ」など是非クリックお願い致します。<(_ _)>
 
引用:
3月以降のREIT相場は賃料収入との比較、予定配当利回り、あるいはP/NAV指標(投資口価格/1口当たりの純資産額)など、いずれの指標でみても、ますます割高になっており、その割高度は2007年の前回ピーク時に匹敵するか、それ以上だ。
 
一方で、個別の商業ビルやマンションなどの現物の不動産物件の価格は、統計データで見る限り昨年の水準と比較して今のところ目立った上昇は示していない。
 
REITは商業ビルやマンションなどの賃料収入を主に配当するファンドであり、その資産は収益不動産そのものであるにもかかわらず、REITと現物不動産の間に著しい価格の乖離(かいり)が起こっているのだ。なぜだろうか。
 
同マンション価格指数に対してREIT指数(いずれも前年同月比変化)を6カ月先行させて相関関係を示したのが下の図である。
 
両者の相関係数は0.765とかなり高い(正の相関係数は0から1の値をとり、1の時は完全な比例関係になる)。今回もこの相関関係が働くならば、今後マンションなどの個別の不動産物件価格も数カ月遅れながら上昇が始まることになる(図中の赤線の方向への変化)。
 
実際、不動産業界関係者に話を聞くと、今年に入ってから都心部を中心に不動産投資マネーの動きが明らかに活発化しており、売り手も次第に強気になり始めているという。実体経済の景気回復が持続する限り、今後数カ月のうちに現物不動産価格の上昇がデータでも明瞭に確認できるものになるだろう。」
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追記: 参考サイト
東証REIT指数のチャート 
YahooファイナンスのREIT一覧
 
 
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http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 

ほ~これは面白い。

ラインハート&ロゴフ教授、検証結果に重大な誤り?  以下WSJ記事
(関連書:「国家は破たんする(This Time is Diffrent)」
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324309104578428401376184598.html?mod=WSJ_hp_mostpop_read

エコノミストや実証系経済学者なら実は承知のことですが、データによる検証って、実はちょっとした設定の違いで黒が白になったりすることがあるんです。
 
引用:「ラインハートとロゴフ両氏の論文「Growth in a Time of Debt」 (債務時の経済成長)では、公的債務の国内総生産(GDP)に対する割合が90%を上回っている諸国は景気拡大ではなく、経済が年率約0.1%縮小する傾向があると指摘した。」

「しかし、ハーンドンさんと、アシュとポーリンの両教授は、ロゴフ・ラインハートの計算を再現するなかで、GDPに対する債務比率が90%を超える諸国のGDP成長率は2.2%となっていて、GDPに対する債務比率がそれ以下の国々の成長率を1ポイント下回っていると結論付けた。」
 
「批判はアシュとポーリンの両教授が教える経済学のコースで始まった。ハーンドンさんは実証的経済学との融通を立証するため、経済論文での優れた研究の計算を再現するよう求められた。同氏はラインハート・ロゴス論文を選んだ。これはアシュ教授が「単刀直入な方法で非常に魅力的」だと称賛していた。
ハーンドン氏は一般公開されているデータを使用し、秋の学期中、この宿題に取り組んだ。しかし、アシュ教授によると、ハーンドンさんは「何度やっても得られる結果が、公表されている研究の結果と一致」しなかった。
アマースト校の研究者たちのグループは4月初め、ハーバード大学の2010年の研究論文の執筆者たちに連絡し、この論文の「実際のスプレッドシート」を受け取った。彼らの計算では引き続き、0.1%の縮小ではなく、2.2%の景気拡大が示された。
 
アマースト校の研究論文の執筆者たちは、違いは3つの分野から生じていると結論した。ラインハートとロゴスの両氏がこの略式統計をいかに重視したか、どの年のデータを含めたか、そして、スプレッドシートのコーディング問題とみられるものの3つだ。

ラインハートとロゴフ両氏の他の研究結果は激しく非難されている。ラトガース大学の経済歴史学者、マイケル・ボード氏とクリーブランド地区連銀のエコノミスト、ジョゼフ・ハーブリック氏は昨年、ラインハートとロゴフ両氏の09年の著書『This Time Is Different』(国家は破綻する――金融危機の800年)の結論に挑戦し、米国は金融危機から徐々にではなく、迅速に回復する傾向があると指摘した」
 
 
追加情報:5月6日2013年
 
追加情報:5月9日
****
ちなみに私の著作「米国の対外不均衡の真実」(2012年、晃洋書房)の論文(第1章)について、米国の対外資産・負債ポジションの将来20年間にわたる試算結果を、金融学会で発表した後、聴講してくださった某教授が大学院生の練習にと再試算してくれたことがあります。
結果は、「竹中先生の結果と一致しました」とうことでしたので、良かったね(^^)v。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 

REIT相場の高騰と個別不動産価格の著しい乖離

以前からブログなどで紹介しているREIT相場の割高・割安を判断するP/NAV指標が
更新されました(3月末)。2007年を上回る「割高度」です(^_^;)。
以下のTMAX社のサイトをご覧ください。
http://www.tmaxv.co.jp/service_solutions/fund_forecast_latest1.html

この乖離をどう理解したらよいか?
詳しくは来週トムソン・ロイター社のサイトに掲載される私の論考をご覧頂きたいと思います。
以下の最新の不動産証券化協会のレポート4月号を見ると、2月と3月の買い越し額の筆頭は投資信託、次いで民間銀行です。
 
上記のP/NAV指標の突出した高騰を見たら普通は「まだ買える」とは思えないですよね。つまり現時点で買っている方々は、こういうものを見ていない投資家だということでしょう。つまりfoolish moneyです。
 
2月のロイター社の論考(以下)で私が示唆した海外投資家の海は昨年12月に大きく出ましたが、その後はなりを潜めていますね。個人は売り越し継続、1月までに売ちゃった人、ちょっとタイミングが早過ぎましたね。http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE91J05120130220
 
4月に入ってさすがにREIT相場も、売りが出てきて、3月末比で少し値を下げている銘柄が多くなりました。 私もこの高騰局面で保有していたREITの4分の3は売りました。
残りもこの調子なら近々売るでしょう。(さっきまた一口売った)。
 
しかし私の本命ポジションは個別不動産、都市部のマンションです。
昨年追加で2戸の築浅中古マンションを仕込みましたから。
購入代金の7割銀行から借りて、レバレッジ効かせて投資しています(^^)v
ここまでのREITの高騰は、これから遅れて起こる収益不動産価格上昇の序曲に過ぎないと思っています。もちろん、景気回復の持続が前提です。
 
「最後にはバブルか?」 その局面がいつになるかはわかりませんが、その可能性は高い感じがします。同じトレンドが中長期続くと、大局的なレベル観を持たないfoolish moneyが同じ方向に累積してバブル局面になるのでしょう。
 
そうなるまで果報は寝て待てです(^^)v
 
追記:ガルブレイスが“A Short History of Financial Euphoria”の中でこう述べている。
「金融上の記憶というものはせいぜい20年しか続かないと想定すべきだ」
日本のREIT市場については2007年がミニバブルのピークでそのあとが相場崩壊だから、市場の記憶は5年しか続かなかったということかな・・・・(^_^;)
 
 
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本日4月6日の日経新聞朝刊に「円安効果を強く意識 企業心理好転に狙い」のタイトルで滝田洋一編集委員が、ドル円相場に関するソロスチャートを引用して、次のように述べている。
 
引用:「日米で出回るおカネの量の比率を計算し、日本の円が(ドルよりも)余計に増えれば円安、反対に米国のドルの方が増えればドル安となる――。為替相場を2つの国の通貨の流通量から読む手法は、投資家のジョージ・ソロス氏が愛用したことから「ソロス・チャート」と呼ばれる。」
 
「回答はマネタリーベースと呼ばれるおカネの量を、毎年60兆~70兆円増やす緩和策。ソロス・チャートからはじいた円の適正相場は1年先に1ドル=95円、2014年末には105~110円となる。牧野潤一SMBC日興証券チーフエコノミストはそんな試算を示す。」
 
マネタリーベースとは、今回、黒田日銀総裁が「倍増させる」として金融政策の操作目標にしたもので、日銀券の総発行残高+民間銀行が日銀に保有する当座預金残高の合計値のことだ。
 
日銀が民間銀行から国債を買い上げて、対価としてマネーを払うとそのマネーは、民間銀行の日銀当座預金に入金されるので、マネタリーベースはその分増える。供給される円マネーがドルマネーに対して増えれば、円は相対的にインフレで価値が目減りするので、その分だけ円安になるというのがソロスチャートの原理だ。
 
添付されたソロスチャートを見ると(SMBC日興証券作成)、短期的・中期的な乖離はあるものの、ソロスチャートがドル円相場の大局的な変動を説明しているように見える。
 
経済学的に言うと、ソロスチャートとは、単純な貨幣数量説と購買力平価原理から導かれる仮説だ。
 
しかし、以上のことから「マネタリーベースを米国以上に日銀が増やせば円安になる」と理解すると、それは大間違いになる。
 
ここで注意しなくてはならない点は、図にしめされたソロスチャートの理論値は、注釈がついている通り「超過準備を除いている」ことだ。
 
物価に影響を与えるのは、マネー供給量(=民間の預金マネーと日銀券)であって、マネタリーベースではない。日銀は国債の購入でマネタリーベースを増やすことはできるが、民間の経済主体が借入を増やして投資や消費を増やさない限り、マネー供給量は増えない。
 
マネー供給量が増えないと、民間銀行の日銀準備金必要残高は増えないから、無駄なマネーが「超過準備」として日銀当座預金に累積するだけである(俗に「ブタ積み」)と呼ばれる。
 
つまりこの場合は、日銀におかれた民間銀行の当座預金残高が増えても、銀行の貸出しが増えないことには、マネー供給量は増えないので、デフレ解消効果=インフレになる効果=円安効果もない。
 
超過準備が生じること自体が、単純な貨幣数量説(「マネタリーベースを増やせばインフレ=円安になる」)を否定している。ケインジアン学派はこの点を、ゼロ金利状態のように一定水準まで金利が下がってしまえば、「馬(経済)に水を飲ませたくても(マネー供給量を増やしたくても)、馬は飲みたいだけの水しか飲まない(=マネー供給量を中銀は増やせない)」と主張する。
 
すなわちマネー供給量はゼロ金利下では中銀が金融政策で操作できる外生変数ではなく、経済自体(馬)によって決まる内生変数であると指摘して、単純な貨幣数量説を批判してきた。(参考:「デフレーション」吉川洋、日本経済新聞出版社、2013年1月)
 
では、デフレ脱却のために日銀にできることはないのか、黒田総裁は間違っているのかというと、私はそうではないと思う(筆者のスタンスは基本的にはリフレ派である)。
 
要するに馬(経済主体)の将来期待に働きかけることができるかどうかに、ゼロ金利下の量的金融緩和&インフレターゲット政策の効果はかかっているのだ。「インフレになりそう、資産価格も上がりそう」と馬(経済主体)が期待を変化させれば、水を飲むようになる(=借金をして投資や消費を増やすようになる)。
 
そういう意味では今日の金融政策は、中銀のリーダーシップ(あるいはカリスマ性と言うべきか)による経済主体に対する心理(期待)操作に近づいているということができるだろうか。確かに金融政策は従来とは違う「異次元」に足を踏み入れたのだ。この10年間は金融政策史における一大画期だったと位置づけられることになるだろう。
 
黒田総裁は大胆果敢に成功裏にスタートした。もちろん現状はまだ、「期待先行」で円高修正と株価回復が起こった初期の段階だ。実体経済が本当にデフレ脱却できるかどうかは、これからである。政策の成功を私も心から「期待」している。
 
追記:マネー供給量の変化とインフレ率は長期では高い相関関係があるので、超過準備を除いた修正ソロスチャートの理論値は購買力平価と近似することになる。購買力平価については以下の(財)国際通貨研究所のサイトをご覧頂きたい(筆者が元チーフエコノミストとして勤めていた研究所です)。
 
追記2:記事を執筆した滝田氏は、おそらく上記の点は理解しているのだが、新聞にありがちな「わかりやすさを優先して、正確さを殺す」方針で書いたのだろう。しかし、その結果、控えめに言っても読者を不正確な理解に誘導してしまっているし、もっとはっきり言うなら、リフレ派とアンチリフレ派の最も重要な政策論争点のひとつを不明確にしていると言わざるを得ない。
 
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 高値更新中の米国株、しかし「これはもうバブルだ」という主張は米国人の中にもあり、ブルとベアーに見解は分かれる(当然だけどね)。 果たして既に米国株は割高に舞い上がっているのだろうか?
 
以下は昨晩のYahoo Financeの記事
quote:"David Stockman, President Reagan’s budget director and former Republican
Congressman, writes “instead of cheering, we should be very afraid.”
Stockman goes on to lay out a case for his prediction: “This latest Wall Street bubble, inflated
by an egregious flood of phony money from the Federal Reserve rather than real economic
gains, will explode” in the next few years.
 
Stockman tells The Daily Ticker that “the bond market, stock market, all risk assets - they’re
totally driven by the Fed."
He argues that the Fed is largely responsible for the market’s trajectory. This comes in the
context of measures of overvaluation such as Robert Shiller’s CAPE ratio, which shows stock
valuations are similar to where they were in 2007, but far from the levels reached in the late
levels seen in late 1999 or 2007.
****
 
さてここでRobert Shiller's CAPE Ratio(別名Shiller's PE Ratio)に注目しておこう。以下のサイトでご覧いただきたい。
定義は以下のサイト
 
ざっくりと言うと、過去10年の企業収益をインフレ率で実質化し、それをベースにPER(株価収益率)を算出したものだ。企業収益は景気変動による振れが激しいが、過去10年の平均ならば趨勢的な収益となる。 
株価はShiller's PE Ratioからの乖離と回帰を繰り返し、長期的には平均への回帰が働く。私が市場の為替相場はPPPからの乖離と回帰を繰り返すと強調しているのと基本的に同じ視点だね。
 
で、ストックマン氏のような見方は、現在のRatioは23.47(4月2日)は、長期的な平均値16.47からかなり上方に乖離し、危機前の2007年の水準まで上がっているので、すでに株価は過大評価であり、FEDの量的金融緩和でもたらされたバブルだと判断しているわけだ。
 
しかしRatioの振れ幅が極めて大きい点、並びにどの程度乖離したら反転するのか、その点について一般化できそうな法則性は見られない点に注意しておこう。
 
例えば1987年10月のブラックマンデーの暴落は平均値とほとんど乖離していない17.5程度の水準で起こっている。だから、ブラックマンデーのような出来事が明日起こっても不思議ではないとも言える。(この点は強調しておこう。株式市場とは常にそういうものだ。)
 
また多少平均値から幅を取って「Ratioが20を超えたらバブル」だと判断するなら、米国株は1990年の前半にはすでにバブルになっている。そこで全部売っていれば、2000年春までの株価の上昇による利益はすべて失う(得られなかった)ことになる。
 
私の記憶では(出所が今出てこないが)Shiller教授は1990年代前半にはすでに「米国株は過大評価されている」と警告していたから、実際にそうした判断をしたのかもしれない。Shiller先生、学者でよかったね。彼が投資家だったら、大失敗していたということになる。
 
私自身は短期・中期的には米国の景気の回復が続くと見ている。企業収益の増加が持続すれば、株価の上昇はまだ続く公算が高いと思っている。
 
長期的にはシェール革命によるエネルギー構造の大変革が緒についたばかりだ。これは1970年代のオイルショックとちょうど逆のインパクトをもたらす「逆オイルショック」になる可能性をはらんでいる。それが米国の経済成長をどの程度押し上げるか、まだ見通し難いが、プラスであることは間違いない。
 
というわけで、S&P500のインデックスファンドは一部売ったが、コア・ポジションは維持しておこう。
でも、Shiller's PE Ratioが25を超えたら、やっぱりもっと売ろうかな・・・(^^)v
 
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4月9日号のエコノミストに掲載された沼上幹教授(経営学、一橋大学)の論考に共感したので、以下に引用、要約しておこう。
 
タイトル:「重たい」組織を改革し、イノベーションを生む環境を
引用:「バブル崩壊後に日本経済が苦境に陥った時でも・・・日本的な経営には本質的な問題はなく、悪いのは全部マクロ経済環境だと、筆者を含めて多くの経営学者がどこかで『気楽』に信じていたようなところがあったと記憶している。」
 
「(ここで言う日本的な経営とは)自律性の高いミドル・マネジメント(中間管理層)が新製品・新事業を発想し、ロワー(部下)とトップ(経営陣)に積極的に働きかけて組織内のコンセンサスを形成すると共に、取引先とも濃密な「すりあわせ」を行ってイノベーションを推し進め、それが会社の戦略を駆動する、という日本企業の戦略創発スタイルのことを指している。」
 
「組織内外・上下左右に『すりあわせ』を行い、コンセンサスを形成していく経営スタイルは、内部調整に過剰な負担をかける可能性がある。 成長経済下の新規事業開発なら前向きに組織内の合意形成が可能だったかもしれないが、成熟経済下の『選択と集中』については、コンセンサス形成が難しい。
縮小される側が強力な反対勢力となり、ミドル同士では合意に到達できない。」
 
「コンセンサスを重視する内向きの重たい組織では、イノベーションを起こすことが難しく、環境変化への適応が遅れがちになる。」
 
「さらに問題なのは、重たい組織で働くミドル達が、自分でも内部調整可能な範囲の人々しか巻き込まないような『こじんまり』とした新規企画にしかチャレンジしなくなる点であろう。」
 
途中省略して結論に飛びます。
「戦略思考力のある一部の経営管理者たちがパワーを独占し、トップダウン型の経営スタイルを取らなければならない。」
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私が銀行で経験した1996年合併後の閉塞感も全く同じだ。外為専門銀行と言われた東京銀行はある意味ではフットワークの軽さが生きていた組織だった。現場の環境適応的な変化が許容され、それが成功するとそのまま戦略に昇格するような柔軟性があった。
 
ところが1996年に三菱銀行と合併を機に、組織はひどく重たくなった。 合併でポジション争いや主導権争い、各組織のサバイバルゲームが強くなったからでもあろうが、組織そのものが大きくなったことにより、合意形成のためにクリヤーしなければならない条件や変数が著しく増えたからだろう。
 
大学組織もまた然りだ。ここでは上下の権限関係よりも、横のフラットな関係の力の分散が強すぎて、大きな改革は必ず誰かの既存利害に抵触するので、合意形成が難しくなっている。
 
結局、重たい組織は環境変化への適応が後手後手になり、グローバル化した競争環境の中では行き詰まる。「もうだめです」と追い詰められるまで抜本的な改革ができない。
 
日本の大学のような組織が今まで存続したのも、海外からの直接的な競争にさらされていないからだろう。米国の大学が日本に分校を設立して進出するようなことを実現したら、実に面白い展開になるかもしれない。まあ、文科省がそんな大胆なことをするはずもないだろうが。
 
若い諸君は、せめて留学してオープンな競争環境で生き抜く力をつけなさい。
 
 
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