たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2014年01月

毎度のトムソン・ロイター社コラム、本日午後掲載されました。↓
 
冒頭部分一部引用:「経常収支の赤字が大きいなどファンダメンタルな脆弱性を抱える新興国の経済・金融面の動揺で、為替相場と株価は再び波乱局面に入る雲行きだ。これら新興国は「フラジャイル5」(インド、インドネシア、ブラジル、トルコ、南アフリカ)と呼ばれているが、直近ではアルゼンチンも加わって「フラジャイル6」となっている。
 
米国の量的金融緩和縮小が新興国から投資資金の引き揚げを起こし、それが動揺の原因となっているとの解説が一般には流布しているが、やや近視眼的な見方だろう。
昨年7月30日掲載の本コラム「新興国襲ったドルキャリー巻き戻しの残存リスク」で指摘した通り、経済協力開発機構(OECD)の景気動向指数を見れば、これら新興国の景気動向は2011年から波打ちながらもスローダウンする局面に入っていることが明らかだ。投資資金の対外的な流出・引き揚げ、株価の低迷も当該諸国のファンダメンタルな変化を反映しているに過ぎない。
 
一方、同景気動向指数は12年後半以降、日本、米国、英国、ユーロ圏で穏やかながらも景気回復が持続していることを示している。つまり、世界経済は回復基調をたどる先進国と相対的に停滞する新興国に2極化しているのだ。
 
これは株価指数の動向にも明確に現れている。新興国の合成株価指数であるMSCIエマージング(ドル建て)は11年4月に高値をつけてから、以後一度もその高値を更新することなく低迷している。一方、米国株価は高値を更新し、日本株も日経平均でリーマンショック前の07年末の水準を超えた。
 
アンチ・アベノミクスの論者らは、現在の日本の景気回復は蜃気楼の様なもので、4月の消費税率引き上げを契機にアベノミクスは幻想だったことが明らかになるだろうと、陰鬱な見通しを呪詛のように繰り返している。(←本論とはあまり関係ないのですが、どうしても書いておきたかったので(^_^;))
 
筆者は現在の景気回復は実体を伴うものであり、消費税率引き上げ後、駆け込み需要の反動減による一時的な後退はあるものの景気の腰折れはないと考えている。
 
いずれにせよ、今年第2四半期以降も景気回復が持続するかどうかは、これまでの経済政策論争のひとつの決着点になると同時に日本経済の長期的な分岐点にすらなるだろう。」
*****
 
見通しの結論は以下の通り。
目先:一時的に100円割れの円高も
中期(1年から2、3年程度まで):円安持続(ただし1ドル=120円とか、それを越えるような超円安の蓋然性は現時点では低い)
長期:円高に回帰(日米インフレ率の持続的な逆転は起こらず、相場はPPPに回帰する)
 
また、貿易収支の赤字を長期的円安要因として重視する方がいますが、貿易収支は所得収支、各種資本収支と並んで国際収支項目、あるいは為替需給項目のひとつに過ぎませんので、それだけ特別視して「貿易収支赤=円安」という見方は一面的すぎます。
 
追記(2月3日):気がついているかな? CGO IMMのNon-Commercial筋の円売り持高(1月28日時点)が、ピーク時(昨年12月24日)から40%ほど減少していますよ。
それだけ巻き戻しても105円から102円程度への戻りですんでいるのは、102円台で円売りしている参加者がけっこういるということでしょうかね。押し目を買うのが好きな日本のFXプレーヤーかな?
直感的にはもうちょっと円高・ドル安に行きそうな感じがしますが・・・・さて、どうかな。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
 
 
 

Big Mac Index、為替相場にご関心のある方ならご存知の方は多いだろう。
http://www.economist.com/content/big-mac-index?fsrc=nlw%7Cnewe%7C1-27-2014%7C7650068%7C36195128%7C
この指数はビッグマックの購買力で為替相場の理論値(購買力平価)を推計し、実際の市場相場と比較するもの。日本で同じビッグマックが200円、米国で2ドルなら、1ドル=100円が購買力上の為替相場の理論値となる。


これで見ると、ドル円相場の理論値は1ドル=67円で、実際の相場は104円だから、36%も実際の相場は「円の過小評価(割安)」ということになるのだが・・・・

「無数にある商品をマックだけで代表するのはいくらなんでも無理だろう」
ごもっともである。

ただ私の関心を引いたのは次のことだ。
一人当たりのGDP(市場相場換算)が大きい先進国ほど、マック価格も高い相関関係がある(サイトの下段の散布図をご参照)。ところが、日本のドル換算マック価格は$2.97、一人当たりGDPが日本とほぼ同じレンジになる米国では$4.62、ドイツでは$4.98、フランス$5.15、つまり日本のマック価格は先進国の中では異例に安い。
アメリカ人が今の日本に来て、マック店に入り、1ドル=100円ほどで換算すると・・・「おっ、日本のマックってすご安!」と感じているはずだ。

マック価格は他のファストフード(牛丼、ピッザ、各種弁当、うどん、そば等)価格との競合で決まるだろうから、日本のファストフード類の価格は先進国の中ではかなり安いということになるだろう。

これはファストフード業界の競争が日本では厳しいことを意味するのだろうか?
アメリカとの比較で言うと、確かにカジュアルなランチ類の価格は日本の方がずっと安くて質が高いと経験的に思う。
安くて美味しい国、日本ですな・・・(^_^;)
 
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今月下旬にトムソン・ロイター社に寄稿する骨子と図を一部先行して、以下チョロ出し致します(^_^;)
***
為替相場に関する弊著をご購読頂いた方々、あるいは本ブログのリピーターの方々はおわかり頂いていると思うが、為替相場の変動は長期と短期・中期の変動、その要因を分けて理解する必要がある。
 
ご参考
「この先のドル買いはハイリスク・ローリターン」2013年5月、トムソン・ロイター社コラム
「米国経済は尻上がりに改善」2013年6月、トムソン・ロイター社コラム
 
1、長期の相場動向は、2通貨のインフレ率格差に規定された相対的購買力平価原理で説明できる。
 
2、為替相場が長期的にはPPPからの乖離と回帰を繰り返す限り、名目相場をPPPで割り算して算出した実質相場指数は長期的な平均値からの乖離と回帰を繰り返す(以下掲載の上段の図)。これが短期、中期の相場変動だ。
 
3、、短期・中期の相場変動は複雑で、特定のマクロ経済変数で長期にわたって一貫した説明をすることは困難だ。ただし数年から10年前後の期間に特定すれば、その期間について影響力の強いマクロ経済変数を特定し、有意な説明をすることは可能だ。
 
私が調べる限り、2005年以降足元までのドル円実質為替相場指数に強い影響力を与えている変数は、①日米実質金利格差、②グローバルな投資家のリスク許容度だ。 
そこで以下は2005年1月~2013年12月末について、ドル円実質相場指数の対前年同月比(%)を
次の2つの変数で回帰分析すると、決定係数(R2)=0.63となり、いずれの変数についても有意な結果が得られる。
 
変数①日米実質金利格差:
 (O/N FF rate-生産者物価指数前年同月比)-(O/N Call rate-企業物価指数前年同月比)
変数②米国社債市場のリスクプレミアム:Baa格社債利回り-Aaa格社債利回り
 市場が不安定化して投資家のリスク許容度が低下するとリスクプレミアムは上昇する。
  →リスクオフの状態、円高を伴う。
 市場が安定して、投資家のリスク許容度が上昇するとリスクプレミアムは下落する。
  →リスクオンの状態、円安を伴う。
 
下段の図を見ておわかり頂けると思うが、2013年春の時点では実際の実質相場指数が推計値から大きくドル高方向に乖離している。こうした分析を基に、私は昨年春の時点では長期的のみならず短期・中期でもドル高方向に行き過ぎている(ドル反落リスクが高い)と判断したわけだ。
 
今回、2013年12月までのデータで再び回帰分析すると、昨年秋にかけて推計値がドル高方向にシフトする形で、現実値と推計値の乖離が縮小していることがわかった。これは日米のインフレ率格差(日本企業物価、米国生産者物価)が逆転した結果だ。(ご参照1月4日の以下ブログ)
 
ただしその後は再び現実値と推計値の乖離が広がっている。これは12月のデータで日米のインフレ率逆転の幅が少し縮んだ一方、ドル円が一段とドル高にシフトしたからだ。
 
ちなみに、以下の図表の最新時点2013年12月の平均ドル円相場は、名目相場103.42、実質相場指数105.91(1973年=100)、日本の企業物価対前年同月比2.5%、米国の生産者物価指数は同1.2%となっている。
 
既に1月4日のブログで述べたとおり、米国の生産者物価はシェール・ガス&オイルの増産を背景にエネルギー価格の抑制、あるいは低下でディスインフレ傾向にある。一方日本の企業物価は反対に円安と原発停止を背景にエネルギー価格の上昇が目立つ。 この変化は中期的に日米物価の動向に影響を与えそうであり、また2015年からは米国の金利引き上げも視野に入ってくるので、実質金利格差要因は当面ドル高要因として持続する公算が高い。
 
予測困難なのは社債リスクプレミアム(あるいはVIX指数も利用できる)に反映される投資家のリスク許容度の動向だ。割高感が出てきている米国株価が急反落すれば、投資家のリスク許容度の低下(リスクオフ)→リスクプレミアムの上昇→日本株売り、円買い戻しという動きに直結するだろう。
 
しかしながら、そうした米株の反落が、どういうタイミングでどの程度の規模で起こるかは事前には予測不能だ。合理的な予測は不能だから、とりあえず直感的な判断で、米国株、日本株は高値から10%程度、ドル円相場は105円のドル高値から5%程度の反落はいつ起こっても不思議ではない・・・と想定しておこうか。 反落の幅が大きい場合は、その倍(株は20%、為替相場は10%)程度の調整もあり得ると思っておこう。
 
投資スタンスとしてはこれまでと変わらない。
ドル円相場:
私はドル資産の68%までドル売りヘッジを入れた。今後110円前後まであればさらに売り上がる。
ドル反落があれば、多少買い戻してヘッジ比率を下げ(変化幅で10%程度)、また上がったところで売り直し、平均持ち値を引き上げるためのトレーディングもするつもり。
日本株:
日本株は高値更新局面をテイクチャンスして既に昨年保有していた残高の55%程度までは売ってキャッシュ化した。今年、日経平均1万8000円前後の水準まで上がれば、さらに売り上がろうか。  大反落したら恐る恐る一部買い戻してみようか。
米国株:
米国株は長期で永続的に保有する「コア持高」(昨年の最大持高の約3分の2)を残して売っちまったので、よほどの高騰がなければ現状維持。
マンション:現状維持。
 
参考論文:竹中正治、佐久間浩司 「2000年代の金融危機と外国為替相場の変動」(財)国際通貨研究所、国際経済金融論考、2013年6月
 
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米国を含む先進国経済は「長期停滞(secular stagnation)」に陥っているのかもしれない、という提起で話題をよんでるローレンス・サマーズが、それに対する処方箋をロイターコラムで語っている。
それを読んで分かった。
ちょっと回りくどい表現をしているが、これはアメリカ版の「3本の矢」である。
 
処方箋↓ 1月6日
長期停滞について↓ 2013年12月16日
 
 
日本語記事引用:「 長期的停滞という課題は、単に適度な成長率を達成するのではなく、金融面で持続可能な方法で、それを達成しなければ解決できない。それでは何をなすべきなのか。政策当局者は基本的に3つのアプローチの中から道を選ぶことになる。
 
第一のアプローチは、経済が抱える根深い供給面のファンダメンタルズとされるものに重きを置く。すなわち労働者の職能、企業のイノベーション能力、構造的な税制改革、社会保障プログラムの長期的持続性の確保といった問題だ。いずれも政治的には難しいとしても、一見して魅力的だし、実際長い目で見て経済の健全性確保に大いに寄与するだろう。しかし向こう5年から10年という期間では、大きな成果が期待できそうもない。」
 
これは長期的な成長戦略とそのための構造改革政策(アベノミクスの成長戦略に相当)のことだ。供給面での革新と成長力増進が目的である。 もっとも現状は需要不足であるから、長期的に供給量をアップさせる本件政策には、短期的な効果は望めないと言っている。ごもっともである。
もっとも長期的な成長力増進が期待されるようになると、現在の消費が増えるという間接的な効果は(それがどれほどかはともかく)あり得る。
 
近年の米国の政策を支配してきた第二の戦略は金利と資本コストを可能な限り引き下げながら、金融安定化は規制政策に頼るというものだ。こうした方策を講じなかった場合に比べ、経済が現在ずっと力強さを増し、健康を取り戻したのは疑いようがない。しかし成長率を大幅に下回る金利に長期間にわたって大きく依存する成長戦略は、大規模な金融バブルの出現とレバレッジの危険な蓄積を約束しているも同然だ。」
 
これは量的金融緩和政策(アベノミクスの大胆な量的金融緩和に相当)と金融規制改革のことを言っている。やはり副作用として資産バブルのリスクを懸念している。
 
「第三のアプローチ──これが最も有望だ──は、妥当な成長率と妥当な金利が併存できる状態を回復させる政策を通じ、所与の金利水準における需要水準を引き上げる方針を確約し続けることだ。まずは政府支出と雇用が毎年減少し続けるという悲惨な流れに終止符を打ち、経済の供給力が余っているこの時期をとらえてインフラの更新と補強を行うことだ。供給力の余剰がいかに経済の長期的潜在成長力を損なったかを踏まえるなら、政府が過去5年間にもっと投資していれば収入に対する米国の債務負担は今ごろもっと低くなり、将来の納税者に負担を課すこともなかった可能性は非常に高い。
需要の引き上げは、民間支出の促進を図ることも意味する。」
 
これは公共事業を含む政府支出の増加による需要創出政策(アベノミクスの機動的な財政政策に相当)のことだ。 ただし財政赤字の一層の拡大という制約が生じる。
 
アベノミクスは「3本の矢」の中でどれが一番望ましいか、あるいは重要かは特に優先順位を示していないが、サマーズ氏が公共事業を含む財政支出増加による需要創出を「最も有望」と言っている点が特徴だ。
従って財政赤字拡大を伴う財政支出増加による景気刺激策を嫌悪する米国の保守派から、サマーズ氏が叩かれている構図が良くわかる。
 
本件に関連した私のロイター社コラム(2013年12月17日)は以下サイト
 
追記(1月11日):サマーズ氏は11月のIMFでの講演では「長期停滞」を引き起こし得る諸要因について具体的に語っていなかったが、上記の12月のロイター掲載論考(英文)ではその点について語っているので私自身のノートとして以下に英文と私の和約を記載しておこうか。
 
quote: "There are many a priori reasons why the level of spending at any
given level of safe short-term interest rates is likely to have declined.
These include (i) reduced investment demand, due to slower labor force growth
and perhaps slower productivity growth;
(ii) reduced consumption demand, due to a sharp increase in the share of income
held by the very wealthy and the rising share of income accruing to capital;
(iii) on a global basis increased savings and increased risk aversion, 
as governments accumulate trillions in liquid reserves;
(iv) the continuing effects of the financial crisis, including greater costs of financial
intermediation, higher risk aversion, and continuing debt overhangs;
(v) continuing declines in the cost of durable goods, especially those associated
with information technology, meaning that the same level of saving purchases more
capital every year; and
(vi) the observation that any given real interest rate translates into a higher after tax
real interest rate than it did when inflation rates were higher. Logic is supported by
evidence.
 
For many years now indexed bond yields have trended downwards.
Indeed, U.S. real rates are substantially negative at a five-year horizon."
 
和訳:
任意の短期金利の水準に対応する支出水準がなぜ低下してしまったのかについては幾つもの原因が推測でき、以下の要因が含まれる。
労働力の伸び率低下とおそらく生産性上昇率の低下による投資需要の減少、
富裕層の所得シェアの急激な増加と資本分配率の上昇による消費需要の減少、
海外の諸政府の外貨準備の累積による世界的な貯蓄増加とリスク回避姿勢の強まり、
金融仲介コストの増加、リスク回避姿勢の強まり、引き続く過剰債務などを含む直近の金融危機の後遺症、
とりわけ情報技術と関わる分野での耐久財コストの継続的な低下(同じ貯蓄で毎年より多くの資本財を購入できることを意味するからである)、
インフレ率が高かった時よりも、実質金利水準は税引き後では高くなっているという認識。 
 
こうしたロジックには証拠がある。何年にもわたってインフレ連動債の利回りは低下してきた。実際のところ、米国の実質金利は5年間にわたってかなりマイナスである。
***
サマーズが所得格差の拡大と資本分配率の趨勢的な上昇(労働分配率の低下)を要因のひとつにあげている点は、デフレ要因との関連でも注目しておきたい。
 
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12月から一段と円安が進み、ドル円相場はしっかりと100円台に乗って来ましたね。今年のドル高値は?1ドル=110円とか115円とかの予想が一般的のようですが、以前から指摘しております通り、長期的には既にドル割高圏であることをお忘れなく。
 
以下にドル円の実質相場指数と名目相場のグラフを更新して掲載しました。弊著の読者はご承知のことですが、1973年以来の実質相場指数(日本は企業物価、米国は生産者物価ベース)の平均値からプラスマイナス10%を私は「フェアウェー」のめどとして、そこから下方はドル安・円高のラフ、上方はドル高・円安のラフと呼んでおります。
 
多くの方は、やはり私が勤務していた時に始めた国際通貨研究所のPPP(購買力平価)図表(以下)で90年代以降、企業物価・生産者物価ベースのPPPを名目相場が越えるとドル高値圏のサインだというようにご覧になっているでしょう。ただし、PPPはどの時点を起点にするかで、3種のPPPの位置関係も含めてグラフの形状ががらりと変わってしまいます(起点依存)。
http://www.iima.or.jp/research/ppp/index.html (国際通貨研究所、PPP図表)
 
ですから、特定の物価指数のPPPグラフをチャートの抵抗線や支持線のようなイメージで受けとめることは根拠がありません。これはエコノミスト風の方でも時々勘違いされている方がいるので強調しておきますね。
 
特定の起点に依存しない見方は、実質相場指数にして、その長期的な平均値を計測し、その平均値からの乖離を見ることでできます。 実質相場指数は以下の計算式で算出されるものですので、名目相場をPPPに照らしてみるということと同じことですが、長期の平均値を見ることで、特定時点の起点依存から生じるイメージのバイアスを回避できます。
   実質相場指数=名目相場/PPP×100
 
私が著作の中で強調しているように、名目為替相場がPPPから乖離と回帰を繰り返すということは、実質相場指数はその長期の平均値からの乖離と回帰を繰り返すということと同じことです。
 
現下の104円前後のドル円相場は明瞭にドル高のラフに突入してきました。もっともボール(相場)がどこまで深くラフに入り込むかについては、一般化できるような経験則はありません。私は昨年暮れから2014年のドル円相場はドルの高値圏は105円前後、オーバーシュートで110円前後もあるかもしれない、という予想でいました。今もそれは変わりません。
 
ちなみに現在の私のドル建て資産(株式と債券)に対するFXでのドル売りヘッジ比率は68%、平均ドル売り持値100円台です。
 
PPP,あるいは実質相場指数関連の最近の変化でちょっと気に留めておくべき点は、企業物価指数(米国は生産者物価指数)ベースでは、対前年同月比の変化で日米逆転が生じていることでしょうか。
日本の物価指数(2013年11月)は対前年比2.7%、米国は0.7%です(下段の図)。
 
1970年代以降で見る限り、日米のこの物価指数の逆転は極めて短期的にか生じていません。物価指数の内訳を見ると、日本では「電力・都市ガス・水道」(ウエイト5.3%)が前年同月比+10.8%、「石油・石炭製品」(ウエイト5.7%)が+12.6%となっており、一方米国の生産者物価指数は足元でエネルギー関係の項目の低下が見られます。
 
すなわち、円安で海外からのエネルギー関係の価格が日本では上がり、米国ではシェールガス、シェールオイルなどの増産でエネルギー価格が下がっていることが主因で、企業物価、生産者物価の日米対照的な変化が生じているようです。 この要因は、特に米国については、中期的に持続しそうですから、注意しておく価値がありうそうです。
 
例えば、2%の同物価指数の日米逆転状態が1年続けば、PPPは約2円ドル高・円安方向にシフトしますからね。
 
追記:最下段に1995年3月を起点にしたPPP図表を添付しました。図表の形状が様変わりになることをご覧ください。
 
追記2:(1月8日)
ロイター社コラムでカレツキー氏が2014年の日本について「再度景気後退、株価暴落」との強く悲観的な見方を述べています。
私は4月の消費税引き上げ後に消費の反動減は必然的にあるものの、景気後退に逆戻りはないとコンセンサス予測に近い見方をしています。

どうなりますかね?6か月後にレビューしてみましょう。

記事:「日本は2014年の期待を裏切る主要な国となる可能性が高い。昨年アベノミクスで沸き上がった市場への楽観も損なわれてしまうだろう。
4月に行われる消費増税は、景気の腰折れを防ぐためのその他の措置を考慮したとしても、日本を第2・四半期までに景気後退へと逆戻りさせ、株式市場も暴落する。日銀が金融緩和を強化し、これ以上円安が進んだとしても結果は変わらないだろう。」
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYEA0502D20140106
 
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