たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2014年05月

毎度のトムソン・ロイター社での論考です。本日(5月28日)午後に掲載されました。
↑ ご覧になってよろしければ、ロイターサイトで「おすすめ」とかクリックお願いします。
 
一部抜粋引用:「今後の米国経済は趨(すう)勢的な「減速成長・低失業率」の局面に移行するだろう。これは矛盾ではないし、悲観的になることでもない。
 
その結果、段階的に縮小されている現行の量的金融緩和第三弾(QE3)は、現在見込まれている通り今年10月前後には終了し、来年の中頃にはゼロ金利解除、つまり最初の利上げが実施される可能性が高い。ただし、その局面で米連邦準備理事会(FRB)はQEの最後で最大のリスクに直面することになる。以下、順を追って説明しよう。
 
2000年代前半までの趨勢的な成長率3%強から労働力伸び率の低下分を差し引けば、今後の趨勢的な実質GDP成長率が2%台となるのは人口動態の変化から見て自然なことに過ぎない。FRBメンバーの予想も今年から来年は3.0%前後の成長を見込んでいるが、それ以降の予想の平均値は2%台だ。
 
この減速はいわゆる「ニューノーマル論」として語られる「金融危機の長期後遺症」などとは全く関係のない「はるか以前から人口動態的に見込まれていたこと」に過ぎない。金融危機の後遺症について言えば、米国では家計も金融機関も、金融危機による資産価格の急落が引き起こしたバランスシート調整はとっくに終了している。
 
インフレ率の見込みはどうか。2005―14年のデータに基づいて、FRBが重視している物価指標である個人消費支出(PCE)価格指数(前年同期比、除く食品とエネルギー)と失業率の相関関係(いわゆるフィリップス・カーブ)を見ると強い負の相関が確認できる(相関係数は-0.79、決定係数は0.62)。この関係性をベースに判断すると、今年から来年にかけて予想される失業率5―6%のレンジに相当するPCE価格指数は2.0―2.5%である。
 
現在の同価格指数は1.2%(3月時点、前年同月比)とFRBが望ましいと考える2%を下回っている。しかし、失業率の低下にしたがって賃金(総平均週間給与)は4%台の伸びとなっており、1年後には一層の雇用改善と並んで消費者物価指数も2%台に乗せてくる可能性が高そうだ。消費者物価指数も2013年以降1%台後半(前年同月比)だったが、4月は総合で2.0%、食料とエネルギーを除くベースで1.8%と上がってきた。
 
失業率の低下、インフレ率の穏やかな上昇見込みを総合すると、今年の10月前後にはQEの終了、そして来年中頃にはFRBがゼロ金利解消に踏み出すという見通しは無理のない自然な見込みだろう。
しかし、このQEからの出口の際に最大のリスクが待ち受けている。
 
繰り返しQEの終了から金利の引き上げまでには相応の期間があり、その後の金利の引き上げのテンポもおそらく緩やかだろうとFRBが繰り返しているのは、景気と市場への配慮のように受けとめられているようだが、実は連銀のバランスシートと巨額損失リスクへの配慮も含意しているのだ。
 
最後に言い添えれば、日銀も同様のリスクを抱えている。しかも、量的金融緩和期の短期と長期金利の金利格差が日本では米国よりずっと小さいので日銀の収益は米国連銀よりもずっと小さい。このため将来の金利上昇に対する耐久力も日銀の方が小さく、より大きなリスクを抱えていると言えるだろう。」
***
 
補足説明:
下図の上段はロイター社サイトに掲載されている米国に関するGDPの変化と失業率の変化の負の相関(オークンの経験則)を示す散布図です。
 
ロイター社サイトでは図はひとつしか掲載できないので、下段は非掲載の消費者物価指数(PCEベース)の変化と失業率の負の相関(フィリップスカーブ)を示す散布図です。 
 
2005年以降の傾向では高い負の相関がありますが(青い近似線)、2012年以降だけを見ると(赤い近似線)相関関係が正になってしまっています。つまり失業率の低下とインフレ率の低下が同時に生じている。
 
この2012年以降の傾向を一時的とみるか、もう少し長引く傾向と見るかで、目先のインフレ率に対する見解は分かれます。私はあくまでも一時的な傾向と見て、本来の長期的な関係である負の相関関係(黒い近似線)に戻ると考えています。しかしこの逆傾向が長引くと判断するなら、FRBの金利引き上げは見込みより遅くなり、その後の引き上げも現在予想されているよりも遅いものになるという見方が出来ます。
 
実際に、JCER(日本経済研究センター)の愛宕チーフエコノミストはインフレの下振れが続き、「金利引き上げは遅れる」という見解を述べています。↓
 
私も愛宕氏も現状までの事実認識では齟齬がほとんどなさそうなので、これは将来予測のさじ加減の差だと言えるでしょう。ただし債券相場やドル円相場への短期的な影響は、どちらの見方をするかでずいぶんと違ってくるでしょうね。 1年ぐらい経ったら振り返ってみましょう。この点では私もそれほど決定的な自信があるわけじゃありませんがね・・・(^_^;)
 
追記:しまった一か所書き間違い。
「定数「‐C」はGDPの変化と失業率の変化の負の相関関係を示す相関係数である」誤
「定数「‐C」はGDPの変化と失業率の変化の負の相関関係を示す係数である」正
 
追記(5月29日):私の論考、今朝のGunosyメールの上から2番めに掲載されてる。
ロイターへのアクセスが増えそう。私の報酬は増えないけどね(^_^;)
 
追記(5月30日):悲観論、WSJ記事、記録しておきます。
 
 
 
 
 

少し前に書いたブログ、データと図を添えて再論し,Yahooニュース個人に掲載しました。
以下のその内容です。
 
***
人手不足に関する報道が増えている。特に不足が著しいのが、建設、介護、外食、小売り、運輸だ。外食系のすき屋やワタミでは人手不足で営業時間を減らしたり、店舗の一部閉鎖をする動きが報道されている。
 
明らかに日本経済は、2012年までの需要不足(マイナスのGDPギャップ)の状態から、労働供給がボトルネックになる局面に移行しつつある。掲載図は有効求人倍率(除く新卒、含むパートタイム)と失業率の1980年以来の散布図である(月次データ)。これを見ると、1980年以降の日本の労働市場の変化と現在の位置が良くわかる。
 
当然のことながら有効求人倍率と失業率の間には負の相関関係がある。図上での各時点の分布は右肩下がりになるということだ。青い点が1980年から94年までの分布であり、相対的に低失業率のレンジで有効求人倍率と失業率の傾斜は緩やかだった。景気循環による変動はあるものの、雇用をめぐる需給は総じて人手不足が支配的だった時代と言える。
 
その状況が一変するのが赤い点で示した1995-99年の時期だ。分布の近似線の傾きが急になって高失業率を意味する上方にシフトしていることがわかる。これが1997-98年の銀行不良債権危機(国際的にはアジア通貨危機)を挟んだリストラ・労働需給ミスマッチの時期だ。
 
緑色の点で示した2000年代以降になると失業率は80年代の低いレベルまでは戻らないが、近似線の傾きは再び緩やかになり、景気循環に従って右肩下がり(左肩上がり)に分布する安定的な関係が戻った。
 
このように俯瞰すると90年代後半が日本の労働市場の構造的な転換期であったことがよくわかる。企業の採用行動もこの時期に変わり、業績悪化に対応したリストラだけでなく、正規雇用の抑制、非正規雇用の増加という今日まで続く行動が90年代後半から一般化した。
 
さて現在の位置は緑色で示した2000年以降の分布の右下下限にあることがわかる。景気の回復が続いた2007年の位置と同じだ。この事実は短期的、長期的に2つのことを示唆していると言えるだろう。
 
短期:人手不足の業界を中心に賃金上昇の圧力が働き始めてる。上記掲載の記事もパート労賃の上昇を語っている。企業利益も既にリーマンショック前のピークとほぼ並ぶ水準まで回復しているのだから、企業部門全体としては賃金上昇の余裕もできているはずだ。
 
長期:日本経済の趨勢的な成長率引き上げのためには、次のような構造的な改革、改善が必要であり、それなくしては成長の壁にぶつかるということだ。(1)女性労働、高齢者などの就労増加による労働参加率全体の上昇、(2)生産性の上昇、(3)雇用余剰部門から不足部門への労働シフト(別に直接シフトである必要はない)、(4)設備投資の増加など。
 
(3)は労働需給のミスマッチの問題だ。有効求人倍率は今年3月時点で1.07と上昇してきたが、求人倍率の分布は業種、職種によってばらつきが大きい。以下の厚生労働省の「職業別労働市場関係指標」を見て頂くと、それがわかる。
 
 
求人倍率が総じて高い職業は、専門的・技術的職業(とりわけ医療、情報、建設、社会福祉関係)、 販売、輸送(自動車運転)、建設現場の職業だ。反対に事務的職業は0.34ととても低く、とりわけ一般事務は0.28とこれ以上ないほどの低さだ。
 
事務的職業は昔はもう少し求人倍率が高かった時代もあるが、90年代以降の労働環境におけるIT関連を中心とする技術革新を考えれば、この分野の労働需要の趨勢的な減少は当然の結果だとわかる。すなわち付加価値の低い一般事務労働は各種のオンラインシステム、パソコンソフト、インターネット機能によって急速に代替されて来たのだ。
 
例えば1970年代~80年代頃までならば、銀行の支店は日常業務を遂行する上で大量の一般事務労働者を必要としていたが、今日ではそうした多くの労働がATMやオンラインバンキングの普及で「機械」に置き換わっている。今後もこのトレンドは続くだろう。
 
その結果、生じたことは一般事務労働に従事していたホワイトカラー労働者層の分解、2極化だ。より高いスキルを身につけて付加価値の高い専門的・技術的職業にシフトする人々と、そうでない人々の2極化である。これは先進国を中心に90年代以降世界的に進んだトレンドである。
 
私は今は大学教員なので、大学で今、あるいはこれから学ぶ若い諸君にこのことを理解して欲しい。目的意識もなくぼんやりと大学を卒業し、これといったスキルも身につけていないのに、ミドルクラス以上の所得が得られるという環境は今日ではほとんど存在しない。
 
付加価値の高い仕事をできるだけの知的なスキルを習得するか、あるいは「そういう勉強は苦手」というのであれば、大学で4年間の時間とお金を浪費せずに、例えば(あくまでも例えばであるが)大型建設機械の操縦資格でもとって現場で働く方が、ずっと職にありつけやすい、そういう時代に移行しているのだ。
***
 
追記(5月22日):日銀の黒田総裁も私とほとんど同じこと言っている。
ま、エコノミストの良識だろうな(^_^;)
引用:「(黒田)総裁は、これまでも成長戦略の重要性を訴えてきたが、ここにきて、より発信が直接的かつ具体的になっている。 デフレ脱却に向けて」をテーマに15日に都内で行われた講演では、締めくくりに供給問題をとりあげ、金融・財政政策などによる需要の高まりに伴って「水面下に隠れていた供給力の問題が姿を現した」と問題提起。
 
中長期的な課題としながらも「今が課題を解決していく好機」と議論を促し、供給力を強化することが「デフレからの脱却と日本経済の復活をつなぐ、最後の、そして最も重要なピース」と断言した。
 
さらに21日の記者会見では、中長期的な成長力を高めていくには、3つの要素が重要と踏み込んだ。
具体的には、1)企業における前向きな投資を促す、2)女性や高齢者などの労働参加を高め、高度な外国人材の活用で労働の供給力を高めていく、3)規制・制度改革を通じて生産性自体を向上させていくことが「非常に重要」と指摘。」
 
 

他人に対してネガティブな感情を興奮させると、自分自身に対してもネガティブな感情が生じる。情動を支配する旧い(原始的)脳の部分は主語を理解できないからだ。
以下の精神科医、星野概念氏によるブログ、これはなかなか合点の説明だ。
 
http://modernfart.jp/2014/05/12286/
上記ブログに関連したNAVERの記事↓ (星野氏の説明の方が遥かに納得感が高い)

引用:「何らかの現象や言葉によって感覚の入力があると、扁桃体によって、その感覚が「快の情動」か「不快の情動」か判断される。それに基づいて反射的、本能的に情動行動が起こる。

情動行動までは原始的な脳による処理。この時点で主語の識別は出来ておらず、現象や言葉自体が危険なものであれば、自分のことで...
なくても本能的に「不快の情動」と判断する。

人間で最も発達している大脳新皮質は、行動を本能的なものにまかせず、その場を読んで情動行動を抑制し、合理的な行動を起こす。その場を読む、ということは、主語をはっきりさせるということでもある。これは反射的で本能的な情動行動に比べて、場を読むために、少し時間がかかる。

(SNSで)たまたまネガティブなつぶやきを連続して閲覧した場合、それに伴う不安定な情動は積み上げられていく可能性があります。そうすると、原因不明の不安感、イライラ感が膨らんでいくことになり、それに任せて、今度は衝動的な発信をする側になることもあります。そうなると、負の無限ループのような状態が発生する可能性もあります。」
***

そういうことは直感的にはわかっていた。だから私はfacebookでもブログでもネガティブなことはほとんど書きません。背後に恨みや妬みの心理があるな・・・と感じさせる投稿などは「非表示」にして消す。

反対に他人のポジティブな出来事、快挙に対しては「素晴らしい!」と思うようにしている。

そうすると主語を理解できない旧い脳が勝手に興奮してくれて、自分自身にも「素晴らしい」というポジティブな情動が生じるようだ。それが「自分だって素晴らしいことができるよ」という気持ちを起こすためのベースになるのだと思う。(^^)v
 
関連して以前書いた私のブログ、以下ご参考まで
「元気が出る電脳ネットワークのつくりかた」

ほんまかいな?にわかには信じられなかったが、でもそれが少なくとも真実に近いんだろうな・・・と感じた記事。
まあ、以下のYahoo financeに掲載された記事、ご覧ください。
 
世界のほとんどの人はお金の管理方法がわかっていない。
以下の質問にお答えください。
1.  Suppose you had $100 in a savings account and the interest rate was 2 percent per year.
After five years, how much do you think you would have in the account if you left the money to
grow?
A) more than $102; B) exactly $102; C) less than $102; D) do not know; refuse to answer.
 
2.  Imagine that the interest rate on your savings account is 1 percent per year and inflation is
2 percent per year. After one year, would you be able to buy
A) more than, B) exactly the same as, or C) less than today with the money in this account?;
D) do not know; refuse to answer.
 
3.  Do you think that the following statement is true or false?
“Buying a single company stock usually provides a safer return than a stock mutual fund.”
A) true; B) false; C) do not know; refuse to answer.
 
The correct answers are 1-A; 2-C; and 3-B.
 
In Russia, 96 percent of those surveyed could not answer the three questions correctly.
While that might be expected of a post-communist nation, the mecca of capitalism didn’t
exactly yield glowing results—only 30 percent of Americans aced the quiz.
 
The best-performing respondents were the Germans (53 percent got a perfect score) and
the Swiss (50 percent), but this still leaves almost half of each country’s population without
a basic understanding of financial matters.
In countries with relatively strong economies, the numbers are sobering: 79 percent of Swedes,
75 percent of Italians, 73 percent of Japanese, and 69 percent of French could not respond
correctly to all three questions.
 
These findings were recently published by two economists, Annamaria Lusardi and Olivia Mitchell, and the results reveal startling levels of financial illiteracy across the world.
*****
この種の調査は、同じ調査をしても調査ごとに結果にはばらつきが生じるので、回答率の数字をそのまま鵜呑みにするのは危険だ。第1問と第2問のように初歩的(極めて初歩的な)算数がかかわる認識力は米国人と日本人を比べると日本人の方がずっと高く出るので、上記の全問正解率が米国で30%、日本で27%(=100-73)というのは直感的に???な感じだが、まあ3%程度は誤差の内だろう。
 
問題の要点は先進国で教育を受けた人間でもほぼ半分以上が3問全問正解できないということだろう。
これでは現代の様々な金融現象を理解するどころか、初歩的なレベルで合理的な金融判断すら、人口の過半数の人間はできていないことになる。
 
これが現実ならば、行動経済学の研究成果を引き合いに出すまでもなく、「経済主体は合理的な選択を行う」という標準的な経済学の大前提は、修正するというよりも、一度捨ててかかるしかないことになろうか。
金融リテラシーの教育は急務というべきか、それともむしろ絶望的と言うべきか。以下の記事の指摘も重要。
quote:“They call attention to a perilous paradox: Financial ignorance is widespread even as the
world has changed in ways that make such ignorance more dangerous than ever before.”
 
う~ん、やはり自分でやってみないと信じがたい。さっそく明日大学の学生相手に3問やらせてみよう。
結果は追ってご報告しよう。
 
追記:
早速本日3年生竹中ゼミ生20名対象にテスト実施
第1問 全員正解
第2問 全員正解
第3問 15人正解 5人不正解
全問正解率75%、不正解率25%
 
第3問で不正解が出たのはmutual fund(投資信託)についてテキストでは既にやっているのだが、
 具体的なイメージを持てなかっただめだろうか・・・・
 

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