たけなかまさはるブログ

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2014年11月

野村総合研究所が11月に発表した日本の家計の金融資産分布の推計データが興味深かったので、ここで紹介しておこう。
「日本の富裕層は101万世帯、純金融資産総額は241兆円
~ 2年間で世帯数は24.3%、純金融資産総額は28.2%増加 ~」
 
引用:「2011年から2013年に、富裕層および超富裕層の保有する純金融資産総額は、それぞれ
16.7%、65.9%増加し、合わせて28.2%の増加となりました。
富裕層および超富裕層の保有する純金融資産総額241兆円は、NRIが推計した2000年以降のピークである2007年の254兆円には届きませんでしたが、2009年、2011年の推計結果(それぞれ195兆円、188兆円)を大きく上回りました。」
 
これだけを読んで、「やはりアベノミクスの恩恵は富裕層、超富裕層だけだ。『トリクルダウン』なんて嘘っぱちだろう」と条件反射的な反応をする方もいるようだが、まずはデータ全体を幾つかのグラフにまとめたのでご覧頂きたい(以下掲載図)。
 
まず上段左の図、これは次の通り分類された格世帯層が保有する純金融資産の全体に占めるシェアである。
保有純金融資産による分類
超富裕層:5億円以上
富裕層:1億円~5億円
準富裕層:5000万円~1億円
アッパーマス層:3000万円~5000万円
マス層:3000万円未満
 
2000年と2013年を比べると、アッパーマス層~超富裕層はシェアを伸ばしているが、マス層は48.3%から41.9%にシェアを落としているので、この点ではじんわり格差が広がっているように見える。
 
上段の右図は、各層の世帯数のシェアであり、約80%がマス層、超富裕層は0.1%、富裕層が1.8%(2013年)で、この比率は2000年以降極めて安定しており、目立った変化がない。
 
この両図を合わせると、超富裕層と富裕層の世帯(全体の1.9%)が保有する純金融資産のシェアは18.8%、一方全体の約80%を占めるマス層の同シェアは41.9%であることを確認しておこう。
 
下段の左図は各層が保有する純金融資産総額の推移である。リーマンショックの後に概ね各層とも減らしているのは株価の下落によるものと思われるが、マス層のみはリーマンショック前の2005年から07年にかけて資産が減少し、07年から09年にかけては10兆円増えており、他の層とこの点でちょっと違った変化をしている。その理由はわからない。
 
下段右図は、各層の1世帯当たりの平均純資産保有額の2000年から13年への変化を示したものだ。
全世帯平均では10%増えている。一方、超富裕層を見ると、世帯数が6.6万人から5.4万人に減る一方、純金融資産総額は43超円から73兆円に増えているので、1世帯当たりの平均では約2倍に跳ね上がっている。 これだけ見ると、超富裕層内部で淘汰と集中が進んでいるようにも見える。
 
ただし注意しなければならないのは、レポートに記載されている通り、本件が対象としている資産は金融資産のみで、不動産が入っていない。 したがってマンションや土地など不動産保有者が、それを売って金融資産にシフトすると一躍カテゴリー上は特進する。 反対に大口の金融資産保有者が、マンション投資などにシフトすると一気に下位のカテゴリーに落ちることになる。 
 
例えば私などは、2000年頃には有り金をはたいて、借金をして、マンション投資に傾斜し始めた時期なので金融資産・負債だけをとるとなんと「債務超過」であり、カテゴリーを追加すればマス層の中でも最低の「債務超過層」となってしまう(^_^;)。 この点は、投資用不動産資産を含めていない当該データの限界であろう。
 
しかしながら、数億円の金融資産を保有する世帯がボロ家に住んでいるはずがないし、高級マンションや戸建て邸宅に住んでいる世帯、また山林など保有する地主の多くは、相応の金融資産を保有しているはずだ。だから家計の金融資産保有残高と不動産保有残高の間には相応の相関関係があると見て良いだろう。
 
さて、そういう前提で以上の金融資産分布を米国と比べてみよう。以下の米国のデータは不動産を含んでいるので、同じベースではないが、富の集中度を比較する目安にはなるだろう。
 
米国ではFRBが不動産も含めた家計の資産・所得調査を包括的に行なっている。以下のwikiに掲載されたデータも、FRBのデータの他複数のデータソースによる推計であろう。
 
これを見ると、米国ではトップ1%が家計層資産の34.6%(2007年)を占めている。上記の日本では超富裕層と富裕層を合計したトップ1.9%で18.8%でしかないことと大きな違いだ。
 
一方下層を見ると、米国ではボトム80%が保有する資産シェアは27.1%に過ぎない。日本では上記の通りボトム80%は41.9%である。
 
というわけで、金融資産・負債のみ(日本)と不動産も含めた(米国)のベースの違いはあるものの、超格差社会米国と相対的な低格差社会日本の違いが浮き彫りになったであろうか。しかも日本については上段右図が示す通り、金融資産額でカテゴリーした各層の世帯数は過去13年間安定している。
 
もっとも、マス層の内部で分解と集中が起こっているかもしれない。また、中間の3層の間でも上方に上がる世帯と下方に落ちる世帯の移動が当然起こっているだろう。その辺の動的なデータも手に入ると面白いのだが、この種の時系列的な移動データというのは調査作成がなかなか難しいようだ。
 
 
 
 
 
 
 

毎度のトムソン・ロイター社への寄稿です。ただ今掲載されました。↓
 
冒頭部分引用:「黒田日銀の追加緩和策「ハロウィン・サプライズ」と公的年金運用改革のダブル・インパクトでついに115円までドル急騰・円急落の展開となった。筆者も「110円越えはドル金利が実際に上がり始める来年か」と思っていたので意外な急展開だが、短期の相場変動というものはそもそも意外性を伴うものだ。
 
こうした状況になると「来年のドル円相場のドル天井圏は120円だろうか、いやもっと上がるか」との相場談義も増えてくる。為替相場に限らず、長期投資に欠かせないのが相場の割高・割安を判断する大局観だ。結論から言うと、目先はドルが上がる勢いだ。
 
しかし、110円台にのせたドル円相場は、日米のインフレ率を勘案した実質相場指数で見ると、1985年のプラザ合意以前の80年代前半に見られた「スーパードル高」期のレンジに入り始めている。長期的にはドル売りが報われる可能性が高い・・・」
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株価も円相場も荒い値動きですね。今週は明日金曜日米国雇用統計の発表、NY市場でまた荒れそうな感じもしますが、まあ短期の変動はわかりませんわ。われわれ一般個人投資家は波乱相場には距離をおいて対処するのが一番だと思います。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
↑New!YouTube(ダイビング動画)(^^)v

日銀黒田総裁のイニシアチブによる追加の量的金融緩和政策で円安、株高が一段と進んだが、不安の種もはらんでいる。
 
円高&株安が逆転して、円高修正、円安と株価の上昇が同時に進行するのはもちろんこれが初めてではない。大きな局面としては1995年に1ドル=80円まで進んだ円高が反転して円高修正、円安になった1995年から96年の局面があった。(下図参照)
 
この時、円高反転の「音頭取り」は大蔵省の榊原国金局長だった。ヘッジファンドなどまで焚き付けて円売りの動きを作ることに成功した。 株価も反転上昇した。
 
しかしヘッジファンドら投機筋との蜜月が続いたのは1996年年央までのことだった。円売りで儲けたソロスをはじめとするマクロ系ヘッジファンドは、タイバーツやマレーシア・リンギットなどでドルショート持高(ドル借入、現地通貨転換)が莫大に積み上がっていたことに着目して、これら通貨の売りを仕掛けた。
 
それが劇的に成功してしまい、97年からこれら通貨は下落を始め、とうとう同年7月にタイ政府は自国通貨買いの介入を諦め(外貨準備が底をつき始めたのだ)バーツ暴落となった。 マレーシア・リンギットやインドネシア・ルピーも同様の暴落となった。
 
日本では当時銀行が莫大な未処理不良債権という爆弾を抱えていたので、アジア通貨危機は日本にも波及し、97年以降は円売り、日本株売りの展開になってしまった。
 
今回の局面も、アベノミクスの当初からだけでなく、追加金融緩和の10月31日以降の局面でもマクロ系ヘッジファンドなどが円売り、日本株買いで大きく動いているそうだ。
 
11月6日付の日本経済新聞は市場関係者への取材に基づいて次の様に書いている。
引用:「真っ先に動いたのが、マクロ指標や金融政策を見て動くグローバルマクロ系のヘッジファンドだ。彼らの一角は緩和を予想していたのか、フライング気味に動いていたようだ。
 「何だこの大量買いは」。証券各社のトレーダーたちがいぶかったのは1031日の寄り付き直後のことだった。海外ファンドとみられる投資家が、ある米系証券を通じて1万6250円の日経平均コールオプション(買う権利)に約6800枚の買い注文を業者間市場で出した。想定元本で1千億円に相当する大口買いだ。
 他の証券会社は一斉に売り向かったが、数時間後の日銀の追加緩和発表にひっくり返った。「やられた、すぐ先物を買え」。コール売りのリスクを減らすための証券会社の先物買いが、相場上昇に拍車をかけた。」
 
***
11月6日本日もニュースもない中で突然、日経平均先物が大量に売られて急落する場面があった。大方ヘッジファンドなどから大口の利食い売りでも出たのだろう。 
 
安倍政権と日銀黒田総裁の下で円高修正と日本株価回復が実現したのは、円売り・株買いの政策的な材料をヘッジファンドなどを含む海外の投資家層に与えることに成功したからだ。 私はそれ自体、市場参加者の望ましい期待転換を果たしたものとして評価しているが、同時に97-98年のような状況に将来転換してしまうリスクもはらんでいると思う。
 
今回局面では銀行の不良債権問題などはない。日本では株も不動産もまだバブル的な状況は見当たらないと思う。では何が、リスクの種だろうか? やはり膨張した政府債務問題と国債かなと思う。
 
この点でアンチ・リフレ派の論者には「日銀は蟻地獄にはまった蟻のように永遠に国債買いからEXITできない」と言っている方と、「インフレになった時に国債保有で大きな損失を抱える」と言っている方がいる。双方は両立しないから、双方とも主張している方はいないだろうと思うが・・・(^_^;)
 
「永遠に量的緩和から抜け出せない」というのが本当なら、私にはそれはリスクには思えない。日銀が900兆円に及ぶ国債を全部買い尽くしても、マイルドインフレにならないなら、インフレ目標は未達におわる。しかし政府債務問題は事実上解消してしまうことになる。日銀は組織的には政府から独立しているが、機能的には政府部門の一部だからだ。
 
問題はやはりインフレ目標が達成された時のEXIT局面のリスクだ。 過去繰り返し日本国債売りを仕掛けて失敗し、損切り・撤退してきたヘッジファンドなどが、ここぞとばかりに日本国債売りを仕掛けてこないだろうか。その時に、円売り、日本国債売り、日本株売りというトリプル安になるリスクはないだろうか。まあ、そうならないことを祈りつつ、リスクシナリオとしては頭に入れておこう。
 
量的金融緩和のEXITリスクについては以下のロイター論考をご参照。
 
 

来年から相続税の基礎控除額が大きく減額され、税率も一部引き上げられる。その対策のためにマンションを購入する動きがある。 マンション業者や仲介業者も相続税対策顧客を引き込もうと動いている。
 
相続税の改正については以下国税庁のサイトご参照
 
マンション購入・相続にした場合、「購入額>相続税評価額」となるので確かに節税効果がある。
 
しかし新築を買えば「新築プレミアム」が約20%ものっている。購入後テナントを入れた時点で即20%市場価格が下落する。    中古で買っても、現在の中古価格は東京都区部では2012年の底値圏から約13%も上昇しており、家賃との比較で割高感が強まっている。 急いで買おうとするほど、割高な価格をつかむリスクが高くなる。 
 
ロイターの論考やこのブログで書いてきた通り、買い時は2013年前半で終わってしまっている。長期的な観点から合理的な投資を志向するならば、次の不況、景気後退局面までマンション購入はやめた方が良いよ、というのが私の投資判断。
 
ロイター掲載論考、2013年4月
 
以下掲載の東京都区部の中古マンションの価格、賃料、PRR指数(Price Rent Ratio=価格/賃料)の推移をご覧頂きたい。PRRの示す割高度は既にリーマンショック前に不動産プチバブルとなった2007年を越えた。
 
今後、賃料が上がり、価格が上がらなければ、割高度は低下する可能性もゼロではない。しかし賃料が上がる条件は、所得が上がることだ。つまり景気回復が腰折れずに継続するということ、しかしゼロ金利でマネージャブジャブにしている環境で景気回復が続けば、どう考えてもマンション価格もさらに上がるだろう。その場合はPRRが示す割高状態は解消しないということだ。
 
逆にもし景気が腰折れてしまったら、価格は今が循環的なピークで今後下がる。 そうなるかどうかはわからないが、2007年の割高水準を超えた今の局面でひとつぐらいは売っておこう、という判断に至った。そこで私が保有しているマンションのうち、築年数、保有期間ともに一番長いものを売りに出したわけだ。
 
仲介業者を換えながら粘っていたかいがあった。2002年に準新築で当初価格より20%強ほど値引いて買ったマンション(ローン・キャンセルで売れ残った最後のひとつ)だが、買った時よりも約10%高く売ることができた。もっとも仲介業者に払う仲介手数料、これから払う譲渡益に対する税金などを差し引くと、買値とあまり変わらない価格、つまり手数料&税引き後でキャピタル・ゲインはゼロに近い。
 
しかしそれで良いんだ。この投資はEXITまで辿りついて十分に成功、なぜか?賃料所得のリターンで稼いできたからだ。 ローン7割でスタートした当初の5年間はレバレッジが効いているので、自己資金に対する投資リターンは年率10%をゆうに超えていた。 2007年に別の中古物件を売った余資でローンは返済したので、2008年以降の年率リターンは約6%弱に低下した(賃料は全額私の純所得となった)が、12年間のIRR(内部収益率)を計算すると約7%だった。
 
7%という年率リターンは10年間複利で運用すると資産価値が倍になる水準だ。過去のデフレ下の日本では十分なリターンだと思う。
 
以下のグラフを見て、それでも今から買って勝ち越せると思うのは、かなりの強気だろう。勝てる確率が明らかに低下しているのに、無理に強気で投資を実行するというのは、危ない。
 
追加情報(11月20日):「都心高層マンションに群がる富裕層たち、本当に相続税対策に有効か」
 

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