たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2015年10月

本日午後、掲載されました。

トムソン・ロイター・コラム

冒頭引用:「2012年11月の総選挙以来、ほぼ3年となるアベノミクスのマクロ経済面の実績をまず手短に総括してみよう。成功分野も不振分野もあるが、目下の日本経済の成長阻害要因となっているのは、企業利益や雇用の回復にもかかわらず起こっている「賃金抑制」だ。

これを乗り越えないと目標の実質成長率もインフレ率も達成できないまま、再び不況となり、株価や不動産などの資産価格の下落とともに円高デフレに戻ってしまう危険がある。

筆者はアベノミクス開始以来、日本経済について楽観的な見通しを維持してきたが、今年の夏以降は中国経済の急失速というリスク要因に加えて、予想以上に執拗(しつよう)な賃金抑制で日本経済の先行きには「黄色信号が点灯した」と判断を修正した。以下、その理由を説明しよう・・・」





長期的マクロ的視点からの日本株(株価指数)の割安・割高を判断する基準を模索してきた。その種の指標として米国のS&P500に関するShiller Perについての私の考え方は、以前ロイター社のコラムにも書いた通りだ(以下)。

「米株は割高か、Shiller Per軽視は禁物」 ロイター社コラム、2015年2月(上段図ご参照)

引用:「高値を更新し続けてきた米国株価については、1―2年前から「割高だ。バブルだ」「いや問題ない」などブル対ベアーの議論が展開されてきた。米国株式は変動性が大きいものの「バイ&ホールド」の長期保有が報われるので筆者自身は原則保有継続のスタンスだが、リーマンショック後のような割安感はすでになくなっている。

したがって、ポートフォリオに占める比率はある程度落とし、目立った反落(直近の高値から10%前後がめど)があれば買うスタンスが合理的だろうと思う。その理由を説明しよう。

・・・・・シラーPERの水準は各時代のそうした事情に影響を受けていると考えられる。逆に言うと、各時代にそうした事情が働いているにもかかわらず、過去100年以上にわたるシラーPERの平均値一本で割高・割安を判定しようとすること自体に無理があるのだと筆者は考えている。

<それでもシラーPERは無視しない方が良い>
ただ、シラーPERのそうした限界性に配慮して使用するなら、長期的な投資判断の参考になると筆者は考えている。」
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誰も作ってくれない日本版Shiller PER
日本株でもShiller PERに準じたものが欲しいと思うのだが、これを私ひとりで作成、更新するとなると莫大な手間がかかる。 例えばTOPIXを対象にそれを作るとして、TOPIX銘柄全ての企業の一株当たり利益を計算し、加重平均しなくてはならないからだ。 どこか大手の証券会社で作成・公開してくれないかとも思うのだが、そういう動きはないようだ。

株価時価総額とGDP(むしろGNIだろうと思うが)の比率を見るのがお好きの方もいるようだが、国民所得に占める企業利益の比率は趨勢的に変わるので、雑過ぎると思う。

マクロの時価総額・利益比率に注目
仕方がないので、簡便法で東証1部企業の株価時価総額と法人企業統計(財務省)から四半期ベースでとった営業利益(資本金10億円以上、除く金融・保険)との比率に、長期的な安定性がないかどうか調べてみた。

もし、この比率が長期的な平均値に対して乖離と回帰を繰り返すような(私が為替相場で強調している実質相場指数の長期平均値からの乖離と回帰と同じ様な)性質が確認できれば、それを長期的な割高・割安の判断指標に使える可能性があるからだ。 

その結果できたのが下段の図だ。時価総額を営業利益で割った比率(図の黄色い折れ線、これは趨勢的なPERに準じた比率と見て良いだろう、「時価総額・利益比率」と呼ぼう)は、その線形近似線を描くとほぼ水平になる(図では線がごちゃごちゃするので近似線は省略してある)。 

営業利益を選んだのは、経常利益や当期利益は様々な短期的な要因で振れが激しいので、より趨勢的な企業の収益力を見るには営業利益の方がふさわしいと判断したからだ。また、四半期毎の営業利益の過去3年間移動平均を使用することで、短期的な変動を平準化してある。

またShiller PERは、10年間の一株当たり企業利益の平均値を使用しているので、インフレ率で調整して実質化されているが、私の場合は過去3年の営業利益の平均と短いので、インフレ調整はしてない名目値の比率である。

図の赤い水平線が1980年以来の平均値だ。上下の水平な赤い破線は、平均値から1標準偏差上方と下方に乖離した水準である。つまり実際の値は約3分の2確率でこのレンジの中におさまり、残り3分の1の確率でレンジから飛び出している。 さらに1991年からTOPIXの推移を重ねた(青色線)。

こうして見ると、以下の割安・割高の山谷が浮かび上がる。

1980年代前半:株安(高金利)局面
80年代後半:超株高(バブル)局面
99年~2000年初:ITバブル局面
2002年~03年春:割安(銀行不良債権危機)局面
2006年:割高(円安)局面
2008年後半~09年春:割安(リーマンショック)局面
2011年~12年:割安(民主党政権失望デフレ)局面
2013年~ :アベノミクスで株価回復局面
2015年~ :株価割高局面

直近、重要なのは今年1月~6月に、上方1標準偏差のレベルを超える割高相場を示唆していることだ。特に4-6月は時価総額・利益比率は84.9とアベノミクス相場で最も高い水準まで上がった。この時、TOPIX平均1632(月末平均)、日経平均20,106(月末平均)である。

私自身はこのブログでも書いてきたように、日経平均2万円越えでかなり株式は売って持高を縮小したのだが、結果的にその分は図が示す割高水準を売れたことになる。

もちろん、今後も企業利益が伸び続ければ、時価総額・利益比率は低下し、割高感は解消する。しかし、中国ショックにVWショックが重なり、どうもそういう楽観的なシナリオには黄色シグナルが点灯していると判断するのが、自然だろう。

これまで強気だった株アナリストやストラテジストなどが、直近の収益力対比では株価に割安感が出ているとか言ってブルシナリオを維持しているのも気になる。 株価と収益を比較する時は、収益の変動をある程度平準化した見方の方が、目先の収益変化に振らされずに、大局的な判断ができるだろうと思う。

このグラフ、今後継続的に更新して、時価総額・利益比率とTOPIXの動きをモニタリングしてみようと思う。このブログにも掲載するので、ご関心のある方はご参考にどうぞ。

追記:私のブログを見ているマンション投資のご同好の方々にも言っておこうか。6つ保有している物件のうち2012年春に買った築8年の物件を売ることにしました。契約はまだですが、値決め済みです。まあ、そろそろマンション相場も売って良い頃かなという判断です。


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