たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2016年04月

本日の日銀の決定会合の結果、事前にブルンバーグ社が流した追加緩和政策の発表がなかったことから、株は急落、円急騰となった。短期トレーディングしている金融機関のディーラーや個人投資家諸兄は、ずいぶんと上に下へと振らされた人達も多いのではなかろうか。

私の銀行時代のディーラー経験では、短期売買でもトレンドのある局面でトレンド順張りで儲けることはそれほど難しくない。ところがこのように極めて短期間でジェットコースターのような大揺れ相場になると、儲けることは非常に難しくなる。 オプションを買ってデルタヘッジでもしているディーラー以外は、ほとんど儲からないか、やられる。 たいていは上げか下げかの片方の局面で儲けた益を、反対の局面で失って、骨折り損のくたびれ儲けとなる。

私自身は短期トレーディングはせず、中長期に徹しているので、こんな乱高下相場は高みの見物である。

新版修正積立投資法

さて以前も一例を紹介した修正積立投資の新版をご紹介しよう。
まず第1図は2000年1月末から毎月末、定額(ここでは1万円)をTOPIX連動ETFに投資した場合の投資結果である。 青い線が示す資産時価総額は黄色い縦棒が示す累積投資額に対して、2015年12月末時点で1.41倍(4月27日時点では1.27倍)、キャピタル損益のみのIRRは年率4.4%、平均配当利回りを1.5%とすると、総合年率利回り5.9%となる。

この投資では直近は2013年からようやくプラスのリターンに転じたわけだが、2009年から12年まではかなり深い評価損状態が持続していた。辛抱できない人には無理な投資だろう。

S&P500連動ETFへの定額積立投資

第2図は、同じ時期に全く同様に円資金で定額(ここでは1万円)をS&P500連動ETF(東証にも円建てで上場されている)に積立投資した場合の結果だ。2015年12月末時点の資産時価総額/累積投資額=1.89倍、キャピタル損益のIRR7.9%、平均配当利回り2.0%とすると、総合年率リターンは9.9%になる。これは上等な出来栄えだ。やはり日本株は米株にかなわないね、ということになる。

しかし日本株でもインデックス投資でリターンを上げる方法は、いろいろ考えられる。学生の研究テーマにちょうど良いので、過去何度も大学のゼミ生の研究対象に取り上げてきた。 今回紹介するのは、おそらくこれが一番簡単でその割に効果が高いと思われる例である。

修正積立投資

第3図は、TOPIX連動ETFで毎月1万円定額積立投資をするのは同じ。それに加えて、TOPIXの過去5年の移動平均値を計算し、毎月月末にTOPIXが移動平均値より30%低ければ定額の5倍買い増し、逆に30%高ければ5倍売る機械的な売買を組み合わせたものだ。

30%というのは、この時期のTOPIXの過去5年移動平均からの乖離率のほぼ標準偏差であり、この水準から上方、あるいは下方に飛び出す期間が約3分の1ある(3分の2の確率で上下の範囲に収まる)ことを意味している。

その結果は、2015年12月末時点の資産時価総額/累積投資額=2.9倍(16年4月27日時点では2.57倍)、キャピタル損益のIRRは9.2%、平均配当利回り1.5%とすると、総合年率リターンは10.7%である。 これなら米株の定額積立投資すら上回るリターンとなる。しかも評価損の幅も、その期間も、非常に小さくなっていることがわかる。

私自身の株式の売買の履歴に照らすと、①買った時期:2009年~11年、②売った時期2013~15年であり、ほぼこの投資法の売買シグナルと重なる。 ただし最初に買った時期は、主に2000年後半~2001年であり、この時期の買いはこの手法のシグナルに反しており、結果的に高い価格での購入となった。IT不況の到来を早めに判断することができなかったからだ。また、2006-07年は株の売り局面になっているが、私は2004-06年に主に売っており、やや早過ぎたことを示している。

この修正積立手法の現状でのシグナルはどうか?グラフが示す通り、TOPIXは移動平均からの1標準偏差上方水準線を下に抜けており、もはや売り場ではない。定額の1万円投資のみを継続する中立ゾーンである。また時価で見た投資残高はピーク時の半分程度に縮小している。要するに様子見を決め込んでいればよいレンジだ。 

私自身の日本株投資残高は、このブログで何度かコメントしたようにピーク時の3割程度に落としてある。中途半端ななんぴん買いをする気もない。買い出動は次の景気後退まで待ちの姿勢である。

修正積立投資法の限界

最後に、この修正積立法の限界を言っておこう。あらゆる相場に対応できる万能投資法などない。80年代後半の日本株、あるいは90年代後半のITブーム期の米国株のようにほぼ一本調子で急速な上げ相場が何年も続いた場合は、この投資売買比率(定額1に対して5倍)だと途中で売り尽くしてしまい。上げ相場での利得を取ることができない。その結果、単純な定額積立のリターンに負ける。

言い換えると、今後日本株でそうした超強烈な中長期の株上昇トレンドが来ない限り、この投資戦術は優れて有効だと言える。まあ、2%インフレ目標の実現も未だ見通せない状態では、今後数年先まで考えても、そうした超強烈な上げ相場がここから到来すると考えないのが妥当だろう。

図2
イメージ 2
図3
イメージ 3


ドル円相場が1ドル=110円を割って109円台に入って来た。実質相場指数での現在の位置を確認しておこう(図参照)。

物価指数の公表は今年2月までなので、3月と4月のデータは2月時点のPPPが変わらないとして計算してある。

これで見ると、1973年以降のドル円実質相場指数の平均値から上方に1標準偏差乖離した位置近辺まで戻って来た。例えるならば、フェアウエイとドル高のラフのきわ辺りだろう。 フェアウエイのさらに中心レンジは、以前から申し上げている通り、現在の名目相場では90円~100円だろう。

円高の背景要因は、①ドル金利引き上げ速度の下方修正、②アベノミクスと超金融緩和によるインフレ率上昇期待の低下、③海外投資家による日本株ロング&円ショート持高の巻き戻しなどだろう。

日銀による銀2月のマイナス金利導入は、金利差的にはドル高・円安効果だが、上記の要因による円高効果の方が勝っているということだ。

1ドル=120円台は、生活実感を踏まえて購買力平価的に考えても、いかにも円超割安だった。企業も投資家も、しっかりと円高リスクヘッジをして、1ドル=100円程度の円高で、騒がないようにしておいて欲しものだ。私はドル資産、100%ヘッジ継続、100円割れまでヘッジ外しは考えない。

最近の関連論考:
2015年10月「日本に灯る『円高デフレ』回帰の黄色信号」トムソン・ロイター・コラム

2015年6月「円安と日本経済」日本経済新聞社「経済教室」





毎度のトムソン・ロイター社の論考、ただ今掲載されましたが、同社サイトの制約で図はひとつしか掲載できないので、補足図表を以下に掲載しておきます。

冒頭部引用:「3月22日に国交省が発表した公示地価によると、東京をはじめ大都市では地価が目立って上昇した。マンション価格も2012年暮れのアベノミクス始動以来、前年同月比で上昇を遂げてきた。

2020年の東京オリンピックまで堅調な推移が続くと予想する向きもあるようだが、最近数カ月は今後のマンション価格の下落を示唆する兆候が現れている。 

東京都心部のマンション価格は中古、新築ともにすでに2007年のミニバブル期を超える割高水準となっている。日銀のマイナス金利導入で住宅ローン金利が少し下がったからと言って、購入に動けば長期的には高値つかみになる可能性が高い。そうした事情をご説明しよう・・・」

以下補足図表の説明

第1図:以前もブログで計算した不動研住宅価格指数(中古マンション価格指数、東京)、
マンション賃料インデックス(東京)、価格を賃料指数で割ったPRR

第2図:マンション成約件数、新規登録数、在庫件数の推移(すべて東京)

第3図:ロイター社でも掲載した上記の不動研住宅価格指数の前年同月比(%)と在庫件数/成約件数(在庫件数倍率)(12か月移動平均)の推移、後者は逆メモリになっている点に注意

第4図:第3図を散布図にして相関関係がわかるようにしたもの。
関係性は有意で決定係数0.78と非常に高い。



                            第1図
イメージ 1
第2図
イメージ 2
第3図
イメージ 3
第4図
イメージ 4

↑このページのトップヘ