たけなかまさはるブログ

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2016年06月

毎度のトムソン・ロイター社のコラム、本日午後の掲載


以下冒頭部分
引用:「英国の欧州連合(EU)離脱の国民投票結果を受けた世界的な株価急落、日本ではそれに円高が加わり経済の先行きに対する不安感が強まっている。しかし、1ドル100円近辺のドル円相場は、日米のインフレ率を調整した実質ドル円相場の水準としては、1973年以来の長期平均値より依然として10%弱の円安水準である。

筆者は、アベノミクスの発動によって1ドル80円も超えていた「行き過ぎた円高」が是正されたことを評価している。一方、実質相場で見る限り、125円まで進んだ円安は日本のインフレ期待の先行と日米金利差の拡大見通しに誘引された一時的なオーバーシュート(行き過ぎ)であることを本コラムで強調してきた(「実質相場指数が示唆するドル高の天井圏」2014年11月6日)。 


この円安のオーバーシュートはメーカーなど輸出系企業を中心に企業利益の上振れをもたらしたが、それは一時の「ボーナス」のようなもので、いずれ剥げ落ちることは必然だったと言える。 


昨年の本コラム「日本に灯る円高デフレ回帰の黄色信号(2015年10月27日)で指摘した通り、異次元的な量的金融緩和で穏やかなインフレに移行するという目論見は、雇用と企業利益の回復にもかかわらず賃金伸び率が抑制され過ぎた結果、頓挫してしまった。 


現状は「赤色」とは言わないが、すでに「オレンジ色」になっている。もはや追加的な金融緩和が行われても1ドル120円はもとより、目先110円以上に押し戻すことも難しいだろう。 


必要以上に企業心理を冷え込ませないために、急激な円高には円売り介入も必要かもしれない。しかし、「円安ボーナス期」が終わった以上、現水準かあるいはそれ以上の円高水準を前提に、企業は長期的な経営戦略を、政府は日本経済の成長戦略を完遂するしかない。 


この長期的な視点では筆者はそれほど悲観的ではない。短期から中期(1年から3年前後)の時間軸では、世界経済を下振れさせるリスク要因が目立つが、より長期的には新たな技術革新の波で一段の経済的豊かさが拓かれる「画期」に差しかかっている。おそらくそのフロントランナーはやはり米国だろうが、日本にもチャンスはある。
 
ただし、変革期は勃興と衰亡が同時に起こる。その変革に積極的に適応する社会、業界、企業、個人と、それに失敗するものとの格差も拡大するだろう。これをご説明しよう・・・」

***

ロイターサイトでは図表がひとつしか掲載できないので、以下にコラム本文の順に従って関連図表を3つ掲載しておこう。

図1
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図2
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図3(掲載図と同じ)
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追加図:英国ポンドの対ユーロ、対米ドル相場、名目と実質
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「アベノミクスで雇用は増えたと言うが、増えたのは非正規雇用ばかり、正規雇用者は増えていない。正規雇用者比率は低下している」 これは前回の総選挙戦の時以来繰り返されて来た野党の批判だ。今回の参議院選挙でも同じプロパガンダが繰り返されている。例えば以下の共産党の赤旗の記事が恒例だろう。

しかし問題は、正規雇用者比率の増減を何を分母に判断するかだ。通常は雇用者数全体に対する比率で議論されている。これを見ると確かに非正規雇用者の比率は上がり、正規雇用者比率は低下している。もっともそれはアベノミクスで始まったことでもないし、小泉政権時代に始まったことでもない。90年代からのトレンドだ。

しかしながら、人口構成が大きく変わりつつある日本の状況を考えると、果たして雇用者数全体に対する比率で見ることは妥当だろうか。

通常、正規雇用の対象となるのは生産年齢(20歳~64歳、あるいは15歳~64歳)である。就学中の学生が正規雇用であることはあり得ないし、また引退した高齢者が、年金の補完のために就業する時は、正規雇用である必要性は乏しい。従って重要なことは、20歳~64歳人口に対する正規雇用者数の比率であろう。それを示したのが上段の図だ。

見てわかる通り、90年代をピークに下がるが、2005年を底に上昇に転じている。また2013年以降、同比率の上昇は大きく、2015年は2012年対比で1.1%ポイント上昇している。一方、民主党政権時代の最終年2012年は09年対比で0.6%ポイントの上昇にとどまる。 

要するに、20~64歳人口の漸減という人口動態変化を考慮すれば、安倍政権下で正規雇用者も含めて雇用の回復に成功しているということだ。 もちろん、企業利益の回復に比較して賃金増加率が低いことが、景気の自律的な回復力を弱め、マイルド・インフレ達成の障害になっている点は、筆者が昨年来指摘している通りであるが、雇用の回復まで否定するのは、事実に対する政治的に歪んだプロパガンダに過ぎないと言えよう。 

追記、参考サイト(統計局):http://www.stat.go.jp/info/today/097.htm

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追加・修正図
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5月15日に発表された財務省の法人企業景気予測調査(←クリック、5月15日調査時点)の結果を見て、はて?と思った。

景況認識は、1-3月と4-6月がマイナスだが、7-9月、10-12月はプラスとなっている。要するに今年前半は景気が下降しているが、今年後半は回復に転じると予想する企業が多いのだ。

その根拠は? 少なくとも私には短期的に景況が目立って上昇する要因が見当たらない。むしろ下振れリスク要因の方が多い。下振れリスク要因は、①BREXIT、②中国リスク、③資源価格低迷(再下落)、④トランプ・リスクなどである。

それにもかかわらず下期の景気回復予想となっているのは、通年の業務計画から生じる慣性、悪く言うと辻褄合わせの結果かもしれない。
 
昨年までの企業業績は、資源と中国関連は目立ってへこんだが、通年で見ると概ね右肩上がりだった(以下掲載図参照、経常利益の推移に重ねた青色の破線は同4四半期移動平均線)。 その結果、今年(今年度)の計画は、平均的にみると前年比横ばいに近いものが出来上がったのだろう。
実際、3月の日銀短観を見ると、2016年度の計画は、全規模合計で「売上高」横ばい(前年度比0%)、経常利益微減(同-2.2%)となっている。


そうした業務計画の下で4-6月が始まったのだが、足元の動向は良くない企業が増えているようだ。この足元の動向をそのまま延長すると通年では、相当下ぶれた実績となってしまう。しかし年度がまだ始まって間もないのに、いきなり計画を下方シフトすることは、大企業ほどできない。組織としての意思決定の慣性の法則が働くからだ。

そこで景気見通しも、それに整合的なものを回答すると「下期の回復」を見込んでいるというシナリオになるということだ。 そういうことではなかろうか? まあ、私の見立てが外れれば、日本経済としてはそれに越したことはないのだが。

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日本経済・景気動向並びに日本の株価などに関するトムソン・ロイターその他掲載の過去の論考は以下の通り。 見通しのタイムスパンはいずれも短期から中期(1~3年前後)です。

          条件付き楽観:デフレ脱却には賃金上昇が欠かせない。
          黄色信号点灯:悲観シナリオへの転換点
          悲観見通し

追記:ドル円相場が動いたので実質」相場指数を更新しました(以下掲載図)。
ホームページでの掲載は後日になります。先にブログに掲載しておきます。
ようやくフェアウエイのなかに戻ってきました。もっともまだフェアウエイの上限近辺ですが。
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