たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2016年08月

今月のトムソン・ロイター社コラムへの寄稿です。ただいま掲載されました。
コラムでは図表はひとつしか掲載できないので、補足図表を掲載しておきます。

「株安・円高の呪縛が解ける日」↓

冒頭引用:「日本株と円相場の関係について、昨年夏の中国ショック、あるいは今年6月の英国のEU離脱国民投票をめぐるBREXITショックなど、世界経済に暗雲が立ち込め、世界中の株価が急落する時に円高に動くことが続いた。これに釈然としない方々は少なくないはずだ。メディアは「相対的にリスクの低いと考えられている円が買われて円高になった」とほとんど意味のない市況解説を繰り返してきた。この相場現象を考えてみよう。その上で現在の「株安・円高、株高・円安」という相関関係(逆相関)が崩れる可能性についても考えてみよう・・・」

途中引用:「ただし1990年代から2004年までの期間で見ると、株安・円高、株高・円安という逆相関の関係は安定的ではなかった。19902004年の期間について、月次データを使ってドル円相場と日本の株価指数TOPIXの前月比の変化で相関関係(期間1年)を計測すると、逆相関(相関係数がマイナス)が計測できるのは全期間の33%に過ぎない。また絶対値で0から1までの変域をとる相関係数(値が1に近いほど関係性が高い)が0.5を超えている期間は全体のわずか7%で、関係性は総じて弱かった。
 現在まで見られる日本株と円相場の強い逆相関は実は2005年頃から始まった。2005年から167月までの期間について同様に計測すると、全期間の96%について逆相関となり、しかも相関係数がマイナス0.51.0の高い値を取る期間が全体の60%を占める。この経緯を振り返ってみよう」

上記の部分、日本株と円相場の逆相関の関係、以下の上段の図をご覧頂ければ、わかると思います。2005年から前月比で見ても、前年同月比で見ても、相関係数はほとんどマイナス域にシフトして、しかもマイナス1に近い高い逆相関となっています。

下段の図はロイター社コラムと同じものです。

こういう現象ってアカデミズムの世界ではほとんど関心が払われていません。ああ、そうか。次はこれをもっと深堀して、論文にしようかな。


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気がついたら、金融・投資の世界はロボット(AI)だらけ!
人口知能が金融を支配する日」櫻井豊、東洋経済新報社、2016年8月

この本は日本の金融・投資に関わる全ての方々に読んで欲しい。
アマゾンでの発売日は8月19日だが、東京駅丸の内北口のオアゾ内丸善では5日から店の正面の大きな面積を平積みで占有していた。買って開いてほとんど一気に読みとおした。感銘を受けた。

Deep Learning技術により飛躍的な進歩局面に入った人口知能(AI)が、ビックデータの活用と相まって、金融・投資の世界をどれほど劇的に変革しつつあるかを平易に説いている。そしてその最先端を走るのはやはり米国であり、日本の金融・投資業界は悲しいほど遅れている。

実際、株式、債券、為替など主要な金融市場の売買はAIをバックにした超高速アルゴリズム・トレーディングに席捲されており、この分野の日本の金融機関の対応は悲しいほど遅れている(1章)。

2章では、ヘッジファンド業界では人工知能の実践的な活用のために莫大な投資がブームになっており、投資技術開発の熾烈な競争が展開している状況が語られている。ほとんどの一般の日本人には知られていない状況だ。

3章ではAIをベースにしたロボット投資アドバイザーが、米国では急速に普及し始めたことが語られている。その波は間違いなく日本にも押し寄せようとしている。

あとの章は省略するが、数理系人材として東京銀行でクオンツとして各種デリバティブの開発、運用に携わり、2000年にソニー銀行に転職し、執行役員市場運用部長として活躍した櫻井豊さんほど、本書のテーマに取り組むのにふさわしい人物はいないだろう。末尾の参考文献からは、櫻井さんが本書を書くために改めて相当勉強したことがうかがえる。
 
実は、私が東京銀行で通貨オプションデスクのチーフ・ディーラーだった時代に、櫻井さんは若きクオンツとして資本市場2部に属し、私は彼の価格モデルを頼りに日本で初めてノックアウト・オプション類(当時は「ストップション」と呼称した)の取り扱いを開始した(1989年)。

その後、ノックアウト・オプション類は為替や株式市場に広く出回るようになり、良くも悪くも度々市場やユーザーを激震(文字通りノックアウト(^_^;))するようにもなった。
最後に櫻井さんの思い(危機感)が凝縮された箇所を引用しておこう。
 
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引用:「一方で日本の金融業界の実情はどうでしょうか。残念ながらこのような(米国)の動きにまったく太刀打ちができないほど遅れをとっています。その理由は、護送船団形成された体質、数理的センスの欠如、経験と勘を重視するという日本人の特性などさまざまです。」
 
「とにかく、これまでの日本の金融業界では、人工知能など数理的な手法で市場取引やビジネスを構築するという発想とセンスが欠落していました。」
 
「(金融)ビジネスのシステムにおいて何か革新を起こすと言う発想がほとんどなく、昔からの枠組みの中での競争を好む文化があります。」
 
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しかし日本も「ダメダメ」ばかりではない。最後の6章では、日本では物理的な形を持たないAIの開発や利用には立ち遅れていても、なぜか物理的な形のあるロボットの開発と利用には強い関心と執着心が見られることが指摘されている。

その通りだろう。そして日本で人工知能開発に最近もっとも大胆な投資をしたのがトヨタであることも偶然ではない。おそらく日本のAIはロボットカーという形態で進化するのではなかろうかと私が思う理由でもある。

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