一般向けの講演などで「竹中先生は、株も不動産も不況の時に買って、好況の時に売りなさいと言いますが、景気の良し悪しは何を見てればわかるんですか?」と尋ねられる時がある。

「最低限、新聞の経済欄を読んでいればわかるだろう」と思うのは、私がエコノミストだからのようだ。

世間には、自分とその周囲の情報だけで景況を判断する「俺の財布が基準派」から、「安倍政権の下での景気回復なんか絶対にあり得ない。認めない」という極度の「政治的色めがね派」等々沢山いるから、「景況がわからない」というのもわからなくはない。しかも日本だけでなく、海外主要国、世界の景況となると「全然わからない」というのはむしろ一般的な景況認知なのだろう。

そんな方に「だったら、これだけ見てなさい」と言えるのがOECD Composite Leading
Indicatorだ。主要国(主に先進国)は自国の景況判断に複数の景気関連統計データを合成して、何かしらの総合景気指標を作成、公表している(日本では内閣府の景気動向指数)。 それらのデータをベースに各国別、地域別に作成されている。グラフ機能も使いやすいので対象国、地域、期間を指定してグラフにできる。

サイトのcustomizeのボックスでcountryやtime&frequencyを指定し、データをグラフにしたり、エクセルにダウンロードしたりできる。

指標は、趨勢的な水準が100になるようにできている。従って次の様に4通りに読み分けるのが妥当だろう。

100を割って下降している:景況水準✖、方向性✖(下げ幅が大きければ景気後退)
100を割っているが上昇している:景況水準✖、方向性〇
100を超えて上がっている:景況水準〇、方向性〇(上げ幅が大きければ好況)
100を超えているが下がっている:景況水準〇、方向性✖
 
より最終的、包括的な景気動向判断(景気後退期、回復期の判断)は内閣府が公表しているが、これは最終的な(確定的な)判断であり、1年前後も遅れて判断、公表されるので、事後確認になるだけである。

そこで現下の日本と世界主要地域の景気動向を同指数で見ると、2016年後半、あるいは第4四半期から揃って上向きの方向になっていることがわかる。米国ではトランプ政権のオバマケア代替法案が連邦議会の承認を得られずに撤回になるなど、株式市場では不安要因も出始めたが、トランプ政権への期待先行が調整される局面を迎えただけであり、実体経済の強さはまだ暫く続きそうである。


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