たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2018年11月

今回の米国の中間選挙とその結果を通じて、米国の保守とリベラルの政治的二極化は戦後で最も際立ったレベルになった感がある。二極化の傾向は過去幾度も指摘されてきたが、おそらく1970年代頃まで遡るトレンドだろう。

いわゆるpolitical correctnessを破壊しながら当選したトランプ大統領は、そうしたトレンドから生み出された現象であると同時に、二極化・分断を一層煽る政治的な存在として働いている。二極化・分断の原因は一言で表現できるほど簡単ではないが、主因のひとつはアメリカ社会の民族的構成の長期的な変化だ。

民主党にはリベラル派の白人層と非白人層の票が集まり、共和党には保守派の白人層の票が集まる傾向が一層顕著になっている(以下掲載WSJの図、参照、有料サイト)。

リベラル派の人々にとって、アメリカ社会の理想と優位は、多民族、多文化を許容する寛容さにある。
保守派の白人層にとってアメリカは欧州から移民した白人の国であり、中南米からの移民であるラティーノの増加に代表される人口構成の変化は、自分らの社会のアイデンティティを脅かすものと感じている。

米国のセンサス調査では、このまま人口構成の変化が続くと2050年までには、自らを白人と申告する人々は半数割れとなり、少数派になってしまう。 political correctnessが抑制していた「このトレンドを止めろ!」という要望、衝動が噴出して、保守派とリベラル派の白人&非白人層の間でちょっと和解しがたい分断が生じている。

こうした傾向がやがて米国社会のアイデンティティの変容、危機に至る可能性について、保守派の立場から警告した著作としては故ハッチントン氏の「分断されるアメリカ(Who Are We?)」(2003)がある。

また中間的な意見層が細り、二極化した政治は民主主義にとっても危機をもたらす要因となるだろう。その点ではリベラル派の論者によるトランプ政権批判でもあるこの著書が参考になる。「民主主義の死に方(How Democracies Die)」(2018)

さらに関連して、ポールクルーグマンの2008年の著書「格差は作られた(The Conscience of
a Liberal)」では、共和党が経済的な格差拡大政策をとりながらも(あるいは格差拡大を放置しながらも)選挙では大衆的な支持を獲得することに成功しているという「米国戦後政治史上の最大の謎」について、クルーグマンは1960年代の黒人の公民権運動を契機に、白人層にある根強い民族的、人種的偏見を共和党は取り込むことで成功したと説明している。 

当時私はそれを読んで、1970年代、あるいは80年代頃までなら、それでかなり説明できるかもしれないが、2000年代以降の今日までその効果で説明するのは無理ではないかと思ったのだが・・・実はそうでもなかったのかもしれない。  

クルーグマンは必ずしも明示的に書いていないのだが、彼の含意をくみ取ると、90代年以降はラティーノ人口の増加に対する抵抗感、民族的偏見、つまりこのままでは白人社会のアイデティティが脅かされるという保守的な白人層の不安、焦燥感が再強化され、移民増加に否定的な姿勢をとる共和党への支持を維持する要因として働き続けたのかもしれないと、今回考え直すようになった。

2020年の大統領選はどうなるんだろうか?分断の修復を志向する候補が出るだろうか?ますます分断化の傾向を強める政治闘争になるんだろうか。今のままだと、後者の可能性が高いだろう。

現代ビジネス(マネー)への寄稿論考です。11月5日(月)朝、掲載されました。
この前のブログで書いたことですが、加筆修正し、もっと丁寧に説明しています。
図表も最新データに更新済。

引用:「筆者は本業のかたわら個人投資家として、中古のマンション投資を始めてから20年となる。始めた最初の年は1998年であり、銀行不良債権危機で深刻な不況となった時だ。

おそらく「今が底値圏だ」という直感的な判断で始めたのだが、その後、エコノミストとして東京を中心にマンション市場のマクロ動向を分析し、マンションの購入と売却のタイミングを判断する多少役に立つ知恵を得た。

過去何度か著作の中で紹介しているが、改めてそれに基づいた現在と今後の市況についての判断をご説明しよう・・・」

 

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