たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

2019年02月

2008年のリーマンショック以降、長期的には持続不可能な信用・債務膨張に支えられた中国経済が、ようやくハードランディング的な債務調整局面に入りつつあるように見える。


私が「中国バブルの『ミンスキーモメント』」 (ロイターコラム、20161月)を書いてから3年である。


中国はその金融システムの国家統制色が強いため、金融システムが資本市場型の米国はもとより、銀行中心型の日本のケースよりも、時間を引き延ばしたスローモーションでバブルはピークに達した後、崩壊するのだともとより予想していたが、ようやくその時が到来するようだ。

そうした状況を描いた直近の記事として福島香織さんの記事を掲載しておこう。

既に世界の各国株式市場と投資家は、中国経済の危機と不況からその国の経済・ビジネスがどの程度影響を受けるかを株価に反映し始めているのではなかろうか。

200708年の米国の金融危機では、証券化された債券を海外の投資家が莫大に購入しており、その価格が暴落することで金融危機の第1波が海外に波及した。しかし中国の場合は、そうした連関は弱い。むしろ「中国経済の失速、不況への移行」海外から中国への輸出の減退という実体経済を通じた波及の方がメインになるだろう。

そこで、各国の対中国輸出の対GDP比率(データは中国の輸入サイドのデータを使用、2015年のデータ)と過去1年間の各国主要株価指数の変化の関係性を検証してみた。中国の輸入に占めるシェアの大きい順に16か国を対象にした。

株価の変化は20192月末時点の前年同期比(%)である。私の考えが正しければ、対中国輸出のGDP比率が高い国ほど、その国の株価指数は相対的に下がっているという負の相関関係があるだずだ。

その結果を散布図と表にしたものを以下に掲載した。結果は私の予想以上に関係性が高く、相関係数(R)は-0.714、決定係数(R2)は0.510である。負の相関の場合、相関係数はゼロからマイナス1までの変域となる。-0.714はかなり高い。決定係数0.510とは、Rの平方根であり、説明度を示すものだ。

対中国輸出のGDP比率が最も高く、株価も相対的に大きく下がっているのが、マレーシア、ベトナム、韓国である。反対にインド、英国、米国は影響度が最も低く、インドと米国の株価指数は前年同月比プラスだ。英国の株価指数がマイナスであるのは、言うまでもなく中国の影響ではなく、合意なきEU離脱リスクを反映したものだろう。日本の受ける影響度はこの16か国の中では平均よりやや若干高い程度だ。

ふ~む、こんなに鮮明に相関関係が出るとは思わなかった。株式市場というのは、非合理的な局面もあるが、大局的にはある意味では素直なんだろうね。


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お知らせ:Yahooブログが2019年12月でサービスを終了するというので、はてなブログに移転することにしました。新規投稿は随時、旧投稿は5月以降に移転する予定です。移転先は以下サイトです。



以下の東洋大の一件については、私はあまり関心がないのだが、問題の学生君が竹中平蔵氏をもの凄く批判する理由について、その発言が引用されている。

引用1:「東洋大学白山キャンパス(東京都文京区)に立て看板を設置し、ビラをまき始めた学生が『退学を勧告された』事件について、当学生の船橋秀人(ふなばし・しゅうと)さん(23)に26日、話を聞いた。」
https://www.data-max.co.jp/article/27769/?fbclid=IwAR0dYLvvaOPHdhvQlr2PG9J79glMW-oCvwsMbnwTMbqSVEORke62akHUtRA
 
引用2:「竹中(平蔵)さんのことは、予備校時代に知った。2003年の労働者派遣法の改正を主導し、非正規雇用の労働者をこれほどまでに増やした。」
 
2003年の労働者派遣法の改正については以下参照。

「小泉政権・竹中平蔵大臣が労働者派遣法の変更で非正規雇用者を大幅に増やした」という批判は、この学生に限らず左翼系の方々の間で広く判を押したように共有されている認識の様だ。しかし控えめに言っても針小棒大な勘違いであり、はっきり言えばどこかの左派政党のアジビラなどをデータの検証もなしに鵜呑みにしている結果だ。
 
竹中平蔵氏は私の兄でもないし、親戚筋でもないが、事実に反するトンデモ論が横行するのは気味が悪いので手短に事実だけ指摘しておこう。
 
事実は以下の通り。

図表1:対象となる労働者派遣事業所の派遣社員数は非正規雇用全体の6%でしかない。
 
図表2:非正規雇用比率の上昇は、1990年代から民主党政権時代を通じて上昇して来た。
  それが上げ止まって37~38%でフラットの推移になったのは安倍政権下2014年以降だ。

図表3:非正規雇用が増える一方、正規雇用は長期的に減る一方のようなイメージを語る人が少なくないが、実は正規雇用総数は長期で見ると3千数百万人前後で比較的安定している。
生産年齢人口の減少にもかかわらず正規雇用が安定しているため、25歳~64歳の人口に対する同年齢の正規雇用者数の比率は上昇している。この点は以下論考参照。
 
図表4:2003年の労働者派遣法の改訂以降(施行は翌年3月から)の非正規雇用者の増加全体に占める派遣社員カテゴリーの増加の寄与度は12%に過ぎない。

また第2次安倍政権期の雇用者の増加は468万人(正規雇用161万人、非正規雇用306万人、増加した非正規の大半は女性と65歳以上高齢層)、一方民主党政権期の雇用者の増加は48万人、しかも正規雇用は50万人の減少、非正規は98万人の増加だ。
 
最近、安倍首相が「民主党政権期の悪夢」と語ったことが話題になった。安倍首相が何をもって悪夢と言ったのかは私にはわからないが、リーマンショック後の景気回復期にスタートした政権であるにもかかわらず、その雇用に関する成果は確かに悪夢だったと言って良いだろう。

なお、非正規雇用の長期的な増加要因は90年代に起こった日本の労働市場の構造変化によるもので、日本の労働経済学者の間で概ね見解の一致があるようだ。私にとっては専門外だが、過去の論考の中で説明して来たことなので、ここでは省略させて頂く。

図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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以上


追加図表:一人当たり実質GDP成長率の主要国比較
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毎度の講談社、現代ビジネス、マネー現代に掲載されました。
掲載では図表は3つに絞ってありますが、あと2つ補足図表をここに掲載しておきます。


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一部引用:「日経平均株価指数や米国のS&P500などに連動した投資信託やETFで長期分散投資(インデックス投資)を行う個人投資家が日本でも増えてきたようだ。
そこで株価のボラティリティ指数を利用することで、インデックス投資の中長期のリターンを劇的に引き上げる簡単な手法をご紹介しよう・・・

最後に「こんなに簡単に長期の投資リターンが上がるなら、なぜ投資家はみなそうしないのか?」という問いに答えよう。

まず金融機関のディーラーと呼ばれる人達はその職務の性質上、短期売買を運命付けられており、長期投資の手法を利用できない。また生保や年金運用の委託を受ける機関も長期性の資金でありながら、毎期ベンチマーク対比で評価されるため2~3年間もナンピンを継続するような本当の長期投資手法は使えない。それができるのは個人投資家だけなのだ。

またアカデミズムでは「株価指数が示すような市場平均の投資パフォーマンスを長期にわたって上回ることはできない」という効率的市場仮説が依然支配的である。

しかし現実の市場でこの仮説が適用できるのは8~9割程度の平常な局面であり、残り1~2割程度の局面では投資家は過度な悲観や楽観に捕らわれる。

そうした局面では価格形成の合理性が壊れ、株価の過小評価や過大評価が発生する。ボラ指数を手掛かりにそうした極端な局面で逆張り投資することでリターンの向上が実現できるのだ。

筆者が考えるインデックス投資でリターンを向上させる要諦は、①景気後退期に買い、景気回復期に売る、②インデックスがその長期移動平均から乖離度が大きくなったら逆張りする、③本論で述べたボラ指数を重要な判断材料とする、以上の3つである。

筆者自身は3つの観点を総合して投資判断を行っている。ここで示したボラ指数の一定水準で売買を行う試算は、ボラ指数の有効性を検証するためのものであり、実際の運用はもう少し柔軟性があってもいいかもしれない。」

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図表1から3は掲載本文と同じものです。
図表4は本文中でケース④として示した投資の累積投資額と資産時価評価額の推移を示したもの。

図表5は日経平均VIの下位16.5で日経平均ETFを売り、上位33で買った場合に、各売買時点で日経平均の3年移動平均値をどの程度上回っているか(売りの場合)、あるいは下回っているか(買いの場合)の分布を示したものです。

売りの場合は99%で3年移動平均値を上回っており、平均上回り率は17%、買いの場合は89%で3年移動平均値を下回っており、平均下回り率は22.6%です。

つまり日経平均VIの水準を手掛かりに売買することで、中長期的なbuying low selling highが実現できることを示した散布図です。



図表1



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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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