たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

タグ:その他雇用

今日の低失業率・人手不足にもかかわらず、日本の賃金伸び率の頭の重さは、賃金の「上方硬直性」とでも言うべき感じで、量的・質的金融緩和でもインフレ率が上がらない(消費者物価指数で目標の前年比+2%に届かない)障害的な要因となっていることは、コラムなどでもこれまで強調してきたことだ。

ところが、そんな日本の労働市場でも1990年以降一貫して上がって来た雇用部門がある。現金給与総額(時給換算)で見ると、雇用全体の平均では1993年から現在までに4.4%しか増えていないが、この分野では23%増加している。当該分野での雇用は拡大の一途をたどり、今では全雇用者の3割を超える。「えっ~嘘だろ。そんな分野があるのか?」

実はパート労働者の賃金である。図表1(パートタイムの現金給与総額と前年同月比の変化率)が示す通り、実にコンスタントに上がって来た。

「な~んだ。でも絶対水準が元々低く、今でもフルタイムや正規雇用の賃金に比べてずっと安いんだろ」 その通りである。

一方、図表2はフルタイム労働者の現金給与総額と前年同月比の変化率である。90年代後半にピークをつけ、2012年頃まで緩やかに減少、2013年から増加に転じたがその増加テンポは微弱だ。

この28年間にわたるパート労働の賃金上昇をどのように理解したらよいだろう。言えそうなことは次の通り。

1、もともとフルタイムや正規雇用の賃金に比べて構造的に低過ぎた水準が長期的に修正される過程にある。

2、それでもフルタイムや正規雇用の賃金に比べて低いので、雇用者全体に占めるパート労働比率の増加は、雇用者1人当たりの賃金伸び率を抑制する効果として働いてきた。

 例えば厚生労働省の資料によると、2017年6月の所定内給与に基づいて正規&フルタイムと非正規&パートタイムの時給を比較すると、30~34歳の年齢層では154:100の格差、50~54歳では220:100の格差がある。以下サイト参照


3、企業がパート労働の賃金を正規雇用のそれに比べてどんどん引き上げられるのは、また景気後退で労働力に余剰が出た場合は、いつでも雇用を停止できるからだ。

特に3の点について逆に言うと、人手不足にもかかわらず正規雇用の賃金、特にベースアップに企業経営者が二の足を踏むのは、正規雇用の賃金は固定費であり、一度上げると景気後退になった時に削減が困難なので利益を圧縮する要因になるからだ。それは企業経営者や経済団体の首脳らが率直に語っている通りだ。

日本では労働者に対する解雇権はかなり厳しく規制されており、一般に企業が経営危機などに直面して解雇するしか方策がない場合に正規社員の解雇は限られていると言われる。 これが正規社員の賃金を固定費化しているわけだ。

逆に言うと、もう少し解雇権の行使を柔軟化して、米国で見られるように解雇の見返りに1年~2年分の給与を支払う条件で解雇できるような労働協定を正規雇用で普及させれば、賃金の固定費化は緩和され、人手不足時には正規雇用でも賃金が今より柔軟に上昇する余地が生まれるだろう。

それは冒頭で述べた賃金の上方硬直性を緩和し、賃金と物価の並行的な上昇、インフレ率の底上げ、金融政策の機能回復にもつながるかもしれない。

もっとも、「賃金は上がらなくても良いですから、定年までずっとこの企業に居させてください」というのが現在の日本の正規雇用層の多数派の期待・願望であるならば、正規雇用に見られる賃金の上方硬直性は、そうした多数派の期待の自己実現した結果だと言うこともできようか・・・。なさけない感じではあるがね。

注:フルタイムでも正社員と非正社員(少数)、短時間労働者(パートタイム)でも正社員(少数)と非正社員がいることに注意。

追記:(2018年8月26日)本ブログに当初掲載したグラフは、データを取り違えていることに気が付いたので正しいものと差し替え、本文の数字も修正しました。論考の趣旨は変わっていません。



正規雇用が前年比で2015年以降増え始めていることは過去何度か指摘して来た。
また図表1をご参照。

それでも非正規雇用も同時にある程度並行して増えているので、雇用全体に占める正規雇用比率が上昇に転じる(非正規雇用比率が低下に転じる)には時間がかかる。ただし世代別で見ると65歳未満の現役世代では、既に若い層を中心に正規雇用比率の上昇(非正規雇用比率の低下)は上昇トレンドを辿っている。それを示したのが、図表2(男女計)である。

水色の15~24歳(在学中を除く)は最も早く2014年から正規雇用比率が上昇に転じている。少し遅れて青色の25~34歳と紺色の35~44歳の層で2015年から正規雇用比率が上昇に転じている。

ただし年齢層が高くなるにつれて上昇テンポは弱まり、黄色の45~54歳だと同比率は2014年に下げ止まったが、後はほぼ横ばいだ。さらに65歳以上だと緩やかな下げトレンドが続いている(65歳以上は水準が大きく異なるので右メモリであることに注意)。 

65歳以上は普通は子育てや住宅ローンの返済も終わった年齢層であるから、正規雇用(正規雇用の給与)である必要性は低いだろう。ただし年金と貯蓄だけでは不安、あるいはまだ元気などの理由で働くのは労働力不足の日本経済にとってはマクロ的にも良いことだ。

ただし45~54歳あたりの正規雇用比率の上がり難さをどう考えるか。 「これって、労働力としてロートル化した(陳腐化した)中高年世代が、じわりと淘汰され、正規雇用から非正規雇用に押し出されているの?」 私も最初一瞬そうかもしれないと思い、そうなった方が良さそうな無能な管理職が脳裏に浮かび、少しサディスティックな情念を刺激された。 しかし幸か不幸か、そういうことではない。

このことのは、図表3,4,5を合わせて考えると理解できる。まず男性の世代別正規雇用比率を見ると(図表3)、15~24歳から25~34歳、35~44歳&45~54歳と世代が上がるにつれて上昇し、時系列の変化で見ても35歳以上の層は90%強の水準をほぼ水平に維持している。

正規比率が低下するのは55~64歳である。この年齢層になるとリストラによる早期退職や雇用形態の多様化が進むので、そうなる事情はわかる。ただしこの年齢層でも2014年を底に正規比率が上昇に転じている。

次に女性の正規雇用比率を見ると(図表4)、25~34歳の年齢層までは正規比率が高いが、35~44歳の層ではガタンと低下する。女性の労働参加率は近年日本でもかなり上昇し、いわゆるM字型の解消(台形型化)が進んできたが、それでも30歳代の出産・子育て期間に職を離れる女性はかなりの数いる。そして子育てがひと段落すると、職に復帰するが、その場合はパートなど非正規雇用での復帰となる場合が多い。

さらに2009年以降の雇用の増加の内訳を示した図表5を見て頂きたい。2018年1Qまでに434万人の雇用が増えているが、そのほとんどが65歳未満の女性と65歳以上の高齢者である。

以上の結果、男女合計の正規雇用比率の推移を見ると、30歳台前半までの年齢層では顕著に正規雇用比率が上がっているが、それ以上の年齢層になると出産・育児がひと段落して労働市場にもどる女性の非正規雇用の増加と65歳以上の非正規雇用の増加が加わるので、男女合計の非正規比率は若い層に比べて相対的に上がり難い結果になるのだと分かる。

まあ、女性も出産・子育て期に休職はしても退職せずにキャリアを続けられるような制度、環境整備が望ましいと思うし、また政策的にもその方向に進んでいると思う。

最後に、非正規雇用に占めるいわゆる不本意不正規労働者(できれば正規雇用になりたいがなれない労働者)の数は、2017年対象の厚生労働省調査によると273万人で非正規雇用全体の14.3%、雇用者数全体に占める比率では5.0%である。

この比率をどの程度高いと思うか、思わないかは人それぞれだろうが、この不本意不正規比率も低下してきていることを以下の厚生労働省の調査は示している。 不本意非正規雇用者数/非正規雇用者数=14.3% 2017年(前年比1.3%減少)

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図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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図表5
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失業率と自殺率の非常に高い正の相関関係

自殺の発生件数と景気動向には相関関係があると前から思っていたが、実際に確認してみて驚いた。実に高い関係性があるのだ。図表1は1970年以降の失業率と自殺率(人口10万人当りに対する1年間の自殺件数)の推移である。山と谷の波がかなり重なっていることがわかる。

これを見ると、自殺率が急騰したのは1998年、銀行の不良債権危機で戦後最悪の不況になり、失業率も跳ね上がった年だ。そして1998年から2009年まで自殺率は高止まりする。失業率は2002年から07年までの景気の回復で低下するが、自殺率はこの時の失業率の低下にはあまり反応していない。

その後、自殺率は2009年以降の景気の回復、失業率の低下に伴って下がり始める。特に12年以降の低下が目立っている。

図表2はこれを散布図にしたものだ。決定係数は0.80、相関係数は0.895と非常に高い(いずれも最大値は1で、その時は完全な比例関係になる)。これは失業率上昇(に表される景気状況の悪化)→自殺増加(逆は逆)という因果関係が正しいとした場合、、自殺率の変化の80%は失業率の変化で説明できることを意味する。

また、2012年以降は線形近似線が示す趨勢的な傾向から下方に乖離する形で自殺率の低下が起こっている。 自殺率と言うのは不幸な人の発生率を示すひとつの指標であるから、過去数年、顕著に下がっていることは喜ばしい変化だ。

自殺の原因・動機別内訳

失業率の変化との関係性が非常に高いので、自殺に占める原因・動機で経済的・生活的要因によるものが高いかというと実はそうでもない。図表3は2016年の自殺の原因・動機別内訳である。最も多い原因・動機は健康問題で約半分(49.9%)を占める。次が経済・生活問題(15.9%)、勤務問題(9.0%)である。

ただしこの原因・動機内訳がどれほど実態を反映しているかについては留意が必要だろう。人間は自分の本当の動機を意識していない場合も少なくないし、死んだ後に遺族などの関係者の話に基づいて警察が行う分類がどの程度正しいかについては、当然留保が必要だろう。

ただし自殺の発生について、どういうマクロ的な経済事情の下でも発生する底積み的な部分と、失業率の示す景気の変化に応じて、経済的原因・動機の自殺数が大きく変化するという循環的・的変動的な部分があると考えられる。それを見るために直近の失業率と自殺率のピークだった2009年と16年を比べたのが図表4である。

これを見ると2009年と比較して、自殺総件数は約3万4000人から2万2000人に1万2000人減少している。減少のうち、経済・生活問題の自殺減少は、健康問題の自殺の減少とほぼ同じで41%を占める。

失業率と健康問題の自殺の間に関係性があるかのかどうかは不明だが(その可能性はある。なぜなら経済的困窮とその人の健康状態にはある程度相関関係があるだろう)、経済・生活問題の自殺の発生が失業率の変化が示す景気動向に強く依存しており、過去数年、失業率の低下に伴って大きく減少してきたことは、間違いないだろう。

先行研究論文:


図表1
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図表2
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図表3
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図表4
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現代ビジネスに寄稿しました(本日5月13日掲載)
サイトのタイトルはややキャッチーな感じになっておりますが、その点は目を引いてなんぼの一般雑誌ですので、ご勘案ください。


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冒頭引用:「全く矛盾した2つの「不安」が今の日本を覆っている。
ひとつは少子高齢化で労働力が不足し、経済成長が停滞するという不安だ。もうひとつはAI(人工知能)やロボット化の普及で職が奪われ失業が増えるという不安である。もちろん、誰にでもわかるように、この2つの不安は論理的に矛盾している。にもかかわらず、こ広く同時に語られているのは奇妙なことだ。

しかし、どちらが現実には、より深刻かつ長期的な問題であるかといえば、間違いなく労働量の不足による経済成長の制約である。この点で日本経済は、AIやロボット化の普及を躊躇う余裕などなく、むしろ経済的により豊かなステージに上がるために必須の条件である・・・」

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「アベノミクスで雇用は増えたと言うが、増えたのは非正規雇用ばかり、正規雇用者は増えていない。正規雇用者比率は低下している」 これは前回の総選挙戦の時以来繰り返されて来た野党の批判だ。今回の参議院選挙でも同じプロパガンダが繰り返されている。例えば以下の共産党の赤旗の記事が恒例だろう。

しかし問題は、正規雇用者比率の増減を何を分母に判断するかだ。通常は雇用者数全体に対する比率で議論されている。これを見ると確かに非正規雇用者の比率は上がり、正規雇用者比率は低下している。もっともそれはアベノミクスで始まったことでもないし、小泉政権時代に始まったことでもない。90年代からのトレンドだ。

しかしながら、人口構成が大きく変わりつつある日本の状況を考えると、果たして雇用者数全体に対する比率で見ることは妥当だろうか。

通常、正規雇用の対象となるのは生産年齢(20歳~64歳、あるいは15歳~64歳)である。就学中の学生が正規雇用であることはあり得ないし、また引退した高齢者が、年金の補完のために就業する時は、正規雇用である必要性は乏しい。従って重要なことは、20歳~64歳人口に対する正規雇用者数の比率であろう。それを示したのが上段の図だ。

見てわかる通り、90年代をピークに下がるが、2005年を底に上昇に転じている。また2013年以降、同比率の上昇は大きく、2015年は2012年対比で1.1%ポイント上昇している。一方、民主党政権時代の最終年2012年は09年対比で0.6%ポイントの上昇にとどまる。 

要するに、20~64歳人口の漸減という人口動態変化を考慮すれば、安倍政権下で正規雇用者も含めて雇用の回復に成功しているということだ。 もちろん、企業利益の回復に比較して賃金増加率が低いことが、景気の自律的な回復力を弱め、マイルド・インフレ達成の障害になっている点は、筆者が昨年来指摘している通りであるが、雇用の回復まで否定するのは、事実に対する政治的に歪んだプロパガンダに過ぎないと言えよう。 

追記、参考サイト(統計局):http://www.stat.go.jp/info/today/097.htm

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追加・修正図
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週刊エコノミスト5月31日号に、宮崎雅人氏(埼玉大学経済学部准教授)が「学者に聞け」の欄で、目から鱗の事実を語っている。

問題の言説:なにしろ日本は少子高齢化である。1965年には日本は高齢者1人を現役世代9.1人で扶養していたが、2012年にはその比率は2.4人になった。2050年にはその比率は1.2人になる・・・・この高齢化で社会保障負担はますます重くなるし、経済成長の足かせになる・・・という言説だ。

わたしもそう思っていた。従属人口比率(65歳以上人口と14歳以下人口の15から64歳人口との比率)の上昇が、必然的に社会保証コストの増加、経済成長のブレーキになると自分でも書いてきた。
しかし、65歳以上の高齢者一人を現役世代何人で支えるかという比率は、現実をひどく過剰に悲観的に描いているのだ。

宮崎氏は、むしろ総就業者数と総人口の比率に注目すべだと指摘して、1955年まで遡って、就業者と総人口の比率(=総人口/就業者数)の推移をグラフにしている。(同様の指摘は慶応大学の権丈善一教授も著作のなかで語っているそうだが、こちらはまだ読んでいない。「ちょっと気になる社会保障」2016年1月)

高齢化でさぞその比率が上がっていると思いきや、1955年まで遡っても比率は2.1強から2.0前後で安定しており、趨勢的な比率はむしろ下がっているくらいだ。

同様のことではあるが、以下の私の掲載図1では、「高齢者一人を何人の現役で」という冒頭の議論に合わせるために、就業者数/非就業者数の比率(ひとりの非就業者数を何人の就業者で扶養するか)で表した(図1の黒線)。
 
見てわかる通り、比率は長期にわたって1.0近辺で安定しており、近似線は僅かながら右肩上がりに傾斜している。つまり就業者の頭数だけで計算すると、引退高齢者や未就業児童・青年、失業者などその他全ての非就業者を直接・間接に扶養している就業者の数は、むしろ増えているのだ。「引退高齢者を支える現役世代の人口が急減する」という冒頭の言説が与えるイメージとはまるで違う。

図1に労働参加率(=労働力人口(含む失業者)/全人口数)のグラフも掲載した。労働参加率は1997年の53.8%をピークに下げているが、2013年以降の過去3年では上昇に転じている。雇用の改善、人手不足で就業者数自体が増加しているからだ。これは野党がなんと言おうと安倍政権期の実績だろう。

高齢化にもかかわらず、就業者/非就業者比率が上がっているのは、①現役世代の就業率が上がっている、②65歳以上の高齢者の就業率が上がっている、この2つの可能性がある。そこで年齢化別、男女別の就業率を示したのが図2と図3である。

まず65歳以上の高齢者の就業率は、男女ともにやはり2013年以降やや上向いているが、長期では上昇していない。男性の場合は明らかに低下している。一方、女性の年齢階層別就業率は、25歳から64歳までの全ての年齢階層で90年代以降、顕著に上昇している。

すなわち、高齢化にもかかわらず90年代以降の日本の就業者/非就業者比率、あるいは労働参加率を支えているのは、急激な女性の就業率の上昇なのだ。 1980年代後半に施行され、改訂を経て90年代後半に今の形となった男女雇用均等法も効果を上げていると言えるだろう。

それでは日本経済の人口高齢化に対する対応、適応力は十分かというと、そうではない。様々な場で強調されている通り、就業率は上昇していても、非正規雇用の比率が上昇している。つまり非正規で低賃金であるゆえに、税金と社会保険料の負担が著しく低い、あるいはゼロに近い雇用の比率が増えているからだ。これではやはり高齢化が進む中で増加する社会保障関連コストを購いきれない可能性が高いだろう。

図4が就業者数全体の内訳の推移だ。自営業者と家族従業員比率が低下し、非正規雇用は増えている。正規雇用は数では1996年の3800万人がピークで、15年は3304万人だ。結果的に約500万人が正規雇用から非正規雇用にシフトしている。

どの層が非正規雇用で多いのか?男性と女性について年齢階層別に非正規比率(雇用者数に占める比率)を示したのが図5と6である。この統計は2013年からしかないのだが、どの年齢階層でも女性の方が非正規雇用比率が高い。とりわけ、25歳から54歳の働き盛りの年齢層では、非正規雇用比率は50%前後で男性の10%前後と比べると歴然と高い。

これでほぼ全貌が見えた。日本は90年代以降、従属人口比率の上昇というステージに入ったのだが、女性の就業率の急速な上昇で就業者比率の大きな下落は食い止められ、2013年以降では上昇すらしている。しかし現役世代の女性の就業の約50%はパートを主とする非正規雇用であり、税金や社会保険料の担い手としては頼りにならない雇用形態だ。

まだまだ進む高齢化、この先、どうしたら良いか?

①元々日本は先進国の中では65歳以上の高齢者の就業率が相対的に高いのだが、現実には就業率は上がっておらず、下がってきた。元気な高齢者は70歳代でも働ける環境を作る政策が必要だろう。それに合わせて公的年金給付の支給年齢も上げる必要があるだろう。

②安倍政権が最近強調しているように非正規と正規雇用の賃金格差を縮小させて、非正規雇用でも税金や社会保険料が負担される方向に修正が必要だろう。

③正規雇用比率を上げるべきだと主張する向きもあるが、 ニーズとしては雇用形態の多様化が進む中でそれは逆行だろう。 同一労働同一賃金の原則の実現で各種の非正規雇用の賃金改善が望ましい方向だろう。 非正規雇用労働者のうち、正規雇用化が望まれる対象層は、「不本意非正規雇用」と言われる350万人(非正規雇用の18.5%)だろう。

④それでも労働力の減少が経済成長の制約になる面は残るだろうが、その制約を解き放ってきたのが技術革新だ。AIの利用やロボットカー(自動走行自動車)の今後の普及など大きなイノベーションの芽は、現実になりつつあるではないか。陳腐化した保護主義的な規制体系を解体して、イノベーションと競争を促進する規制改革を進めるべきだろう。


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別に安倍内閣を「よいしょ」するつもりはないのだが、日本経済の現況を点検していたら、アベノミクス期と民主党政権期の雇用動向について、きれいなまでのコントラストが描けてしまったので紹介しておこう。
 
雇用動向の改善を見るにはまず失業率の変化を見るのが当然の見方だろう。2009年9月から12年11月までの民主党政権期も失業率は5.3%から4.1%まで改善(低下)している。 2012年12月~現在(直近データ15年2月)までの安倍内閣期は、4.3%から3.5%まで改善している。
 
しかし失業率だけでは十分な判断とは言えない。もうひとつは賃金動向、さらに労働参加率の変化などを見る必要がある。 賃金動向については既に前回扱ったので繰り返さない。↓
 
今回は労働参加率の変化を見てみよう。 労働参加率とは以下の通りで、実際に就業している人口と就職活動をしているが失業中の人口を総人口で割ったものだ。
 
労働参加率=(就業者数+完全失業者数)/総人口
労働力人口=就業者数+完全失業者数
失業率=完全失業者数/労働力人口
 
よく言われる「失業率は低下したが、景気が悪くて就職活動を諦めた人達が増えたからだ」というような論評を目にしたことがあるだろう。 就職活動を一定の期間にしないと無職でも「非労働人口」に分類され、失業者にはならない。つまり分母の労働力人口が減るので見た目の失業率は改善する。
 
実際、米国では2009年以降の景気回復過程で失業率が改善しても労働参加率が低下したために、「景気が悪くて就職活動を諦めた人が増えたから失業率が見た目低下しただけだ」と繰り返し指摘されてきた。
 
米国の労働参加率の低下は、実際はベビーブーマー世代の引退ラッシュという人口動態的な要因と上記の「諦め組」の増加の双方の結果だ。(それでも雇用動向全体はじわじわ改善して来た。)
 
以下の掲載図は、民主党政権期と安倍内閣期の失業率(横軸)と労働参加率(縦軸)を散布図にしたものだ。 
 
民主党政権期には失業率は確かに改善(左にシフト)しているが、同時に労働参加率が低下し、全体に左下がりに動いている。 一方、安倍内閣期に入ってからは失業率の改善が持続していると同時に労働参加率が上昇し、全体として左上方に動いているのがわかるだろう。 
 
こういう傾向が出るのではないかなと思って作図してみたのだが、これほど明瞭な違いになるとは思わなかったので、ちょっと私自身も驚いた。
 
日本は団塊世代の引退、高齢化で他の条件が同じなら労働参加率はじんわり低下する長期トレンドにある。 民主党政権期にはそれにさらに「就職活動諦め組」の増加が加わって労働参加率が低下したのだろう。つまりこの期の失業率低下には「就職活動諦め組」の増加が寄与しているのだ。
 
一方、安倍内閣期には労働市場の好転で「就職活動復活組」が増え、それが引退する人口の数を上回り、労働参加率が上昇しながら同時に失業率が低下するという好トレンドを起こしているわけだ。女性や元気な高齢者の就業も増えている。
 
単純に就業者数の増減を比べただけでも、民主党政権期には21万人の減少、安倍政権期には
124万人の増加だ。
 
もうこうなると「勝負あった」としか言えない。 民主党の方々も経済学のしっかりとしたブレインを招いて経済政策論を勉強し、練り直して対応しないと意味のある野党勢力としての復活は期待できそうにない。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「景気が良くなった?それは東京だけじゃない。地方経済は厳しいままよ」
 
先日、中小企業の景況感も改善しているという商工中金の調査をfacebookでご紹介したが、
この種の「良いのは東京だけ論」も実に執拗に続いている。しかしマクロ的なデータはそれを否定している。
以下に添付した日本総研の調査レポート「急速に改善する地方の有効求人倍率」(3月25日)、1ページの図1&2をご覧頂くきたい。
 
2002年から07年の景気回復過程では確かに有効求人倍率の上昇は都市部に比較して地方は遅れていたが、2010年以降は都市部と地方が同じ歩調で改善している(図1)。
 
また、地域別の有効求人倍率(図2)を見ると、2007年時点では輸出系製造メーカーの多い東海地方が突出して高く他は低いが、2013年時点ではそのような不均等は見られず、均等化している。
 
さらに図3は日銀がアンケート調査している地域ごとの業況判断DIだが、2013年12月時点では2006年12月時点と違って、全般的な業況判断の改善が見られる。とりわけ北海道と九州・北海道、中国、東北で高い。
 
今回の景気回復の様相について、一点私の懸念を言うと、東日本大震災からの復興需要も影響しているが、地方での公共事業牽引型の特徴が見られることだ。 当然、公共事業支出が終われば、そうした牽引も消える。
 
だから地方自力の成長路線をその間に準備して実現することが肝心なんだが、報道されている国家戦略特区の申請案件概要などを見ると、地方によって成長のための改革への取り組みは、とてもばらつきがあるようで、消極的な地域も多いようだ。
 
まあ、公共事業の拡大が元に戻ったその時に、各地方がそれまでやって来た結果を反映して、再び格差と不均衡が広がることになるだろう。仕方がないね。
 
http://bylines.news.yahoo.co.jp/takenakamasaharu/  Yahooニュース個人
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