たけなかまさはるブログ

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タグ:会社経営

現代ビジネス(講談社)に論考が掲載されました。

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冒頭引用:「昨年ノーベル経済学賞を受賞した行動経済学派のリチャード・セイラー教授が、その近著『行動経済学の逆襲』(原題:"Misbehaving")(邦訳、早川書房、2016)の中で次のような体験を語っている。
1990年代前半、あるメディア企業の経営幹部(事業部長など)を対象にセイラー教授が行った講演でのエピソードである。

成功確率が50%でその場合は200万ドル儲かるが、残り50%の確率で失敗した場合には100万ドルの損失が発生する事業案件がそれぞれの事業部門でもち上がったとしたら、「あなたはそれを実行しますか?」とセイラー教授は23人の部長さんに尋ねた。

すると、実行すると答えた部長さんはたった3名だった。

次に講演を傍聴していたCEOに尋ねたところ回答は「全部やらせる!」だった。なぜなら、全23件の期待収益は1150万ドル(=(200万ドル×0.5-100万ドル×0.5)×23)である一方、全部が損失になる確率は極めて低いからだ(リスク分散効果)・・・

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4月9日号のエコノミストに掲載された沼上幹教授(経営学、一橋大学)の論考に共感したので、以下に引用、要約しておこう。
 
タイトル:「重たい」組織を改革し、イノベーションを生む環境を
引用:「バブル崩壊後に日本経済が苦境に陥った時でも・・・日本的な経営には本質的な問題はなく、悪いのは全部マクロ経済環境だと、筆者を含めて多くの経営学者がどこかで『気楽』に信じていたようなところがあったと記憶している。」
 
「(ここで言う日本的な経営とは)自律性の高いミドル・マネジメント(中間管理層)が新製品・新事業を発想し、ロワー(部下)とトップ(経営陣)に積極的に働きかけて組織内のコンセンサスを形成すると共に、取引先とも濃密な「すりあわせ」を行ってイノベーションを推し進め、それが会社の戦略を駆動する、という日本企業の戦略創発スタイルのことを指している。」
 
「組織内外・上下左右に『すりあわせ』を行い、コンセンサスを形成していく経営スタイルは、内部調整に過剰な負担をかける可能性がある。 成長経済下の新規事業開発なら前向きに組織内の合意形成が可能だったかもしれないが、成熟経済下の『選択と集中』については、コンセンサス形成が難しい。
縮小される側が強力な反対勢力となり、ミドル同士では合意に到達できない。」
 
「コンセンサスを重視する内向きの重たい組織では、イノベーションを起こすことが難しく、環境変化への適応が遅れがちになる。」
 
「さらに問題なのは、重たい組織で働くミドル達が、自分でも内部調整可能な範囲の人々しか巻き込まないような『こじんまり』とした新規企画にしかチャレンジしなくなる点であろう。」
 
途中省略して結論に飛びます。
「戦略思考力のある一部の経営管理者たちがパワーを独占し、トップダウン型の経営スタイルを取らなければならない。」
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私が銀行で経験した1996年合併後の閉塞感も全く同じだ。外為専門銀行と言われた東京銀行はある意味ではフットワークの軽さが生きていた組織だった。現場の環境適応的な変化が許容され、それが成功するとそのまま戦略に昇格するような柔軟性があった。
 
ところが1996年に三菱銀行と合併を機に、組織はひどく重たくなった。 合併でポジション争いや主導権争い、各組織のサバイバルゲームが強くなったからでもあろうが、組織そのものが大きくなったことにより、合意形成のためにクリヤーしなければならない条件や変数が著しく増えたからだろう。
 
大学組織もまた然りだ。ここでは上下の権限関係よりも、横のフラットな関係の力の分散が強すぎて、大きな改革は必ず誰かの既存利害に抵触するので、合意形成が難しくなっている。
 
結局、重たい組織は環境変化への適応が後手後手になり、グローバル化した競争環境の中では行き詰まる。「もうだめです」と追い詰められるまで抜本的な改革ができない。
 
日本の大学のような組織が今まで存続したのも、海外からの直接的な競争にさらされていないからだろう。米国の大学が日本に分校を設立して進出するようなことを実現したら、実に面白い展開になるかもしれない。まあ、文科省がそんな大胆なことをするはずもないだろうが。
 
若い諸君は、せめて留学してオープンな競争環境で生き抜く力をつけなさい。
 
 
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