たけなかまさはるブログ

Yahooブログから2019年8月に引っ越しました。

タグ:景気

11月の論考を以下まとめて掲載します。

米国の景気後退が始まる2024年、円相場と株価はどうなる?」ダイヤモンド・オンライン、2023年11月28日

日本政府の債務を巡る真実~政府純債務残高が対GDP比率で大幅低下~」時事通信社、金融財政ビジネス、2023年10月30日、第11186号

ブログを更新する頻度は月1回です。
一方、facebookにはほぼ毎日何かしら掲載していますので、対外的な論考類の公表はすぐにお知らせできます。facebookでのフレンズ申請は歓迎しております。その際は一言messengerでお知らせください。詐欺のフレンズ申請が多いので、注意しておりますため。

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竹中正治ホームページ
 

ダイヤモンドオンラインに今朝、論考が掲載されました。

冒頭引用:「海外経済の失速を背景に日本経済が景気後退に向かう可能性が高まっている。ところが、日本の金融政策は2013年以来の超金融緩和の効果が出尽くし、次期景気後退期に打つ手がない。

 日銀としては「万策尽きている」とは言えないだろうが、金融政策としてできることはほぼやり尽くしている。そのため財政政策に目が向き、10月の消費税引き上げ延期も議論される状況になっている。

 一方、米国ではゼロ金利と量的金融緩和終了後、米連邦準備理事会(FRB)のバランスシート調整は途上であるものの、政策金利は2.25~2.50%まで上げることができたので、金利引き下げという伝統的な金融政策の発動余地がある。

 日本はどうしたら良いのか。その原因と私の考える最終的な処方箋を説明しよう・・・

***




厚生労働省の給与統計データ(毎勤統計)は、厚生省の不適正統計作業ですっかりケチがついてしまったので、国税庁のデータで見てみよう。

徴税に基づくデータなので年一回、しかも遅いので直近で2017年までのデータしかないのだが、2013年以降の平均民間給与伸び率は名目で見ても、実質で見ても、19912012年の年率平均値(名目-0.17%、実質-0.28%)を明瞭に上回っている(名目+1.16%、実質+0.55%)。実質調整は消費者物価指数(総合)を使用している。
 
ちなみに198090年の実質平均民間給与伸び率は1.18%だったから、2013年以降との差は0.63%、まあ、それほど大きな差ではないんだよね。
 
それでも80年台と富裕感が違って「実感がわかない」とか言われる理由は? 
①株価、不動産などの資産価格が80年台はぎんぎんに右肩上がりだった。
85年から95年まで急速な円高で海外旅行すると海外での買い物が安く感じられた。
③年功序列の賃金体系の中で若い時は給料安くてもやがて給与が上がると言う「右肩上がり期待」があった。
80年台までは中国など周辺国が相対的に貧しかった。
80年台は平均インフレ率が2.7%もあったので、そのことによる貨幣錯覚があった・・・・などではないかな。



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週刊エコノミスト「世界経済2019総予測」12月25日発売(2019年1月1日&8日合併号)に、米国経済の見通しについて寄稿しています。以下、字数の制約で掲載できなかった図表も含めて図表中心に掲載しておきます。本文は雑誌をご覧ください。

page 32-33
クレジットサイクル観点から、2009年を底に始まった米国の景気回復過程が最終局面に近いことを示す図1
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家計部門は2008年前のような過剰債務には傾いていないことを示す図表(本誌非掲載)
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図2、OECD Leading Indicator、米国、中国、OECD全体
中国の景気循環がOECD全体の循環に3カ月から6か月先行していることに注意
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次期景気後退の先行シグナルとして注目される長短金利差に関する図(非掲載)

引用:これら3通りの長短金利差についてFRBがデータを開示している1976年以降で検証すると、景気後退期は5回起こり、長短金利逆転は6回起こった。つまり1回、98年に起こった長短金利差逆転はそのまま景気後退に至らず、シグナルとしてはダマシだった。
 また長短金利差逆転が起こってから景気後退が始まるまでの平均月数は、①14か月、②16か月、③16か月とかなり時間がある。本稿執筆時点では長短金利差逆転は、③の5年物と2年物利回りでしか生じていないが、近々にあと2つの長短金利格差も逆転すると仮定しても、景気後退が始まるのは2020年の可能性が高いということになる。」

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以上




米国の超短金利差(5年物と2年物の財務省証券利回りが直近で僅かに逆転)したので「もう来年は景気後退か。株価は高値を見てしまったぁ!」というような雰囲気が広がっている。

私も長短金利差が次期の景気後退のシグナルになると書いてきたので、大局的な流れはそういう方向とは思っているが、直近の市場の雰囲気はちょっと気が早すぎるのではないかな。

株価の短期的な変動には下げだけでなく、まだけっこう上下動があると思っていた方が良いのではないかな。
 
FRBが開示している金利データ(FF金利と財務省証券利回り)で1976年まで遡って検証すると、景気後退期は5回あり(NBER景気判断)、長短金利逆転は6回ある(つまり1回、98年の逆転はダマシだった)。 以下掲載竹中作成図表参照

長短金利差として、①10年物-FF金利、②10年物-2年物、③5年物-2年物の3つで見ると、金利差逆転が起こってから景気後退が始まるまでの平均月数は、①14か月、②16か月、③16か月でとけっこう時間がある。つまり景気後退が始まるのは2020年の可能性が高いね。

もっともほとんどの株式投資家は気が早いのが行動特性だから、「もう高値は見てしまった。売りだ!」と反応するのは自然かもしれない。景気後退より前に株価が下げに転じるのが先であることも多い。

だけど、ベアー一辺倒で突っ込むと、短期的にはショートカバーを強いられる局面が来年ありそうな感じがする。もちろん、そこは売りだよということでもあるけどね。


参考論考、2018年1月のロイターコラム

http://masaharu-takenaka.jp/index.html  ホームページ

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現代ビジネスへの寄稿、掲載されました。


冒頭部分引用:「2013年以降、企業利益は過去最高の更新を続け、雇用数は増加し、失業率は2%台まで下がった。これ以上はないほどの好結果だ。ところが、消費者物価指数で前年比2%という物価目標は大幅に未達で、残念ながら今の金融政策は半分空回り状態だ(図表1参照)。
何が問題なのか、どういう選択肢があるのか、整理してみよう・・・」

 

現代ビジネスへの寄稿です。今朝掲載されました。
先日のブログに書いたネタを肉付けしたものですが、ブログに投資掲載した図表と数字は、私の勘違いで取り違えていました。ブログも訂正済みです。
骨子の趣旨は変わりません。

引用:「そんな日本の労働市場でも1990年代以降一貫して賃金が上昇し、93年比で23%も賃金(時給換算ベース)が増加した雇用部門がある。しかも当該分野での雇用は拡大の一途をたどり、今では全雇用者の3割を超える。

「えっ~嘘だろ。そんな分野があるのか」と思われるであろう。実はそれはパートタイム労働者の賃金である。

図表1が示す通り、90年代以降も右肩上がりで上昇し、2012年12月以降の平均年率の伸び率はプラス1.6%、17年以降はプラス2%を超えている(月々のぶれを均すために12ヵ月移動平均で表示している)。

一方、フルタイム労働者の賃金伸び率は図表2が示す通り、1998年にピークを付けた後は2012年まで緩やかながら下げ基調だった。2013年からは上げ基調に転じるが、上昇テンポは微弱で2012年12月以降18年6月現在まで年率平均プラス0.8%にとどまっている・・・」

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現代ビジネスに寄稿した論考が掲載されました。

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結論部分抜粋引用:「2018年の日本経済は、「朝鮮半島での有事」というリスク要因はあるものの、安倍政権下での景気回復が続く見込みだ。
...
そうなると景気回復の期間は73か月となり(前回の景気の谷は2012年11月)、低成長ながらも戦後最長だった2002年1月から08年2月までの景気回復期と並ぶ長さになる。

しかし長い景気回復にも係らず、現下の景気回復は2000年代同様の重大な弱点を孕んでいる。そのため、再び世界景気の回復が頓挫すれば大きな後退を余儀なくされよう。そうした脆弱性とその原因についてご説明しよう・・・」

「では、何が日本の自律的な景気回復を阻んでいるのか。ひとことで言うならば、民間企業部門の過剰な貯蓄超過である。図2をご覧頂きたい。」

「企業利益が史上最高を更新し、株価が上昇を遂げている現在、日本経済が消費を中心にした自律的な回復に転換するために必要なことは、もはや明白だ。

すなわち企業部門の過剰な貯蓄超過と言う不均衡が是正され、賃金や配当の形で家計への所得の移転が起これば良いのだ。あるいは人手不足が深刻化した今日、AIの利用を始め機械化によるビジネス・イノベーションのための設備投資も有望だ。

この点で2000年代と違った希望の芽もないわけではない。図1に示した通り、2006年以降の第3期には、雇用の増加で雇用者報酬が年率プラス2.3%と高い伸びをしていることだ。

ただし1人当たり賃金(1人当たり現金給与総額)の伸び率は微弱で、ほとんどは雇用者数の増加によるものだ。景気の回復で失業率が下がり、さらに女性の労働参加率が上がり共働き世帯の増加や、高齢者の労働参加率が上がった結果である。

賃金の伸びが抑制されているためだろうか、消費者のマインドを示す内閣府の「消費者態度指数」はジリジリと改善はしているが、依然先行きには警戒的な消費者が多いのだろう。

そうした事情が2006年以降の実質雇用者報酬の高い伸び(年率平均プラス2.3%)と相対的に低い最終家計消費の伸び(年率平均プラス0.9%)という跛行的な状況を生み出していると考えられる。 

こうした問題状況は現政権も理解しており、賃金と設備投資を増やした企業には法人税率を引き下げる税制面の優遇処置を打ち出している。これまで強い賃上げ要求に及び腰だった連合もようやく4%(定昇込み)を掲げ、経団連も賃上げ3%の方針を検討しているそうだ。

労働市場の流動性を高め、高い専門能力を有する人材を優遇する方向への労働規制改革が、連合などの抵抗でなかなか進まない点に歯がゆさもあるが、マクロ経済的には順風が吹いている。

この順風の局面を活かして、本当に内需主導の自律的な景気回復パターンが始まるか、あるいは海外景気依存の脆弱さを克服できないまま終わるか、2018年の日本経済はひとつの分岐点に差しかかっていると言えよう。」

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毎度のロイター・コラムです。ただいま掲載されました。


冒頭引用:「米国の完全失業率は1970年以降では好況期の極めて短期間を除いては4%割れを起こしたことがなく、4%台の失業率は事実上の完全雇用に近いと考えられている。景気回復の持続で現在の失業率は4.3(20175)まで下がった。ところが、消費者物価指数(除く食料とエネルギー)に見るインフレ率は前年同月比で一時2%を上回ったものの、直近再び2%割れとなった(1.7%、20175)。なぜインフレ率は軟調なのか。低インフレから抜け出せない日本の状況にも示唆的なので、その原因と経済、金融への影響を考えてみよう・・・」

上段の図はロイターの掲載図と同じ。下段は掲載されていない1990年以前の米国のフィリップ曲線です。こうやって見ると、フィリップス曲線が安定的に右下がりだった時期は、1960年以降で半分もないくらいなんですね。




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主要先進国経済パフォーマンス比較、危機前と危機後の比較

以前、金融危機前(2000-07年)と危機後(2010-16年)の主要先進国の一人当りGDP成長率の変化を示した図表を掲載、コメントしたことがある。以下

今回、一人当りGDP成長率に加えて、平均失業率の変化を加えた図表を作成してみたので、掲載してコメントしておこう。

データ:IMF World Economic Outlook Data base, April 2017 
対象期間:2000-07年と2010-17年(17年データは見込み値)
対象国:比較的経済規模の大きな主要先進国12か国

これで見ると、危機前と危機後を比べて、失業率が低下し、かつ一人当たり成長率が上昇した国は、日本だけである。

南欧系の諸国が失業率、一人当り成長率とも悪化しているのはイメージ通りだ。 ドイツは失業率は大きく改善したが(9.3%→5.2%)、一人当たり成長率は1.7%→1.5%とわずかながら低下している。ドイツは2013-17年で見ると、失業率は4.6%と改善傾向だが、一人当たり成長率は0.8%にさらに低下している。 移民人口の増加でドイツはGDP成長率はやや高めなのだが、一人当りの付加価値生産額は低下しているのである。

米国は失業率が悪化(5.0%→6.9%)、一人当り成長率は1.7%→1.4%とやはり若干の低下である。
一方、日本は失業率が4.7%→3.9%へ改善、一人当り成長率は1.4%→1.5%(0.17%アップ)とわずかながら上昇している。

日本の失業率は今年3%も割れて、2%台に入り、1990年代初頭の水準にまで低下しているのは報道されている通りだ。ところが、この安倍政権下での失業率の低下は2013年前後に65歳を迎えた団塊の世代に引退によるもので、景気の実態は回復していないと揶揄する人達も一部にいる。

しかし私を含むエコノミスト諸兄姉が指摘している通り、2013年以降の失業率低下は雇用数の目だった増加を伴っており、景気の回復は明らかな事実である。

引用:「現下の人手不足は本当の景気の回復によるものではなく、2013年前後に65歳の定年を迎えた団塊の世代の引退によるものだと語る人々が一部にいる。それは全くの事実誤認だ。その主張が事実なら、人手不足は雇用の減少を伴っているか、少なくとも雇用は増加していないはずである。
確かに2010年1月―12年12月の3年間については、わずか13万人の雇用増加だった。ところが、2013年1月―17年3月の期間については253万人の雇用増加だ。すなわち2013年以降の人手不足は明瞭な雇用の増加を伴って生じている。」 (竹中正治 ロイターコラム 2017年6月2日)

と、まあ、ここまでは「過剰な悲観論に流されるのは、いい加減お止めなさい」という毎度のメッセージである。

ただし日本経済の弱点もある。 これも繰り返し強調してきたことだが、現下の日本経済の弱点は、雇用、企業利益双方の大幅な改善にも関わらず、賃金の伸びが抑制され過ぎていることだ。 失業率が2%台に下がってきたことで、「いよいよこれから賃金も上がる。そして物価も上がる」と期待する方々もいる(日銀黒田総裁、日銀政策委員会審議委員の原田泰氏、高橋洋一氏)。

しかし私は日本の上記直近のロイターコラムで述べた通り、日本の労働市場は1990年代後半の金融危機を伴った不況を境に、構造的な変化(労使の賃金交渉の姿勢や正規、非正規比率などの変化)を起こしており、失業率が90年代以前の水準に下がっても、賃金は90年代以前のように上がらないだろうと慎重な(悲観的な)見方をしている。 この点、どちらが正しいか、1年ほど経ったら、レビューしてみよう。


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