この本にはちょっと驚いた。私達の日本の農業観を根底からひっくり返す内容だ
というか、農水省、農業族議員、農業諸団体の永年にわたるプロパガンダによって自分の日本の農業に対する認識が歪められ、洗脳されてきたと思い知らされる。
 
もちろん私は農業経済は専門でもなんでもないので、著者の語っていることが全部事実に基づいているかどうかは、いちいち検証できない。しかし、平明な論理とデータに基づいて語られる内容には強い説得力がある。
 
民主党の戸別所得補償制度も、数ばかりは多いが、日本の農業生産において既にマイナーな役割しか果たしていない多数の疑似農家を温存するばかりで、本気で農業を営んでいるプロの農家の足を引っ張り、日本の農業を衰退させると木端微塵に批判する。民主党はそれでかまわない。農業が弱くなるほど、補助金への依存が高まり、補助金を仕切る与党の票田となるからだと痛烈だ。その点は、私もそう思っていたが、農業事情に疎いので著者のように雄弁、明解に語ることはできなかった。
 
専業のプロ農家こそ政府は支援すべきであり、その視点で見れば、日本の農業は衰退産業でも弱小産業でもない。「農家=弱者」のイメージは農水官僚と政治家が自らの利権のために生み出した都合のよいイメージに過ぎない。
 
また「偽装農家」神門善久、飛鳥新社も本書と共通する点が多い(神門氏は明治学院大学教授、農学博士)。 本書を合わせて読めば、あなたの日本の農業観が一変するだろう。