読者の方から、前回のブログでエマージング諸国の株式に分散投資するMSCI-emergingを紹介したことに関連して、次のようなご質問をEメールで頂いた。これにコメントしよう。
「(2008年1月の日経ビジネスオンライン「新版花見酒の経済論」で書いた)“新興国への投資はゴールドや原油といった商品と同じくリスク感覚がマヒしている” との指摘がありましたがこのたびMSCI-emergingも選択肢として挙げられているのは日本国債バブル円安懸念に由来すると考えて良いのでしょうか?」
2008年1月当時の私が書いたその部分を引用すると以下の通り。
「大きな下落が起こるかもしれない不安な相場環境で、一番強い投資家は十分な流動性(=自由に使える資金)を持っている者である。流動性を増やせば、当然投資利回り全体は低下するが、今は割高になった資産は売って流動性を増やしておくべき局面だろう。今の高値を追ってゴールド、原油、高成長途上国の株の買い増しをするような投資は、私の目にはリスク感覚の麻痺した行為にしか思えない。 」
これは金融危機がクライマックス(08年9月のリーマンショック)に向かう少し前の2008年1月時点の状況判断であり、比較的短期的な見通しとして書いたものだ。この時原油価格は1バレル100ドル(WTI)を超えたところだったが、実際、この後、原油価格は同年7月頃に1バレル150ドル近辺まで高騰した。そして同年9月のリーマンショック後に暴落した。他の国際商品価格もほぼ同様の動きとなった。
また、BRICSを中心に新興国の株式は2007年末から08年初が、ほぼ高値でそこから1年間急落が続いた(ただしブラジルの株価は08年7月まで商品価格と並行して上昇した後、急落)。
リスク資産への投資を減らして、流動性(手元資金)を増やしておくという当時の判断は、私は今振り返ってとても正しかったと満足している。
私が2009年にこうした新興国の株への投資を増やしても良いかな、と考えたのは08年9月のリーマンショック後の急落で割高が修正されたからだ。ETFのMSCI-emergingが開始されたのは今年2010年2月で、昨年スタートしてくれていたらもっと良い水準で買えたのにと思ったが、まだ世界景気の回復過程は初期段階にあるので、今からでも間に合うと思って今年2月に買った。
以上の通り、この投資判断は、将来起こり得ると懸念している日本国債の下落リスクとは直接的な関係はあまりない。ただし、為替相場も2009年にかなり円高になったので、自分のポートフォリオに占める海外資産の比率を上げよう、という大局的な判断を前提にしており、将来日本国債の下落+円安が起これば、外貨比率を今上げておくことは報われるだろうと思う。
ちなみに日本国債は全く保有していない。それは短期・中期、長期双方の理由があり、短期・中期の景気循環的視点で言うと、長期固定金利の国債に投資するタイミングは好況期だ。今は買う局面ではない。 日本国債を買う気になれない長期の理由は、既に述べたとおり、政府債務膨張が加速していることへの懸念だ。
また、emerging諸国の株式も、世界景気の回復がさらに進み、好況が続いたどこかの時点で、バブル崩壊のリスクが再び高まると思う。 それがいつ来るのかは(毎度言っていることだが)事前にピンポイントで予想することは不可能だ。 いずれ「分割して売り上がる」方針に転換するつもりだ。
ちなみに、はるか昔に買ったゴールドの小板(わずか100g)が私のデスクの引き出しの奥で眠っている。ゴールドも1オンス1200ドルを超え、「1500ドルも視野に入った」なんて言うアナリストが出てきた。
原油価格200ドルを予想するアナリストが2008年初め頃に注目されていたことを思い出すな。
私のミニミニゴールドも1500ドルの前に売ってしまおうかな。
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