情報や人というものは、求めているとそちらの方から姿を現す時がある。 数日前、大学の社会科学研究所のライブラリーに納入する新規図書の選定をしていた時、「郵貯資金等の動向 平成21年度版」(財団法人ゆうちょ財団)という冊子が現れた。 見るとホームページで開示されているよりも詳しいゆうちょ銀行の財務諸表が掲載されていた。
なぜ関心があるかというと、少し前に日経ビジネスオンラインに「亀井案こそ郵政を潰す」(2010年4月7日)という論考を書いて、郵貯の抱えるALM上の金利リスクを大雑把ながら推計し、それが国債価格の下落(金利の上昇)に対して極めて脆弱であることに警告的な主張をしたからだ。
以下のように書いた。
「(郵貯の保有する)国債の平均残存期間は(ホームページでは)公表されていないが、大雑把に推測することはできる。 ~ 価格の変化を計算すると、クーポン1.3%で額面100円の10年物国債の場合、流通利回りが2.3%に上昇すると価格は91.87円下落する。残存期間8年ならば価格は93.24円に下がる。つまり平均残存期間8年の場合、債券ポートフォリオ全体で約7%の評価損が生じる。 郵貯の国債保有額236兆円を基に計算すると、16兆5000億円の損失が生じることになる。」
手に入った「郵貯資金等の動向」は私が知りたかった残存期間別の国債など有価証券の残高を開示していた。私は前論考では大雑把に平均残存期間7~8年と想定して計算したが、開示されているデータから計算すると有価証券(ほとんど国債と地方債)の平均残存期間は、もう少し短く3.82年となった。
これをベースに再計算すると、金利水準1%から2%への変化(1ポイントの上昇)で、郵貯簡保合計した236兆円の債券ポートフォリオからは生じる損は、8.4兆円となる。また、ゆうちょ銀行のみの177兆円の債券保有額から生じる損失は6.3兆円となり前記の推計より小さくなる。 それでもゆうちょ銀行の自己資本(広義)は8.3兆円だから、債券金利1%の上昇で自己資本の76%が吹き飛び、2%の金利なら4.3兆円の債務超過に転じるということになる。
というわけで、より正確な推計ができたので、このブログでご報告しておく。
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