本日8月17日の日経ビジネスオンラインに掲載された私の論考
「なぜもっと早く降伏できなかったのかを議論しよう」に寄せられたコメントに次のようなものがあった(複数)。
 
「一度降伏したら、煮て殺されるか焼いて殺されるかもわからないのにおいそれと降伏できるはずもなく、少しでも有利な条件を付けようと必死の覚悟で抗戦するのは当たり前です。」
 
つまり無条件降伏という厳し過ぎる条件を要求した連合国が悪いという反論であろうが、悲しむべき無知である。
日本が受諾したポツダム宣言を引用してみよう。(当時の日本語訳全文は左のリンクから読める)。
 
以下はひらがな化している。
 
9、日本国軍隊は完全に武装を解除せられたる後、各自の家庭に復帰し、平和的且生産的の生活を営むの機会を得しめらるべし。
10、吾等(連合国)は日本人を民族として奴隷化せんとし又は国民として滅亡せしめんとするの意図を有するものに非ざるも、吾等の俘虜を虐待せる者を含む一切の戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を加へらるべし。
日本国政府は日本国国民の間に於ける民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障礙(しょうがい)を除去すべし。
言論、宗教及思想の自由並に基本的人権の尊重は確立せらるべし。
11、日本国は其の経済を支持し且公正なる実物賠償の取立を可能ならしむるが如き産業を維持することを許さるべし。
但し日本国をして戦争の為再軍備を為すことを得しむるが如き産業は此の限に在らず 右目的の為原料の入手(其の支配とは之を区別す)を許可さるべし。
日本国は将来世界貿易関係への参加を許さるべし。
12、前記諸目的が達成せられ且日本国国民の自由に表明せる意思に従ひ平和的傾向を有し且責任ある政府が樹立せらるるに於ては、聯合国の占領軍は直に日本国より撤収(てっしゅう)せらるべし。
 
当時の軍国主義イデオロギーに比べると、なんと民主的で人権に配慮した宣言だろうか。もちろん当時の戦争遂行者(権力者)は戦争裁判にかけられることも明記されている。彼らは国体護持(天皇制維持)を条件にしたかったのであろうが、天皇制を維持するために本土決戦で更に数百万人の命を犠牲にするというのは、やはり狂気のイデオロギーだろう。
 
また、ポツダム宣言受諾後も進められたソ連軍による侵攻と数十万人の日本兵のシベリア抑留が、完全なポツダム宣言違反であったこともよくわかる。